□廊下
「……うわ、すごいなこりゃ」
階段を下りた途端、喧騒と熱気がカタチになって肌にぶつかってきた。
廊下は埋め尽くさんばかりの人、人、人で、各教室の出し物も凝りに凝っていて大盛況だ。
外来のお客さんもいまの所この階が一番多いのか、制服姿の生徒たちより私服姿の人影のほうが圧倒的に多い。
「……うわ、すごいなこりゃ」
階段を下りた途端、喧騒と熱気がカタチになって肌にぶつかってきた。
廊下は埋め尽くさんばかりの人、人、人で、各教室の出し物も凝りに凝っていて大盛況だ。
外来のお客さんもいまの所この階が一番多いのか、制服姿の生徒たちより私服姿の人影のほうが圧倒的に多い。
「———って、先輩のクラスは————」
何度か足を運んだ教室へ急ぐ。
先輩のクラスの出し物はカジノだった。
様々なゲームを用意し、お客さんの相手をする生徒はいかにもカジノっぽい制服を着て応対している。
もちろんお金を賭けているワケではなく、学祭のチケットと引き換えに幾ばくかのチップを提供、それを増やして賞品をゲットするというシステムである。
もともとギャンブラーが多いというこのクラス、ディーラーに選抜された生徒はみな百戦錬磨のイカ○マ遣いだ。
何度か足を運んだ教室へ急ぐ。
先輩のクラスの出し物はカジノだった。
様々なゲームを用意し、お客さんの相手をする生徒はいかにもカジノっぽい制服を着て応対している。
もちろんお金を賭けているワケではなく、学祭のチケットと引き換えに幾ばくかのチップを提供、それを増やして賞品をゲットするというシステムである。
もともとギャンブラーが多いというこのクラス、ディーラーに選抜された生徒はみな百戦錬磨のイカ○マ遣いだ。
「……あれ、けど一番のイカサ○遣いがいないな」
ブラックジャックでは負け知らず、昼休みになるとチップがわりに食券を奪ってはカレーに還元してしまうというメガネの女生徒の姿がない。
「すみませーん、シエル先輩は何処ですか?」
ジュースを運んでいるうさぎさんに声をかける。
うざきさんは、
「ああ、彼女なら生徒会。午後から生徒会が劇をやるでしょう? その打ち合わせだよ」
ルージュをひいた色っぽい唇に指をあててそう言った。
ブラックジャックでは負け知らず、昼休みになるとチップがわりに食券を奪ってはカレーに還元してしまうというメガネの女生徒の姿がない。
「すみませーん、シエル先輩は何処ですか?」
ジュースを運んでいるうさぎさんに声をかける。
うざきさんは、
「ああ、彼女なら生徒会。午後から生徒会が劇をやるでしょう? その打ち合わせだよ」
ルージュをひいた色っぽい唇に指をあててそう言った。
「……そっか、生徒会に協力するって言ってたもんな、先輩」
そうときまれば午前中と午後の予定を変更しなければなるまい。
午前中にクラスの手伝いをして、午後は自由行動にすれば生徒会の劇を観ることができるだろう———
そうときまれば午前中と午後の予定を変更しなければなるまい。
午前中にクラスの手伝いをして、午後は自由行動にすれば生徒会の劇を観ることができるだろう———
「————いいえ。残念ながらそうはいかないんです、遠野くん」
「へ、先輩……?」
「へ、先輩……?」
□廊下
【シエル】
「はい。せっかく午後の劇を楽しみにしてくれた遠野くんには申し訳ないのですが、どう頑張っても色々あがいても四方八方手を尽くしても遠野くんが生徒会の劇を観るコトはできません。なぜなら—————」
「はい。せっかく午後の劇を楽しみにしてくれた遠野くんには申し訳ないのですが、どう頑張っても色々あがいても四方八方手を尽くしても遠野くんが生徒会の劇を観るコトはできません。なぜなら—————」
ぐっ、と溜めを利かせて言葉を呑み込むシエル先輩。
けれど、いくら待ってもその続きが囁かれるコトはなかった。
けれど、いくら待ってもその続きが囁かれるコトはなかった。
「……あの。先輩、続きが気になるんですけど」
【シエル】
「ふふふ。気になりますか、遠野くん」
先輩はどこか自虐的な含み笑いをうかべている。
「———はあ。そこまで言われると気になります。で、どうして俺は生徒会の劇を観れないんですか?」
【シエル】
先輩はどこか自虐的な含み笑いをうかべている。
「———はあ。そこまで言われると気になります。で、どうして俺は生徒会の劇を観れないんですか?」
【シエル】
「没だからです」
きっぱりと、どこか嬉しそうに
いや、だから自虐的という意味で
シエル先輩はワケノワカラナイ事を言った。
「……は? あの、ボツってどういう……」
【シエル】
「それをわたしに言わせようっていうんですか遠野くんは!」
「ひゃ、ご、ごめんなさいっ……!」
「それをわたしに言わせようっていうんですか遠野くんは!」
「ひゃ、ご、ごめんなさいっ……!」
【シエル】
「なーんて、冗談ですよじょーだん。わたし、自分の出番がまるごと没にされたぐらいで遠野くんに当たるようなコトはしませんよ」
ねっ、とはにかむシエル先輩。
……けど、あの。どうしてこう、さっきから音楽が恐ろしいまでにな不吉なんでしょーか?
ねっ、とはにかむシエル先輩。
……けど、あの。どうしてこう、さっきから音楽が恐ろしいまでにな不吉なんでしょーか?
「そ、そっか———生徒会の劇は没になったんだ。……あの、ここまでみっともない内輪ネタってコトは、ドタキャン?」
【シエル】
「はい、ドタキャンもドタキャン、完成一週間前の土壇場キャンセルです。言うなればアルティミットKOでゲームオーバーになったぐらいのショックでしょうか」
……うわあ、そりゃあ根が深い。
さんざん生徒会の劇に出るんですよー、と言い散らしておいてこの仕打ちか。ますますシエル先輩のシンパに怒られそうな展開だなこりゃ。
……うわあ、そりゃあ根が深い。
さんざん生徒会の劇に出るんですよー、と言い散らしておいてこの仕打ちか。ますますシエル先輩のシンパに怒られそうな展開だなこりゃ。
【シエル】
「けどまあ、仕方ないんじゃないでしょうかね。わたしはどうせ五位ですし、二回目でも上位三位に入れない女ですから。翡翠さんとか秋葉さんにイベントが割り振られるのも当然だと思います」
「……先輩、そんなに悲観的にならなくても、他できっと活躍の場があるんじゃないかな」
「……先輩、そんなに悲観的にならなくても、他できっと活躍の場があるんじゃないかな」
【シエル】
「それはクロスカウンターをしたり俺ーショップで叫んだりとかですか?」
□廊下
「———————」
閉口。言われてみれば、琥珀さんと先輩って今回はなんていうか————
閉口。言われてみれば、琥珀さんと先輩って今回はなんていうか————
「あ、あのさ先輩! その、没になっちまったのは残念だけど話だけでも聞かせてくれないかな。生徒会の劇ってどんなものをやる予定だったの?」
【シエル】
「それがですね、お姫さま物だったんですよ! わたしがロングの鬘をかぶってですね、戦乱の世に翻弄される小国のお姫さま役を演る予定だったんです!」
思い出し笑いなのか、きゃー、と嬉し恥ずかしシエル先輩。
「へえ、先輩のお姫様姿かあ。それはたしかに見たかったかも———」
アルクェイドが白なら、先輩は青の姫君といった所だっただろう。
法衣や暗殺服ではない、ドレス姿の先輩の姿はさぞ———
思い出し笑いなのか、きゃー、と嬉し恥ずかしシエル先輩。
「へえ、先輩のお姫様姿かあ。それはたしかに見たかったかも———」
アルクェイドが白なら、先輩は青の姫君といった所だっただろう。
法衣や暗殺服ではない、ドレス姿の先輩の姿はさぞ———
「いいじゃないか! 実に文化祭のトリに相応しいイベントだ。どうしてそれが没になったんだよ、一体」
【シエル】
「そうですねえ。一日が25時間なかったせいと言いましょうか、初めはイベント画で、けれどそれも苦しいのでせめて立ち絵を一枚、いやいやそれももう無理だから今回は諦めてもらうしかないな、どうせシエルだし!———といった大人の事情でしょう」
「—————————」
……だめだ、悲惨すぎてどんなフォローも浮かばない。
「—————————」
……だめだ、悲惨すぎてどんなフォローも浮かばない。
「……そうか。それで先輩、その劇のタイトルはなんだったのかな」
【シエル】
「え……タ、タイトルですか?」
「うん、タイトル。せめて内容を想像したいと思って」
「…………SB・カレーの王女さま、です」
先輩は視線を逸らして、恥ずかしげにそう言った。
「うん、タイトル。せめて内容を想像したいと思って」
「…………SB・カレーの王女さま、です」
先輩は視線を逸らして、恥ずかしげにそう言った。
「————————」
「————————」
ああ。なんか、没になった理由がわかった気がする。
「……あのさ。先輩、それって」
【シエル】
「あ、降り出してきましたね。それではわたしは失礼します」
「ちょっ……先輩、雨なんか降ってないんだけど!」
「……ふふふ、いいでしょう遠野くん。全キャラ中道具を持ってる立ち絵はわたしと琥珀さんだけなんですよ」
「ちょっ……先輩、雨なんか降ってないんだけど!」
「……ふふふ、いいでしょう遠野くん。全キャラ中道具を持ってる立ち絵はわたしと琥珀さんだけなんですよ」
「っていうか室内! ここ室内だってば先輩!」
先輩は傘をさしたまま、高速で去っていった。
「行っちゃった。……けど先輩、実は……」
今回は、いろんなヤツがいろんなモノを持っていたりするんだ。
「……しかし、SBカレーの王女さま、か」
そのタイトルから封印された劇の内容を想像する。
とりあえず、今の自分に断言できる事は唯一つだけ。
SBとは、つまりスパイシービーフの略だと思うのだがどうか。
SBとは、つまりスパイシービーフの略だと思うのだがどうか。