航空券発売窓口で。
「すみません。席は禁煙席の窓側を取っていただけませんか」
「かしこまりました。お客様は、おたばこをお吸いになりますか」
わたしの独白——虚《むな》しい。
JRチケット売り場で。
「申し訳ありませんがレシートを発行してください」
無言。しばらくして
「名前は?」
「ハイタニといいます」
「どんな字?」
「灰色の灰に、谷川の谷です」
ごそごそしている。結局、書けない。
「ちょっとここに書いてみて」
紙とボールペンを突き出す。
わたしの独白——元小学校教師としてはきわめて複雑な心境。
読者から手紙。
——灰谷さんのファンです。灰谷さんの本は、まだ『ガラスのうさぎ』と、あと、ちょっとしか読んでいませんが(『ガラスのうさぎ』は高木敏子さんの著作。わたしの『兎《うさぎ》の眼《め》』と、よく間違われる)熱心な読者です。
こんど休暇がとれたので、灰谷さんの(住む)渡嘉敷島へいく計画を立てました。
あつかましいのですが、×月×日、お昼を少し過ぎると思いますが、お家の方へうかがわせてもらっていいでしょうか。おいそがしいと思いますのでお返事はけっこうです。
わたしの独白——あつかましいのはいいが、それを他人に押しつけない。
税務署と。
「この延滞料というのはなんですか」
「納めていただく税金が、三日遅れていますので、それにかかったものです」
「旅行中で、やむなく三日遅れたのです。一カ月も二カ月も遅れたのなら意図的といえるでしょうが、人の暮らしに、一日、二日の待ったなしというのは、あまりに非情じゃないですか」
「規則なもんですから……」
しばし、やりとりが続く。
「わかりました。払いましょう。そのかわりわたしは予定納税という税金の先払いをしていますから、その利息をいただきます。それで差し引きしましょう」
「そんなことはできないことになっています。困らせないでください」
わたしの独白——署員も一労働者だと思うと、この、困らせないでください、という一言は、かなり利く。
永田町で。
政府は宮平洋《みやひらひろし》沖縄県副知事からの会談申し込みを断った。その理由を、野中広務官房長官は、こういった。「橋本(龍太郎)前首相の沖縄にかける思いを思うなら、(大田昌秀)知事は真っ先に橋本さんのところにあいさつにくるべきだった。小渕内閣ができた後に副知事を派遣することは、人の道に反することだ」(一九九八年八月七日付「朝日新聞」)
わたしと、沖縄県民の素直な思い——なんたる傲慢《ごうまん》、なんたる差別。
歴史認識、事実認識のまったくできない政府要人の存在こそ人の道に反する。ただもう恥ずかしい。