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十二国記089

时间: 2020-08-19    进入日语论坛
核心提示: 延《えん》は街のはずれに行くと、高く指笛を鳴らした。 関弓《かんきゅう》までは歩いてあとひと月はかかる。そうして、夜に
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 延《えん》は街のはずれに行くと、高く指笛を鳴らした。
 関弓《かんきゅう》までは歩いてあとひと月はかかる。そうして、夜には街の出入りができない。いったいどうやって街を出、関弓にいくつもりなのだろうかと陽子が考えていると、指笛に答えたように郭壁の上に影が現れた。淡く輝いているように見える虎が二匹、毛並みは黒い縞《しま》に光線の加減よって色の変わる白、真珠に例えるほど淡くなく、油膜に例えるほど濃くもない。ブラック・オパールのような目が印象的で、すばらしく尾が長かった。
 
 そもそも最初に虚海《きょかい》を渡った夜のように、その虎に騎乗し、半月の浮かんだ夜空を駆けて陽子たちは関弓へ向かった。
 ひどく懐かしかった。振り返ってみれば、どれほど長い時間が流れたことだろう。ヒョウキと呼ばれた景麒《けいき》の使令に騎乗して海に向かったのはまだ寒かったころ。あのころの陽子はなにひとつわかっていなかった。景麒のことも、自分のことも。
 そしていま、世界は夏。夜気に熱気がこもって、虎の周囲に風がないのが寂《さび》しい。
 宙を駆ける獣の足元には、虚海を越えた夜と同じように夜景が広がっている。雁《えん》国の夜は明るい。里が廬《ろ》が、小さな星団を作って虚海のようだった。
 
「陽子、あれが関弓だ」
 背中にしがみついた楽俊が小さな前肢で前方を指さしたのは騎乗して二時間もしたころだったろうか。
 楽俊が示した方向にはなにも見えなかった。街の明かりも見えず、ただ深い闇だけがある。どこに、と問い返そうとして、陽子は自分が見るべきものを誤解していたのを悟《さと》った。楽俊は闇の中になにかを示したのではなく、闇そのものを示したのだ。
「……うそだ……」
 半月の光を浴びて下界は深い海の色、森の輪郭がわずかに白い。まるで波のようだった。そして、点在する無数の灯火。──その夜景を黒々と切り取った深い穴。
 いや、穴ではない。半月を背後にいただいて、それは黒いシルエットだった。夜景を切り取り、穴のように見えるが穴ではない。むしろそれは隆起で──。
「……山」
 ──こんな山があるものか。
 里が天にしか見えないほどの高空にいて、それはなお仰向くほどに高い。
 ──天に届く山、とかつて楽俊は言った。
 だがしかし、本当に天に届くほどの山があろうとは。
 一瞬、自分が恐ろしく小さな生き物になった気がした。
 屹立《きつりつ》し、天地を貫く柱のようなその山。ゆるやかな山地のあいだから空に向かって伸びた姿は、長さのちがう筆をたばねて立てたようにも見える。細く険しい山頂はほとんどが雲をまとわりつかせていて、その形状を隠していた。
 その影になった岩肌が。──まるで巨大な壁のようだった。
「……あれが、関弓? あの山が?」
 足元と山までを見比べるとまだ信じられないほどの距離があるのが分かる。なのに、あの巨大さ。
「そうだ。あれが関弓山。王宮のある山はどこの国でもあんなふうだ。あの山の頂上に玄英宮《げんえいきゅう》がある」
 わずかに月光を浴びた崖の線が白い。それは垂直に近いほど鋭かった。城の姿を探したが、頂《いただき》は雲に隠れて定かではない。
「あの光が関弓の街だ」
 首都ならば烏号より大きな街だろう。それが光ひとつにしか見えないほど遠い。
 しばらく陽子は呆然としていた。
 こんなに近くに見えるのに空飛ぶ獣の足をもってしても、関弓は逃げているように近くならない。やがて細い山が近づいてきて、首を動かさなくては山全体を視野に収めることができなくなり、ついには完全に上を向いても頂上を見ることができなくなって、それでようやく関弓の街の輪郭が見えた。
 関弓は途方もなく高い山の麓に盛りあがったなだらかな丘陵地帯に、弧《こ》を描いて広がっていた。これだけ巨大な山が背後に控えていれば、夜は恐ろしく長いだろう。
 そう楽俊に聞くと、そうだと言う。
「巧《こう》国の傲霜《ごうそう》に行ったことがあるが、そんな感じだったなぁ。傲霜は山の東にあるから、黄昏《たそがれ》がうんと長いんだ」
「……そうか」
 上空から見れば、関弓は巨大な街だった。足元一面に光の海が広がる。そして目の前には見わたす限りの崖。垂直に細い山が幾重にも重なってできた岩肌は、樹木の一本も見えずただ夜目にも白い。
 先を行く延が山の高いところ、断崖に張り出した岩場に舞い降りた。
 
 岩場の広さは小さな体育館ほどの面積で、ちょうど大きな岩の塊を平坦に削ったように見えた。延に続いて陽子たちを乗せた虎が岩場に降り立つ。先に降りた延が振り返って笑顔を見せた。
「どうやら落ちずについてきたな」
 揺れもしなければ風を切る感触もない獣の背からどうやれば落ちるのだろうと思っていると、思考を読んだように延は笑う。
「高さに目を回す者やら、心地よすぎてうたた寝をする者やらいるからな」
 なるほど、と陽子は苦笑する。
 岩場の白い石は平坦に削られ、滑り止めだろうか、深く細かい模様が彫《ほ》りこまれている。岩場の周囲に手すりはなく、ちょっと端に寄ってみる気にはなれない。地上からここまでどれほどの高さがあるのか、陽子には想像もつかない。
 岩場に続く崖には大きな両開きの扉があった。延はきびすを返してその扉に向かう。そこへたどり着く前に扉が内側へ開いた。
 身の丈の倍はある一枚の白い石でできているらしい、どう見ても重そうに見える扉を開いたのはふたりの兵士だった。本当に兵士なのかどうかは知らない。厚い革の胸当てを身につけているので、兵士だろうかと思っただけの話だ。
 彼らにうなずいてから、延は陽子たちを振り返る。自らも中に踏み込みながら、入ってくるよう視線でうながした。陽子と楽俊が扉をくぐると、二人の兵士は軽く頭をさげ、そのまま外に出て行く。岩場の上に休んでいる二頭の虎に駆け寄った。ひょっとしたら馬のようにこれから水と餌をもらって、ブラシでもかけてもらうのかもしれない。
「──どうした? こちらだ」
 延は陽子を見る。あわてて延のあとを追うと、中は広い廊下だった。
 上にシャンデリアのような灯火があって昼のようにあかるい。楽俊が驚いたように髭《ひげ》をそよがせて天井を見あげていたから、やはり珍しいものなのだろう。
 長くはない廊下を抜けるとちょっとした広間で、そこからトンネルのようなアーチの中を白い石の階段が上へ昇っていた。楽俊がその階段を見あげてしおしおと髭をそよがせる。先に足を駆けた延が降り返った。
「どうした。遠慮ならいらんぞ」
「いえ」
 楽俊の顔は少しひきつっている。その気分が陽子にはよくわかった。
「なあ、陽子」
 声をひそめて楽俊が言ってくる。
「やっぱりこれを昇るのかな」
「じゃないかな」
 答えながら、陽子も少々ウンザリしている。降り立った岩場は山のずいぶんと高いところにあったが、それでもなお頂上までは超高層ビルに匹敵する高さを残している。その距離を昇るのだとしたら、これは大変な苦行かもしれない。
 それでも不満のいいようがなく、陽子はだまって階段に足をかける。なんとなく楽俊の手を引いた。段差は低いが階段自体は長い。延の後についてそれを昇り、昇りきったところにある大きな踊り場で九十度方向を変え、もう一度階段を昇ると小さな広間に出た。広間の奥にはみごとな彫刻をほどこした木製の扉がある。
 厚い木に鮮《あざやか》やかな浮き彫りを施したその扉を出たとたん、ゆるやかな風が吹きつけてきた。濃く潮《しお》の匂いがした。
「……あ」
 思わず陽子は声をあげる。扉の前は広いテラス、そうしてそこが、もはや雲の上だった。
 どんな不思議かはしらないが、たったあれだけの階段を昇っただけで、すでにあの高さを上昇していたらしい。白い石で床を張り、同じく白い石で手すりを設けたテラスの下に白く雲の波が打ち寄せている。
 ──いや、本当に白い波が打ち寄せていて陽子は目を見開いた。
「楽俊、海がある……!」
 思わず声をあげて手すりに駆けよった。崖に張り出したテラスの足元に波が高く打ち寄せている。見わたせばここは海の上、潮の匂いがする道理だった。
「あるさ、空の上だもん」
 楽俊に言われて陽子はふりかえる。
「空の上に海があるのか?」
「海がなかったら雲海とはいわねえだろ?」
 海上には濃く潮の匂いを含んだ風が吹き渡っている。みわたすかぎりの暗い海、テラスの下まで打ち寄せる波。手すりから乗り出すようにしてのぞきこんだ海の底には光が見える。虚海《きょかい》のようだが、その光がはるか下方にある関弓のあかりだとわかった。
「不思議だ……。どうして水が落ちないんだろう」
「雲海の水が落ちたらみんな困るじゃないか」
 くつくつと笑ったのは延だった。
「気にいったのなら、景《けい》王には露台のある部屋を用意させてもらおう」
「あの……」
 なんと呼んでいいのかわからずに陽子はそう声をかけた。
「その景王、っていうの止めていただけませんか」
 延は面白そうに片眉をあげた。
「なぜ?」
「なんとなく……。他人ごとみたいで」
 言うと延はかるく笑った。なにかを言いかけてふと空を見あげる。視線を追っていくと白く細い光が流れるのが見えた。
「台輔《たいほ》が戻ったな。──では、陽子」
 言って延は背を向ける。露台の左奥に上へ昇る短い石段がある。先をいく男に習って足をかけ、そこで陽子は呆然《ぼうぜん》と前方を見あげた。
 中央に険しい山を配した島のような地形の、月光を受けて白い断崖に無数の建物が配されていた。水墨画に見るような山には奇岩が続き、岩肌には樹木が枝を張り出し、細い滝がいくつも見える。
 その山の崖に、あるものは塔《とう》を形作り、あるものは楼閣《ろうかく》をなし、それらの建物を縦横に回廊がつないでひとつの建築物を造っている。
 まるで山を取りこんだ巨大な城のような、それが雁《えん》国の中心、延王の居宮である玄英宮だった。
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