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十二国記098

时间: 2020-08-19    进入日语论坛
核心提示: 維龍《いりゅう》襲撃のその日、陽子が騎馬に借りたのは吉量《きつりょう》という生き物だった。吉量は白い縞《しま》のある紅
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 維龍《いりゅう》襲撃のその日、陽子が騎馬に借りたのは吉量《きつりょう》という生き物だった。吉量は白い縞《しま》のある紅い鬣《たてがみ》の馬、金の目が美しい。乗馬の方法はジョウユウが知っている。
「陽子は関弓《かんきゅう》にいてもいいのだぞ」
 延《えん》は言ったが、陽子はうなずかなかった。維龍を守る兵は六千あまり、一騎でも多いほうがいいのはわかっている。ましてやことが景麒《けいき》のことで、ひいてはそれが慶《けい》国のことで、陽子が隠れていていいはずがない。
 五百年もの長いあいだ、一国を支え続けた延と延麒《えんき》に向かって、やってみますとはっせいするのにはおそろしいほどの勇気がいった。こちらの世界のすべてを知っているわけではない。国のしくみも政治のしくみも知らない。王を名乗る器量もないとわかっている。
 だからもう、自分にやれることを、とにかくがむしゃらにやってみるしかなかった。今、戦うことが必要だから戦う。とにかくそこから取りかかるしかないから、玄英宮《げんえいきゅう》に隠れているわけにはいかないのだ。
 陽子のほかにもうひとり隠れていることを拒んだ者がいる。楽俊だった。楽俊には関弓に残るよう強く言ったが、彼は承服しなかった。ならば手伝えと延麒が言って、彼に伴われて出ていった。麒麟《きりん》は血を厭《いと》うので、戦場には連れていけない。彼は楽俊とともに慶国各地で偽王軍に下った州侯《しゅうこう》を説得するために慶国へ向かっている。
 
 百と二十の獣が雲海の上を駆ける。偽王軍は二万あまり。そのうち五千が征《せい》州に結集している。百二十騎で戦える相手ではもとよりないと延は言う。
「目的は景麒だけだ。景麒さえ奪還できればとりあえず時間をかせげる。さらに、偽王軍の連中に、自分たちが後生大事《ごしょうだいじ》に守っているのが偽王ではないかと疑わせることができれば上々。州侯の三人ばかりが目を覚ませば、一気に形勢は逆転する」
 景麒を取り戻すことは第一歩に過ぎない。
「百二十で勝算はあるのか?」
 陽子がきくと、延は笑う。
「いちおう、一騎当千とはいかずとも、一騎当十程度の者を集めたつもりだ。しかも雲海の上は守りが薄い。空の上に昇れる者には限りがあるからな。連中はまだ景《けい》王が我々のところにあることを知らないはずだ。知られぬよう、わざわざ俺が迎えに出向いたのだから」
 それで延がたったひとりで容昌《ようしょう》まで迎えにきたのか、と思う。
「まあ、景王がどんな人物だか興味もあったのだがな。──だから、舒栄《じょえい》もまさか雁《えん》が出てくるとは思っておるまい。わずか百二十騎にしろ、雲海からやってくるとは思ってもみないはずがだからな。──あとは景王しだいか」
「──わたし?」
「おまえが偽王軍を威圧できれば、話はもっと早いな。偽王のために戦う民などおんからな。おまえがまちがいなく王だとわかれば、兵のほうから景麒を差し出すだろう」
 それができれば、と陽子は溜息をつく。
「迷うなよ。おまえが王だ。それを忘れるな。王など体《てい》のいい下男のようなものだが、それを民に気取られるな。自分がいちばん偉《えら》いのだという顔をすることだ」
「どうすれば、そういう気分になれるんだろう」
 陽子はふたたびためいきをつく。
「自信があればできるだろうけど、自信の持ちようがない」
「そんなもの」
 延は笑う。
「麒麟が選んだのだから、文句があれば麒麟に言え、と思うことだな」
 陽子は少し呆《あき》れた気分で延を見返す。
「それが名君になるコツ?」
「そうだろう、きっと。少なくとも俺はこれでやってきたからな。文句があれば延麒にいえ。それでも不服なら自分でやってみろ、と」
「……なるほど。覚えておこう」
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