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落語百選107

时间: 2019-09-15    进入日语论坛
核心提示:初天神「おっかァ、おい、ちょっと羽織出しとくれよ、羽織」「うるさいね。この人は。羽織こさえたら、どこ行くんでも着たがるん
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初天神

「おっかァ、おい、ちょっと羽織出しとくれよ、羽織」
「うるさいね。この人は。羽織こさえたら、どこ行くんでも着たがるんだからね。どこ行くんだい?」
「どこ行くんでもいいよ。羽織ィ出しとくれてんだよ。ええ? おれは、これから天神さまにお詣りに行こうとおもってね。初天神」
「あらそう、それじゃ金坊、連れてっとくれよ。家にあの子がいると、もう悪戯《わるさ》ばかりして、近所で遊ばしてりゃ、始終苦情だろ、いっしょに連れてっとくれよ」
「金坊? だめだよ」
「え?」
「だめ、だめ、だめ」
「どうして?」
「どうしてったってだめ。おらァあいつといっしょに行きたくねえんだ。おれは、いやだよ」
「いやだよったって、おまえさん、自分の子供だろう」
「そりゃおれの子にちげえねえが、あれが他人《よそ》のもんだったら、おらァいっしょの家にゃァいないねえ。自分の子供だからしょうがねえからいっしょに暮してんだ。いやだよ」
「そんなこと言わないで、頼むから連れてっとくれよ」
「いやだってんだ、おれは」
「へへへ……おとっつぁんとおっかさん、言いあらそいをしてますねェ。あの、一家に波風が立つというのは、よくないよ、ご両人」
「聞いたか? おいっ、親をつかまえてご両人だとよ。……金坊なにも言いあらそいをしてるんじゃねえんだ。表へ行って遊んでな」
「ふゥーん。おとっつぁん、どっかへ行くんだろ?」
「行かないよ」
「行きますよ。羽織を着てるもん。ね、連れてってよ」
「だめだ」
「おとっつぁん、お願い、連れてっておくれよ」
「だめだったらだめだ。おとっつぁんこれから大事な仕事に行くんだから」
「嘘だよ、今日は仕事あぶれてんの知ってんだい。連れてっとくれよ、ねえ」
「やだよ。連れてかねえったら連れてかねえ」
「ふゥーん。じゃァどうしても連れてかない? これほど頼んでもだめなの? あ、そう、やさしく頼んでるうちに連れて行きゃァためになるんだけど……」
「これだ、親を脅迫しやがる。また、悪戯《わるさ》しようてんだろ? そんなこっておどろくもんか」
「へへへ、おどろかないな」
「おどろかないよ」
「そうかな、あたいはおどろくとおもうんだけどなあ……ふふふ、どういうことになるか、たのしみだ……」
「待て、待て、待てよ。この野郎、とんでもねえことをやりかねねえからな……ちぇっ、いいよ、連れてってやるよ。そのかわりな、なんか買って買ってって言うんじゃねえぞ。……言わねえな、え? じゃあ、着物着せてもらいな」
「うれしいな、やっぱり口はきいてみるもんだな。……なんだよォ、おっかさん、こんなぼろな着物、もっといいのがあっただろう」
「あったんだけどね。いま箪笥の下のほうにしまいこんじゃった。今日はこれで我慢しとき」
「つまんねえな。あんまりおとっつぁん、酒飲むからこんなことになっちまうんだよ。なにか入れ替えするものないの?」
「おい、なんだい、おい。質屋のことまで知ってやがんのか。呆れたもんだ。さ、生意気なこと言ってねえで、来い。じゃあ、行ってくるからな」
「はい、行ってらっしゃい。……金坊が言うこときかなかったら、かまわないから大川へ放りこんじまっとくれ」
「そうら、聞いたか。おめえが言うこときかねえと、大川へ放りこんじまうぞ。おめえなんぞ、すぐ放りこめるんだから」
「放りこめる?」
「ああ、すぐ放りこんじゃう」
「あたい、泳げないよ」
「泳げなくたってかまわねえ」
「人殺しだぞ、罪ンなるぞォ」
「うるせえ、こん畜生。おめえはすぐそういうこと言って、親をばかにしやがる。なんでもいいから早く歩きな」
「へへへへ」
「笑ってやがる、親をばかにするんじゃねえ。おまえがあんまり言うことをきかねえとな、炭屋のおじさんが山から出てきたときに、連れてってもらって、山へ捨ててきちまう。そんときンなって泣くな」
「ああ、山か。いいな、山は」
「山がいい?」
「いいよ、山は」
「山はこわいんだぞ」
「なにか出る?」
「出るさ、あの、狼が出てくるぞ」
「狼なんか平気だい」
「狸だって出てくら」
「へェ、狸なんぞつかまえちまう」
「そんなこと言ってて、いざ炭屋のおじさんが来たら、おめえ逃げるんだろう」
「逃げんのはおとっつぁんだい」
「どうしておとっつぁんが逃げる?」
「だっておとっつぁん、炭屋のおじさんに借金あるもん」
「この野郎、なんでも知ってやがる」
「ねえ、おとっつぁん、なんか買ってよ」
「それ、それを言っちゃいけねえったろ。だめだよ」
「ねえ、おとっつぁん。そんなこと言わないで買っとくれよ。あそこに大福売っている。ねえ、買ってよ」
「大福はだめ、大福は毒だ」
「毒? へえ、大福毒なんての、はじめて聞いた。じゃ蜜柑買って」
「蜜柑も毒だ」
「じゃあ……」
「毒だ」
「なにも言ってないじゃないか。ほらね、あすこ、バナナ売ってるよ、あれ」
「あれ? バナナ、八十銭……あ、あ、毒だ毒だ」
「おとっつぁんは、八十銭が毒なんだ」
「うるさいよ、おまえは。あのね、子供は子供らしく子供がねだるようなものをねだりな」
「子供がねだるようなものって、どんなもの?」
「そうだな、たとえば、飴《あめ》玉のようなもんだ」
「じゃあ買って」
「ここじゃ売ってない」
「おとっつぁんのうしろで売ってら」
「けッ、この野郎、悪いとこへ店を出してやがんなあ。今日ぐらい休め」
「冗談言っちゃいけません。今日はもうかき入れです。どうぞ坊ちゃん、買ってもらいなさい」
「余計なことを言うないっ、買ってやる、買ってやるてんだよ。おい、この一つ一銭の飴、いくらだ?」
「へえ、一つ一銭の飴は一つ一銭です」
「あっ、そうか。おまえがうるさいから、おとっつぁん恥かくじゃねえか、ほんとうに。……じゃァおとっつぁんが取ってやる。いちばんでかそうなやつをな。……値段はどれだって同じなんだろ? ほいきた、ああ、これがいい。こいつァいいや、赤くてでけえから。え? 赤いのはいやだ? 同じだよ、おめえどれだって(指をなめて)同じなんだ。これはどうだ? え? 小さい? (指をなめる)うん、これがいい、これ。え? 白いのはやだ? (指をなめて)同じなんだ、どれでも。これは欠けてやがる(指をなめる)これは……」
「ちょいと、もしもし。あんたいくつ買うんだい?」
「一つだ」
「一つだって、あらかたなめちまったよ、この人ァ。そんなにされちゃあ、売り物にならなくなっちゃう、汚くて」
「なに言ってやんで、てめえの顔のほうがよっぽど汚《きたね》えや。……じゃこれだ。……さ、口を開《あ》けろ、ほら、旨《うめ》えだろう……よかったよかった。さ、行こう……それ、その飴玉噛むんじゃねえぞ、な、歯の裏へ当てがってりゃいいんだ、噛むてえと歯を傷《いた》めるからな」
「おとっつぁん、うまいこと言って、噛むと早くなくなるからだろ?」
「いいから、さっさと歩きな」
「だけど(飴玉を頬ばって)……飴ってうまく考えたね。こんな安くって、長持ちするもんはないねェ」
「黙って歩けてんだよ。……ほらほら、下はぬかってるんだ。べちゃべちゃ歩いて、着物を汚して、またおふくろに叱られるぞ。着物が汚れるから、こっちィ来いッてえのに、わからねえやつだ。こいつは、やいっ」
「痛《いて》えッ……痛《いて》えやい。なにかってえとすぐぶつんだから、やんなっちゃう、おとっつぁんは。下がぬかるみぐらいわかってらい。上がぬかるみだったら天地がひっくり返らい」
「泣きべそかきながら理屈言ってやがって、ほら、早く歩けよ」
「なんか買って」
「なんかって、いま飴買ってやったばかりじゃないか」
「おとっつぁんがぶったもんだから、落っことしちゃったい」
「油断もすきもねえな。うっかりなぐることもできねえな。……どこにも落ちてねえじゃねえか」
「お腹ン中へ落とした」
「それじゃ、食っちまったんじゃねえか。もう買ってやんない」
「買って、買って、買って」
「だめ、だめ、だめ」
「買ってエーッ」
「声でおどかしたって、買ってやるもんか」
「買ってエーッ!」
「こんなところでそんな大声あげて、みんな見てるじゃないか。なにを買うんだ?」
「凧《たこ》買って」
「畜生ッ、なんだってこんなとこへ店開いてんだ、この凧屋の野郎ッ。しょうがねえなァ……じゃ、そのいちばん小っちゃな凧くれ」
「大きいの買って」
「大きいのは売らねえんだ、看板だ、ありゃ。なあ凧屋、売らねえんだな、その大きいのは飾ってあるだけだなあ」
「いえ、全部売りますよ。なんでしたら奥にもっと大きいのも……」
「この野郎、余計なこと言うな」
「唸《うな》りはどうしましょう」
「唸りなんぞいらない」
「唸りも買ってえン」
「わか、わかった。いいよ、唸りもつけろ」
「糸はどうします」
「やい凧屋、おめえ、なんだっておれに恨みでもあんのか? 畜生ッ」
「おとっつぁん、糸も買ってえン」
「畜生っ、おぼえてやがれっ、だからおめえなんか連れてくるんじゃァなかった。……みんなつけろ、みんな。いくらだ、え? おい、そんな高《たけ》えのか。ちぇっ…………おとっつぁん、帰りに一杯やろうとおもった銭、ここでみんな取られちゃう。畜生っ、こんな高《たけ》えもの買わせやがって……ほら、払うよ。受け取れっ」
「へ、毎度ありがとう存じます。またおいでを」
「二度と来るかい。こん畜生ッ……おい、凧貸しな、持ってってやるよ。こんなでけえ凧、おめえが持ってりゃあ、すぐやぶかれちまう」
「ねえ、おとっつぁん、あすこの原っぱでもって、凧あげて、そいから帰ろうよ」
「だめだ、もう家《うち》へ帰るんだ」
「そんなこと言ったって、家に帰ったら凧あげるとこないもん」
「じゃ、ちょいとだけ、ここであげてやる」
「じゃあ、おとっつぁん、あたいが凧持って行くよ」
「うん、じゃあ、ずっと下がれ。……ずっと、ずっと、うん、ずっと。ずーっと。よし、糸はいっぱい買ったから大丈夫だ。よしよし、もっとこっちへ寄んな、もっとこっち。そっちは人が通るから、もっとこっちだ」
「(凧を手に差しあげて)どっち? こっち?」
「(糸を引きながら)こっちだってんだっ……おっとっとっと、しょうがねえな、酔っ払いの野郎がぶつかっちまやァがって……おい、気をつけろっ……どうもすいません、それァ、あっしの倅《せがれ》なんで、ご勘弁願います。……泣くな、泣くんじゃあねえ。おとっつぁんがついてらあ。おめえがそっちへ行くからいけねえんだ。こっちだよ、こっちだ、こっち」
「痛《いて》えッ、この野郎ッ、気をつけろいッ」
「あっ、こんだ、おとっつぁんがぶつかっちゃったい。しょうがねえな。……どうもすいません、それァ、あたしの父親なんで、ご勘弁願います。……おとっつぁん、泣くんじゃあねェ、おいらがついてらあ」
「なにを言ってやがる。……いいか? うん。ひの、ふの、みィで手をはなすんだぞ。いいか?……ひの、ふの、みィッ……と、ほれ、見ろ、どうだい。ええ? もっと糸買っときゃよかったな。……どうだい、ブーンッと唸るだろう? この引きの強えこと。ブーンッ……と、どうだい、ああ、いいなあ」
「あの、おとっつぁん、おとっつぁん、ちょっとあたいにもやらして」
「どうだい、あがったあがった、あがったい。見ろ、なるほど、値段の高《たけ》えのはちがわあ。ええ? こりゃいいや。……さ、どんどん延ばすぞ、糸はまだあるぞ。ああ、いい気分だなあ、ひさしぶりだあ。ブーン、ブーンッ……と、唸りを買ってよかったろう、……え? 待て、待て、待て、待ててんだよ。待ちなってんだよ」
「あの、おとっつぁん、あたいに……」
「うるせえな、こん畜生は。あっちへ行ってろ、あっちィ行けてんだっ」
「おとっつぁん、そんなのあるかい、その凧はおいらンじゃねえか……あああ、こんなことなら、おとっつぁん、連れて来るんじゃなかった」
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