さて、「コンドーム」である。
こういう、下半身に関係する商品のコピーは、一見、誰でも簡単にできるような気がするところがオトシアナなのである。
早い話が『あらいやん、あれつけてからよォン』だとか『ナマと同じね』だとか、コピーを鼻声で書けば出来たような気になれるわけである。要するに自己満足しやすいのだ。
こういうものほど、他人に共感させるのが難しい。
・金山恭子『離れたくないあの人だから、0.03mm離れます』 のように、薄さというメリットをキチンと書いているものもあるが、面白くも何ともないでしょ。もっとも現在雑誌広告なんかで見かけるプロのコピーは、その程度のものが多いですけどね。
同じことを言うのでも、
・徳村篤紀『つけなくて行ったが、同じ感触でした。不思議です』(梅) などのほうがマシ。しかし『つけな|いで《ヽヽ》行った……』にしたほうがよいでしょうな。
下半身もののテレ臭さを、乱暴さで突破しようとした人もいました。
・高橋明彦『買って、かぶせて、やりまくれ』(梅)
・芳賀ひろみ『「押したおせばどうにかなる」とオヤジは言うが』(梅)
たいしたものではないナ。
・島聡『このコンドームくれ! そうだ! コンドームだ!! 何だ!! 何か文句あんのか』(毒) なんてのは、もうヤケッパチ以外の何物でもないけれど、ここまで開きなおると読んでて快感がある。
実感もの、スナオものというのもあるが、答案を提出した「広告学校」の諸君があまりにも若いので、スナオに書くと若々しくなりすぎて、読み手になめられてしまうのだ。
・佐藤潔『今日は……デキる』(梅)
・板橋義也『つけてるうちに、興奮しちゃう』(梅)
・玉川芳信『おかげで、回数をこなしました』(梅)
・武藤靖人『よく見ると面白い形してるんです』(梅) なんてのじゃ、いじらしいけど、お客にバカにされちまいます。
あ、買う恥ずかしさをテーマにしたやつで味のあるコピーがあったぞ。
・那須英憲『「コンドームください」と言えない人は、「サックください」と言いませう』(竹) コンドームというコトバに特別に思い入れてしまうから言いにくくなるわけなのだから、他のふだん使わないコトバに言い替えればいいわけなのだ。これは、関東地方生まれの家元が、「ボボ」とか「まんじゅう」などと、わりに気軽に言えるのと同じことだ。
・吉竹雪江『わたしには、つける所がありません』(竹) は、なかなかのヒットである。当然のことだが、これは女性の作である。こう言われると、男は「俺にはつける所があるもんね」と、いわれなき優越感にひたることができる。なんでもないことがウレシイことに思えちゃうのです。男としての自覚やら、性的交渉時における責任感なんてものが生まれ、ついにはこの商品を購入しようという気にもなるのである。