買ってきたシジミを一晩水につけて置く。夜中に起きたらみんな口をあけて生きていた。あしたはそれらをすっかり食べてしまう。その私もシジミと同じ口をあけて寝るばかりの夜であることを、詩に書いたことがあります。
一人暮らしには五十円も買うと、一回では食べきれないシジミ。長く生かしてあげたいなどと甘い気持ちで二日おき、三日たつ間に、シジミは元気をなくし、ひとつ、またひとつ、パカッパカッと口をあけて死んでゆきました。
どっちみち死ぬ運命にあるのだから、シジミにとっては同じだろう、と思いましたが、ある日、やっぱりムダ死にさせてはいけないと身勝手に決めました。シジミをナベに入れるとき語りかけます。「あのね、私といっしょに、もう少し遠くまで行きましょう」