金持ほどケチで、貧乏人や田舎者ほど浪費家だという言葉があるが、いかんせん、この言葉はある意味で真実だ。
「おい。ここはおれに払わせろよ」
「いいよ、いいよ、おれが払うってば」
「なにイ、お前はおれに恥をかかす気か。ここの店はおれの縄ばりだ。おれが払うのが当り前だ」
よく飲み屋でいい年をした男が大声をあげて喧嘩をしているが、おれが払う、いや、払わさんと言うような連中はたいてい、そう金には縁のない顔をした連中である。おれの縄ばりもへったくれもない。彼は自分を金がない、ケチだと思われたくないからおごる、おごると言うだけである。これが金持だと、ワリカンでいこうと平然と言える。自分のふところに自信があるからである。
こう書くと私はいかにも浪費家を軽蔑しているように聞えるかも知れないが、じつは私は自分と同じようにオドオドしながら(つまり本当はケチなくせに)、わが自信のなさから浪費してしまうような人物が大好きなのである。