「うん。たまには大帝都で上カルビを食べよう」
急にそんな気になった。というか、肉ならなんでもいいという野生衝動がどっかんどっかん。
自分の健康に気を遣って薄味なものばかり食べていると、たまにこういった反動がくる。
「———決めた。今夜はごちそうだ」
血のしたたるようなレアステーキ。いいね。
急にそんな気になった。というか、肉ならなんでもいいという野生衝動がどっかんどっかん。
自分の健康に気を遣って薄味なものばかり食べていると、たまにこういった反動がくる。
「———決めた。今夜はごちそうだ」
血のしたたるようなレアステーキ。いいね。
□町
□町
「—————————」
隣街には色がなかった。
……失敗した。ここはまだ彩色がすんでいなかったらしい。
□町
「—————————」
隣街には色がなかった。
……失敗した。ここはまだ彩色がすんでいなかったらしい。
「……っ」
忘れていた頭痛が蘇る。
「……ああ、思い出した」
まったくいつもこうだ。
その時までは忘れているくせに、最期を迎える事になると頭はとたんにクリアになりやがる。
いいかげん、自分の愚鈍さと縁を切りたくなってくる。
「————いるな」
いや、あるな、と言うべきか。
「どうせもう逃げられないし」
観念して呟くと、お約束のようにメガネを外した。
いや、あるな、と言うべきか。
「どうせもう逃げられないし」
観念して呟くと、お約束のようにメガネを外した。
□町
【コウマ】
「——————————」
現れる死の具現。
いや、現れるというのもまた間違い。
アイツは初めからここに存在していただろうから。
「——————————」
現れる死の具現。
いや、現れるというのもまた間違い。
アイツは初めからここに存在していただろうから。
「くっ—————」
途端、鼓動が激しくなる。
……慣れている。もう何度か慣れている筈なのに、心臓は狂ったように活動する。
途端、鼓動が激しくなる。
……慣れている。もう何度か慣れている筈なのに、心臓は狂ったように活動する。
———逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ。
なんとか踏みとどまろうとする遠野志貴のプライドと、
———逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ……!
生命維持を最優先する肉体とが火花を散らす。
【コウマ】
「——————————」
「はっ……はは、はぁ……ぁ」
胸を押さえて睨み返した。
発狂した心臓がぱちんぱちんと破裂していく。
「はっ……はは、はぁ……ぁ」
胸を押さえて睨み返した。
発狂した心臓がぱちんぱちんと破裂していく。
心臓をミキサーに入れられた後。
砂糖とレモンを混ぜて、スウィッチを入れられたような感じ。
心臓は綺麗に溶かされて血液の塊となり、全身の血管へと逆流する。
「は————はぁ、あ…………!」
その負荷で、毛穴という毛穴から血が噴出しそうなこの息苦しさ。
その負荷で、毛穴という毛穴から血が噴出しそうなこの息苦しさ。
【コウマ】
「————————————」
無言で片腕を上げる。
……知っている。あの腕は死神の鎌だ。何の技術もない、ただ相手へと突き出すだけの動作。技の鍛錬も戦いの駆け引きも知らない最も原始的な行為。
無言で片腕を上げる。
……知っている。あの腕は死神の鎌だ。何の技術もない、ただ相手へと突き出すだけの動作。技の鍛錬も戦いの駆け引きも知らない最も原始的な行為。
———だが、果たして誰が知ろう。
その腕こそが、およそ理想的な必殺を具現化したものだとは。
その腕こそが、およそ理想的な必殺を具現化したものだとは。
「————————貴様」
……自分の頭が粉々に砕かれるイメージを払拭して、なんとかそう声を上げた。
「——————————」
男に答えはない。当然だろう。元より岩のように頑なな男だった。アイツが言葉を発したら、それこそショック死しかねない。
……自分の頭が粉々に砕かれるイメージを払拭して、なんとかそう声を上げた。
「——————————」
男に答えはない。当然だろう。元より岩のように頑なな男だった。アイツが言葉を発したら、それこそショック死しかねない。
「———————消えろ、軋間……!」
自身に言い聞かせて走った。
敵はただ一人。
紅赤朱と呼ばれた、遠野志貴が持つ最強の死のイメージ。
そうして終わった。
もとよりこの場所でアイツに敵う筈もない。
ここは世界の果て。
この世界が死にかけている病根とも言える場所で、死に抗う事などできない。
もとよりこの場所でアイツに敵う筈もない。
ここは世界の果て。
この世界が死にかけている病根とも言える場所で、死に抗う事などできない。
——————だから、もし。
もしあの死を打倒する術があるのだとしたら、それはあの場所でだけだろう。
遠い昔。
ただ一度だけこの眼がアイツを認めた、あの暗い森の奥でだけ————
遠い昔。
ただ一度だけこの眼がアイツを認めた、あの暗い森の奥でだけ————