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歌月十夜153

时间: 2019-11-29    进入日语论坛
核心提示:*s188□繁華街大通りまでやってきた。時刻はまだ昼を過ぎたばかり、街が賑わうのはこれからが本番といった所だろう。「さて、こ
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*s188
 
□繁華街
大通りまでやってきた。
時刻はまだ昼を過ぎたばかり、街が賑わうのはこれからが本番といった所だろう。
「さて、これからどうしようか」
遊ぶにしても選択肢がありすぎて迷ってしまう。
やはりここは定番として、久しぶりにゲームセンターにでも———

□繁華街
□雪降る町
「—————え?」
目の錯覚か。
今は秋なのに、どうしていきなり。
「……雪だ」
雪なんかが、こんなにもはっきりと降ってきているんだろう。

「————さむっ」
ぶるっと体が震える。
唐突に降り出した雪に合わせるように気温は下がっていて、吐く息は真っ白になっていた。
「ちょっ、ちょっとおかしいぞこれ……!」
周囲を見渡す。
街にいる人たちもこの異状に気が付いている筈だ、と目を配る。
……と。
さっきまであんなに沢山いた人影は残らず消え去ってしまっていた。

「———————」
きっと、みんな申し合わせたようにデパートやら喫茶店に入ってしまったに違いない。
これだけ寒くなってしまったのだ。そりゃあ秋服のままなら建物に逃げ込むのも道理ってものだろうし。
「————なるほど。そりゃあ、冴えてる」
……自分でもかなり素っ頓狂な考えだと思うのだが、今はそれで心から納得してしまった。

「……よし、こっちも適当な店で寒さをしのがないとな」
いい考えだ。すぐ近くの喫茶店には入って温かいレモンティーを頼めば、ものすごく美味しくいただけるコトだろう。
「決まり」
よし、と喫茶店に向かって足を進める。
「……あれ?」
その直後、視界の隅に見知った顔が通りすぎて行った。
 
 雪の街に黒いコートが舞っている。
なにが忙しいのか、長い髪をなびかせて女の子が走っていた。
……いや、髪をなびかせてというのは間違っている。
彼女は一生懸命で、まるで何かに追われるように必死に雪の街を走っている。
だから、髪をなびかせてというよりは、髪をかき乱して、という表現のほうがぴったりくるかもしれない。

————彼女だ。
 スミレ色の髪、真っ黒いコート。
見間違える筈もないその姿を見て、なるほど、と頷いた。
この突然の冬にこそ彼女は相応しい。
あの黒いコートは、ようするに今日みたく寒い日のためのものだった。

誰もいない雪の街。
ここよりもっと雪が降りしきる所を目指して彼女は必死に走っている。
その姿はあまりにも真摯で、見ているこっちの心を停止させた。
はぁはぁと息を切らしながら、何かを守るためにあんなに健気に走っている。
それで、何の確証もなく思った。
彼女は誰かに追われている訳でもなく、慌てて間違いを直しに向かっているのだと。

———急がなくちゃ、急がなくちゃ。
今は秋なんだから、雪なんか降ってはいけない。
こんな風に間違いをおこしてしまうとあの人に気付かれてしまうから、急いで間違いの元を修復しないといけないのだ——�
なんて、そんな独り言が聞こえてきそう。

「————————」
……それで、なんとなくカラクリが掴めた気がした。
彼女は必死でこの矛盾だらけの舞台を整えてくれている。
無理がないように。
無理にならないように。
楽しくありますように。
幸せでありますように。

それを守るために走る。
黒いコートは、ありえない秋の雪を駆けぬけて行く。
額に汗をうかべて、誰も誉めてくれないのにああしていつも走っている。

□繁華街
 そうして、いつしか雪は止んでいた。
建物から出てきたのか、街には溢れるほどの人影が帰ってきた。
「————————」
そうして一人で佇む。
あの黒コートの女の子を誉めてあげたくて、いつまでも、彼女が駆けていった彼方を見つめていた。
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