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十二国記108

时间: 2020-08-24    进入日语论坛
核心提示:「ずいぶん大きな蝕《しょく》だったんだって?」 楽俊は昼食のあとかたづけをしながら言った。「配浪《はいろう》の長老はそう
(单词翻译:双击或拖选)
「ずいぶん大きな蝕《しょく》だったんだって?」
 楽俊は昼食のあとかたづけをしながら言った。
「……配浪《はいろう》の長老はそう言ってた」
「槙《しん》の東一帯は、今年の麦が全滅だとさ。かわいそうな話だ」
 陽子はただうつむく。胸のどこかがわずかに痛んだ。
「陽子がしょげることはねえ。別に陽子のせいってわけじゃねえんだから」
「しょげてるわけじゃない」
 竈《かまど》の灰を掻き出しながら言った陽子の手をかるく叩いたのは、短い毛並みにおおわれた尻尾《しっぽ》だった。
「海客《かいきゃく》が来るから蝕が起こるわけじゃねえ。蝕が起こるから海客が来るんだ」
 陽子は楽俊に言われたとおりに木箱のなかに灰を落としこむ。燃え残った木屑を拾いあげてべつの箱に入れた。
「聞いてもいいかな」
「なんだ?」
「蝕って、なに?」
 嵐のようなものだと配浪の長老に聞いたが、実際にどういうものだかはよくわからない。
「ああ、蝕もわからねえか。あっちには蝕がねえんだな」
「日蝕、とか月蝕ならあるけど」
「似たようなもんだ。べつに太陽が欠けたり月が欠けたりはしねぇけどな。そうだな、嵐みたいなもんかな。嵐は空気が乱れるが、蝕は気が乱れる」
「雨が降って、風が吹いて?」
「そういうこともある。たんに嵐のように大風が吹く蝕もあるが、そういう蝕はたいしたことがないな。地震があったり雷が鳴ったり川が逆流したり、いきなり地面が沈んだりする。いろんな天変地異がいっしょくたにくると思えばまちがいないかな。配浪じゃヨウチって湖の底が盛りあがってあふれたとよ。もう湖は跡形もねえそうだ」
 陽子は灰を落とすために洗っていた手を止めた。
「そんなに厳しい災害なの?」
「ものよるけどな。おいらたちは嵐よりは蝕が怖い。蝕はなにがおこるかわからなねえから」
「どうしてそんなことが」
 楽俊は真剣な顔で、大仕事をする手つきでもってお茶を入れている。
「蝕ってのは、あっちとこっちが重なって混じっちまうことを言うんだそうだ。本来なら別々のものが重なるから、災害になる。よくはわからねえけど、そういうことなんだと思うぜ」
「あっちとこっち……」
 この家で出されるお茶は緑茶のような色をしている。それでもぜんぜん匂いがちがう。味は口あたりのいいハーブティーに似ている。
「あっちというのは、虚海《きょかい》の向こうのことだな。こっちは、こっちだ。名前なんかねぇ」
 陽子はうなずいた。
「虚海は陸を取り巻いている。虚海の先にはなにもない」
「なにも?」
「そう、なにも。行けども行けどもえんえんと虚海が続いていて、果てがない。少なくともそう言われているな。物好きな奴が果てを見てこようってんで船を出したこともあったらしいが、帰ってきた奴はいないそうだ」
「じゃ、こちらは大地が平らなんだ」
 楽俊は椅子によじ登りながらきょとんと陽子を見た。
「地面が平じゃなかったら、みんな困るじゃないか」
 あきれたような声がすこし笑えた。
「……こちらの世界はどういう形をしているんだろう」
 楽俊は、テーブルの上にあった胡桃《くるみ》を手に取って置いた。
「世界のまんなかにスウサンがある」
「スウサン?」
「崇高《すうこう》な山、と書くな。ほんとうに崇高と呼ぶこともある。中岳《ちゅうがく》とも中山《ちゅうさん》ともいう。その四方には東西南北の山がある。東岳《とうがく》、とか東山《とうざん》とかいうが、東西南北をそれぞれ蓬《ほう》山、華《か》山、霍《かく》山、恒《こう》山と呼ぶのが普通だ。東岳は昔は泰《たい》山といった。北の国、戴国《たいこく》の王が号を代《たい》から泰《たい》にあらためたので泰王をはばかって蓬山と呼ぶようになったと聞いてるな。この五つの山が五山だ」
「へぇ……」
「この五山の周囲に黄海《こうかい》がある。海といっても、水のある海じゃねえ。荒れた岩山と砂漠、沼地と樹海だって話だ」
 楽俊の指が描いていく文字を陽子は見守る。
「見たことはない?」
「あるわけがねえ。黄海の周囲をさらに東西南北の四金剛《しこんごう》山が取り巻いている。金剛山の内側は、人の住む世界でねえ」
「そう……」
 まるでなにかで見た古い地図のような地形だ、と陽子は思った。
「金剛山の周囲の四方に四つの内海があって、さらに八方を八つの国が取り巻いてる。その周囲が虚海だ。陸にうんと近いところに四つ大きな島がある。この四つの国と金剛山の周囲の八つの国で、ぜんぶで十二国」
 陽子は幾何学的に配置された胡桃を見つめた。それは花のようにも見える。五山を中心に、花びらのように配置された国々。
「それ以外はない?」
「ないな。その外は虚海だけだ。ずーっと世界の果てまでなにもない海が広がっている」
 ただ、と楽俊はつぶやいた。
「虚海の東の果てには不思議な島があるという話もある。まぁ、一種の伝説だ。それを蓬莱《ほうらい》国という。別名を日本《にっぽん》ともいうな」
 言って楽俊が書いたのは「倭《わ》」という文字だった。
「倭? 日本?」
 実際に文字を書いてみせると「倭」のほうを示す。
 陽子はすこし唇をかんだ。こんなふうにして、今まで翻訳《ほんやく》されてきたわけか。
「海客は倭から来るという話だ」
 今度はきちんと「倭」と聞こえた。陽子が言葉を知ってしまったので翻訳の必要がないということなのだろう。
「ほんとうかうそかは知らねえけど、海客の話を聞いてみると、どこからに倭という国があるのはたしからしい。倭を捜して船を出した奴もいるが、やっぱり帰ってこなかったそうだ」
 もしもほんとうに日本が虚海のかなたにあるものならば、船を東に漕《こ》ぎ出せば帰れる可能性がある。しかし、そんな手段では帰れるはずのないことを、月影を通ってやってきた陽子は知っていた。
「反対に、金剛山のどこかに崑崙《こんろん》という丘があるという言い伝えもある。そこは中国という。中国からは山客《さんきゃく》がやってくる。
 言いながら、楽俊は「漢《かん》」という文字を書く。
「山客? じゃあ、海客のほかにもこちらに混じりこんでしまう人間がいるんだ」
「いるな。海客は虚海の岸にたどりつき、山客は金剛山の麓《ふもと》にたどりつく。この国じゃ山客は多くねえが、どっちにしても追われるはめになるな」
「そうか……」
「漢も倭も、普通は人は行き来できねえ。それができるのは妖族と神仙だけだといわれてる。ただ、蝕がおこって、あっちから人が流されてくることがある。それが山客と海客」
「ふうん……」
「漢や倭じゃ、家は金銀玉でできている。国は豊かで農民でも王侯のような暮らしをするそうだ。人はみんな宙を駆けて一日に千里でも走る。赤ん坊でも妖魔を倒す不思議な力を持つそうだ。妖魔や神仙が神通力を持つのも、あちらへ行って深山の泉を飲むからだとさ」
 言って楽俊は陽子を見る。陽子は苦笑しながら首を横にふった。
 奇妙な話だ、と陽子は思う。もといた世界に帰って人に話せばおとぎ話と言われるだろう。この世界にもおとぎ話がある。
 思って陽子はかすかに笑った。
 この異常な世界、とずっとそう思ってきたが、はたして異常なのは世界だろうか、陽子だろうか。
 答えならわかっている。だから海客は追われるのだと、そんなことをようやく思った。
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