神武天皇は『古事記』『日本書紀』が創作した架空の天皇とされます。その「神武東征神話」は、おおよそ次のような内容です。
日向の高千穂にいた神武天皇が、あるとき東征を思い立ち、瀬戸内海を軍船で進み、河内の白肩津に上陸。生駒山を越えて大和に入ろうとしたが、その地の豪族・長髄彦の抵抗にあい進めなくなった。
そこで、紀伊半島を迂回し、熊野から大和に入り、長髄彦を征伐した。その戦いは不利な形勢だったが、金色のトビが神武の弓にとまり、その光のまぶしさに敵がひるんだため、劣勢を挽回できた。そして、紀元前660年、橿原宮において初代天皇として即位した。――
なぜ紀元前660年かというと、『古事記』『日本書紀』の編纂に際しては、中国の辛酉革命の思想、すなわち「1260年ごとの辛酉の年に革命が起こる」という説をとり入れ、推古天皇の辛酉の年(601年)から単純に1260年さかのぼった年を神武天皇即位の年と決めてしまったからです。このころは、日本はまだ縄文時代です。