その畑では、大ムギや、小ムギや、カラスムギがたくさんつくってあります。
ソバの畑もありました。
ソバは、ツンとすまして、
「ぼくだって、ムギなんかにまけやしない。ぼくの花はリンゴの花のように白くてきれいだ。ねえ、そこのかわやなぎ(→ヤナギ科の落葉低木)さん。そうでしょう?」
「??????」
かわやなぎは、そんなことはどうだっていい、というような顔をしていました。
「なんだ、あんなバカな木。年をとりすぎて、体の中に草がはえてるんじゃないか?」
と、ソバはプンプンおこりました。
でも、ふるいかわやなぎの木のさけめに、草がはえているのはほんとうでした。
そのとき、ひどいゆうだちがやってきました。
いなびかりがして、ゴロゴロと大きなカミナリがなりました。
そして、バケツをひっくり返したように、大つぶの雨がはげしくふってきました。
畑のさくもつは、みんな頭を下げて、花びらをとじ、ゆうだちがすぎるのをまちました。
それなのに、ソバだけはいばって、そりかえっています。
「ソバさん、頭をお下げなさいな」
ほかのさくもつがいいました。
「だれに頭を下げるんだね? なんのために?」
「つよい雨に、たたきつけられます。はげしいイナヅマに目がくらみます。あのイナズマの中には、天の神さまがいらっしゃるんですよ」
「よし、ぼくは神さまを見てやろう」
ソバはいっそう、そりかえりました。
そのとき、まるで世界中が、火につつまれたかとおもうほど、はげしくイナズマが光ました。
「あっ!」
こうして、ゆうだちはとおりすぎていきました。
雨はやみ、日の光がさしてきました。
むこうの山からこちらの山へ、きれいなにじのはしがかかりました。
さくもつも花も、さっきの雨ですっかり元気になりました。
だれもが顔をあげて、きれいなにじを見ました。
「???きれい」
ゆうだちのあとはせいせいして、なんともいえないいいきもちです。
その中で、ソバだけがしおれきって、まるで元気がありません。
頭を下げることを知らないソバは、ゆうだちにうたれて、クタクタになっていました。