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真夜中のサーカス51

时间: 2020-03-21    进入日语论坛
核心提示:小人の曲芸一これ、と思うものがみつかったら、もう店の人の顔をまともにみてはいけない。目の端に軽く|捉《とら》えて置いて、
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小人の曲芸

これ、と思うものがみつかったら、もう店の人の顔をまともにみてはいけない。目の端に軽く|捉《とら》えて置いて、さりげなくその品物を手に取ってみる。買おうかしら。それとも別のにしようかしら。ちょっと迷う素振りで、店の人の注意が自分からすっかり離れる瞬間を待つ。
最初から、目ざとい店員のいる店は敬遠して、主人かおかみさんが独りで何人もの客を相手にしているような店を選ぶから、焦らずに待っていさえすれば、機会は何度でもやってくる。
いまだ、と思っても、あわててポケットにねじ込んだりしてはいけない。店の人がみていなくても、誰の目がどこで光っているかわからない。それに、もしかしたら店の人だってこっちを目の端に捉えているかもしれないということを忘れてはいけない。途中で、突然、動作のリズムを変えたりしたら、怪しまれてしまう。
そっと、手のなかに握ってみる。固く握り締めてはいけない、いざというときにはいつでも元の場所へぽろりと落とせるように、軽く握るのがいい。そのまま、ほかにいいものはないかと物色するそぶりで、店の人の様子を|窺《うかが》う。何事もなければ、その手の小指でちょっと頬を|掻《か》いてみる。それから、|痒《かゆ》いところから痒いところへと手がひとりでに動くような感じに、喉から胸の方へ小指を滑らせていって、手がブラウスの襟の|蔭《かげ》に隠れたとき、下着と肌の間へぽろりと品物を落としてやる。
これでいい。あとは、入ってきたときのように、ぼんやり店を出るだけである。ほかにまだ欲しいものがあっても、一軒から一つが無難なところで、欲張ってはいけない。店のなかを見廻して、意味もなくゆっくり頷きながら入口の方へ歩く。ここで駈け出したら、おしまいである。自分にそういい聞かせながら、ゆっくりすぎるくらいにのろのろと外へ出る。
よく晴れた日なら、目がくらんだように軒下でちょっと立ち止まってみせるのもいい。曇りの日なら、一と雨くるのではないかと空を仰いでみせるのもいい。それから、家とは反対の方向へゆっくりと歩いて、通行人のひとりになる。
何事もなかった。自分はなにもしなかった。ただ、いつのまにか|鳩尾《みぞおち》のあたりに、なにやら火照るものが紛れ込んでいるだけだ。浜へいって、打ち揚げられた破船の蔭で調べてみよう。
遠道をして、歩きつづける。
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