□公園前の街路
公園に足を運ぶ。
まだ午前中とはいえ公園は様々な人で賑わっている。
その中でも特に目を惹くのは、にゃーにゃーと列を作って奥へ奥へと進んで行く猫の群れだ。
公園に足を運ぶ。
まだ午前中とはいえ公園は様々な人で賑わっている。
その中でも特に目を惹くのは、にゃーにゃーと列を作って奥へ奥へと進んで行く猫の群れだ。
「—————あ」
ピンと来た。
あの猫たちが向かって行った先は、きっと————
あの猫たちが向かって行った先は、きっと————
□公園
「やっぱり」
猫たちは目的地に辿りつくと、それぞれ思い思いの場所に散開していく。
そこは木の下だったり時計台の裏だったりと様々だが、彼らには一つだけ共通する事項がある。
まあ、ようするに……
猫たちは目的地に辿りつくと、それぞれ思い思いの場所に散開していく。
そこは木の下だったり時計台の裏だったりと様々だが、彼らには一つだけ共通する事項がある。
まあ、ようするに……
……みんながみんな、このベンチを眺められる所にいるというコトだ。
「や。また会ったね」
「…………………………」
女の子はこくん、とうなずく。
……こっちはやっぱりよく覚えていないんだけど、女の子はこっちのコトを覚えてくれているようだ。
「今日はまた賑やかだね。ああ、ところでここに座っていいかな」
彼女の座っている隣のベンチを指差す。
「…………………………」
女の子は無言。その手に抱いた猫が抗議の声をあげない所を見ると、座ってもいいらしい。
「それじゃ失礼。……けどまあ随分と集まったもんだ。この公園、こんなに猫がいるとは思わなかった」
「…………………………」
女の子は照れたように俯いて、手の中の猫を撫でている。
「あっ、黒猫」
「……………?」
「あ、いや、別にどうってコトないんだ。最近ちょっと縁がある猫も黒いから、つい」
「…………………………」
じー、と見つめてくる瞳。
……何をいいたいのか分からないけど、そう真剣に見つめられるとちょっと照れる。
「そっちは白猫だね。色がきれいでお姫様みたいだ」
「—————————」
「……? いや、別に黒猫を悪く言ってるわけじゃないんだけど」
「…………………………」
女の子の視線がちょっとだけ意固地になる。
……うーん、白猫だけ持ち上げるようなコトを言ったから怒ったんだろうか?
「そっちの茶トラもいいんじゃないかな。やっぱり猫は親しみが第一だし」
茶色のトラじま猫も誉めてみる。
「…………………………」
……あ。なんか、ますます不機嫌そうな感じ。
「あ、いや、そういうんじゃなくて! みんな均等に可愛いと思うよ、うん!」
「…………………………」
じー、とまだ疑わしい眼差しを向けてくる。
……これは、ようするにアレだ。不公平な扱いが許せないほど、全ての猫が気に入っている、というコトなんだ。
「そっか。猫、好きなの?」
「…………………………」
ん、と首をかしげる。
好きなのか嫌いなのか、これまたはっきりとしない。
「うん、俺も好きだよ。……まあ下手の横好きっていうか、猫たちには嫌われてるみたいなんだけど」
とくにあの黒猫なんて何回会っても触らせてもくれやしないし。
「…………………………」
「え? そんなコトないって?」
「…………………………」
ん、と首をかしげる。
……嫌われてるのかそうでないのか、またも判別がつかない曖昧な答えだった。
□公園
時計の針が十二時にさしかかって、女の子は席を立った。
時計の針が十二時にさしかかって、女の子は席を立った。
【レン】
「……………………………」
この時間になると何処かへ行ってしまうのも、言葉もなく見つめてくるのもいつも通りだ。
「……………………………」
この時間になると何処かへ行ってしまうのも、言葉もなく見つめてくるのもいつも通りだ。
「ああ、もうお出かけの時間? なんだかあっというまだったな」
だからさして驚くことなく、自然にそんな言葉が口に出た。
「そうか、それじゃまた。……ああ、それとも一緒についていこうか? 一人きりだと危ないだろ」
【レン】
【レン】
どこか悲しそうに首をふる。
そんな顔をされると無理強いはできないし、昼間ならさして危ないというコトもないだろう。
そうして彼女は猫たちと一緒に去っていった。
そんな顔をされると無理強いはできないし、昼間ならさして危ないというコトもないだろう。
そうして彼女は猫たちと一緒に去っていった。
「——————さて」
もう昼だ。
ベンチを立って、あてもなく歩く事にした。