雨が、ちっとも降らないのです。
池も井戸(いど)も、すっかり水がなくなってカラカラです。
ある家に女の子がいましたが、お母さんが病気になって寝込んでしまい、
「ああ、水を飲みたい、水を飲みたい」
と、言うのです。
女の子はどうにかして、お母さんに水をあげたいと思って家を出て行きました。
でも、どこを探しても、ひとしずくの水さえも見つかりません。
女の子は疲れてしまって、野原の中の草の上に座ると、そのまま眠ってしまいました。
しばらくして目を覚ました女の子は、目の前にある物を見てビックリ。
すぐ前に一本の木のひしゃくが置いてあり、その中にきれいな水が光っているのです。
「あら、水だわ!」
女の子は喜んで、そのひしゃくを取りあげました。
すぐに飲もうとしましたが、
「いいえ、わたしよりもお母さんに、早く飲ませてあげましょう」
急いで、家の方へかけて行きました。
すると途中で、一匹のイヌが言いました。
「わたしはのどがかわいて、死にそうです。一口だけ飲ませてください。ワン」
女の子は可愛そうに思い、手のひらに少し水を入れるとイヌに差し出しました。
イヌは喜んで、ピチャピチャと水を飲みました。
すると不思議な事に、木のひしゃくはキラキラと光る銀のひしゃくに変わりました。
それから、急いで家へ帰った女の子は、
「さあ、お母さん、お水ですよ」
お母さんはゴクリ、ゴクリと、ひしゃくの水を飲みました。
「ああ、おいしかったわ、ありがとう」
お母さんがそう言った時、銀のひしゃくは金のひしゃくに変わりました。
そのひしゃくの底には、まだ水が少し残っています。
女の子が、今度はやっと自分が飲もうとすると、ふと、一人の知らないおじいさんがやって来ました。
「のどがかわいて、倒れそうです。一口でも水を飲ませてください」
残っている水は、わずかです。
おじいさんにあげてしまうと、自分は飲む事が出来ません。
でも女の子は、
「はいどうぞ、おあがりなさい」
と、言って、ひしゃくを渡してしまいました。
その人は、うれしそうに水を飲むと、
「ありがとうございました」
お礼を言って、出て行きました。
女の子は、あとに残ったひしゃくを見てビックリしました。
ひしゃくからはきれいな水が、こんこんとわき出ているのです。
女の子が喜んで飲んだあと、金のひしゃくには、ピカピカと光る美しい七つのダイヤモンドがついていました。
そしてそれが空へ飛んで行ったかと思うと七つのお星さまになり、ひしゃくの形の星座(せいざ)になりました。
それから、ひしゃくの水を飲んだおかげでお母さんの病気も治り、二人は幸せに暮らしたということです。