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歌月十夜53

时间: 2019-11-27    进入日语论坛
核心提示:*s60□志貴の部屋 そういえば秋葉はもう帰ってきているんだっけ。部屋でぼんやりしているのもなんだし、秋葉をからかって遊ぶと
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*s60

□志貴の部屋
 そういえば秋葉はもう帰ってきているんだっけ。
部屋でぼんやりしているのもなんだし、秋葉をからかって遊ぶとしよう。
 
□秋葉の部屋
「だから大通りよりの喫茶店は止めといたほうがいいんだって。場所代ばっか高くて味も制服もイマイチだから」
【秋葉】
「……はあ。場所代というのは解るのですけど、そこでどうして制服まで審査の対象になるんですか兄さん?」
「あ———いや、まあ、ちゃんと洗濯されてるかなとか、そういうレヴェルの話です」

強引にお茶を濁しつつ、喫茶店の話を切り上げる。
秋葉のやつ、ここ一年ですっかり俗世間慣れしやがって、些細なミスをつっこんでくるようになってしまった。
———秋葉の部屋にやってきてから、もう一時間。
なんでもない会話はなんでもなく続き、実のない会話のせいかお互い気が緩みきっていた。
「………………」
うむ。秋葉をからかうとしたらそろそろ頃合か。
「あー、ところで秋葉」
【秋葉】
「なんですか兄さん?」
「いやなに。文化祭さ、秋葉のクラスの出し物ってアレだろ?」
【秋葉】
「はい、お化け屋敷を予定しています。一年生ではお化け屋敷をしていいのは一クラスだけで、運良くくじ引きで権利を手に入れたとか」
安心しきっているのか、秋葉は簡単に誘導尋問にひっかかってくれた。
「————ぷ」
自分で狙った事といえ、ここまではまってくれると嬉しくなる。
「そっかー、1−Aはお化け屋敷かー。そりゃあ貴重な情報を手に入れたな」
【秋葉】
「な———騙しましたね、兄さん!」
「人聞きが悪いな、秋葉がかってに喋っただけだろ。……ま、こんなに簡単にひっかかるとは思ってなかったのは確かだけど」
【秋葉】
「………ふんだ、別に悔しくなんかありませんよーだ。どうせ明日になれば判ってしまう事なんですから、私は痛くも痒くもありません」
 頬を膨らませて拗ねる秋葉。
素直じゃない所がまた嗜虐心をそそるっていうか、まだまだお兄ちゃんの攻撃は終わらないのだ。
「だろうな。きっと秋葉のクラスの子たちは誰が何をやるか隠してるんだろ? 学祭のお化け屋敷は驚かすより変装を楽しむもんだから」
【秋葉】
「む。知ったような事をおっしゃいますけど、そういう兄さんは体験があるんですか」
「あるよ。俺も一年の頃はお化け屋敷だったから。いやもう、あの時は有彦がはりきってな。午前中で営業停止くらったぐらいだ」
のちにイヌイダケお子様誘拐事件と呼ばれ、生徒会の始末書録の中でも燦然と輝く一件だが今はまあ別の物語とかなんとか。
「ま、そんなのはどうでもいいか。それで、秋葉も当然お化けを演るんだろ。一体どんなお化けを選んだんだ?」
……個人的な趣味でいうんなら、子供の頃の秋葉なら座敷わらしとか似合うんだろなあ、とか連想する。
【秋葉】
「あのですね、そこまで答えるワケがないでしょう。兄さんの手口にはもうひっかかりたくないですから、ここからは黙秘権を行使します」
ふん、とそっぽを向く秋葉。
……あー、前言撤回。こうなっちゃった秋葉に愛らしい座敷わらしが似合う筈もない。
と、すると———
「わかった、ズバリ蛇女」
【秋葉】
「失礼ですね、猫又ですっ!」
きっぱりと返答する秋葉。
【秋葉】
「あ」
ぴたりと凍りつく秋葉。
あー、楽しい。日ごろチクチクと攻撃されているお返しができてお兄ちゃん大満足だ。
【秋葉】
「い、いえ、違うんですよ? 私は猫又なんて厭なんです。ですから当日は違う役を回してもらおうかな、と……」
猫又役が嫌なのか、それとも当日まで秘密にしておきたいのか。
秋葉は見てて可哀相になってくるほど落ちこんでいる。
……ちょっと、やりすぎてしまったかもしんない。
「……いやまあ、その———あんまり気にするなって。ネタが割れててもさ、お化けの格好しているだけでみんな喜んでくれるから。実際俺の時もそうだったしさ」
……まあ、俺の場合は喜んだというより笑われた、という所だけど。
「え……兄さんもお化け役だったんですか?」
「うい」こくん、と頷く。
【秋葉】
「そ、それでどんな役をしたんですか……!?」
ぐっ、と身を乗り出してくる秋葉。
……が、こっちも一年の頃のあの事件は忘れたい記憶になっているのでそんなに興味津々になられても困る。
「いいじゃんか、そんなのはもう終わった話だよ。聞いても、きっとつまらない」
【秋葉】
「つまるかつまらないかは私が判断する事です。私から秘密を聞き出したくせに自分の事だけ黙っているなんて卑怯だと思いませんか?」
ぐぐ、とさらに身を乗り出す秋葉。
「……しつこいなあ。なんだってそんな話を聞きたがるんだよ。女の子ならともかく、男が変装したお化けなんて醜いものだって相場が決まってるだろ。それとも何か、秋葉は俺を笑い者にしたいのか」
む、と秋葉を睨む。
【秋葉】
「え———いえ、そんなコトは、決して。ただその、兄さんがどんな格好をしたのか興味があるだけで……」
ぼそぼそと呟く秋葉。
……ったく、そんな顔をされたら黙っているわけにはいかないじゃないか。
「夜寒鶴」
【秋葉】
「はい? 兄さん、今なんて?」
「だから、夜寒鶴」
「ヤカン、ヅル……?」
【秋葉】
ああ、やっぱり解らないか。
「あの、兄さん。失礼ですが、それはいったいどんなお化けなんですか?」
「読んで字の如しだよ。二メートルぐらいのおっきなヤカンがな、森の奥の木にぶら下がってるだけの妖怪。水木先生の妖怪百科に載ってるから調べてみろ」
「や、やかんって……やかんが、木にぶらさがっているん、ですか?」
おお、ますます秋葉は混乱している。
「そうだよ。場所によっては木という木に巨大なヤカンがぶらさがっていてな、それはそれは気味が悪いんだそうだ。……まあ現代ならともかく、昔はおっきなヤカンを作るなんて酔狂はいなかったからな、一つだけでも恐かっただろうね」
【秋葉】
「……………兄さん、それは変装だったんですか?」
「わけないだろ。おっきなヤカンのぬいぐるみを着て、滑車を取りつけたぶら下がり健康器にぶら下がってこう、廊下をシャーッと滑走したんだ。有彦と協力すると夜寒鶴は文福茶釜にジョグレス進化するんだが、それはまた別の話」
【秋葉】
「ヤカンの次はチャガマですか。兄さん、貴方私をからかっていませんか?」
「ほんとだって。嘘だと思うなら生徒会発行の文化祭注意事項を見てみろ。お化け屋敷を企画するクラスはヤカンヅルおよびオバケキノコ、それらを利用したブンプクチャガマの使用を禁ずるってあるから」
【秋葉】
「…………………………」
お、どうやらあの注意書きに覚えがあるらしい。
秋葉は納得しつつも納得できないような、なんともいえない顔をする。
それきり沈黙。
俺たちはぽやーっとした不思議な空気を維持したまま、ぽやーっと夕食の時間を迎えるのだった。
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