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时间: 2019-03-18    进入日语论坛
核心提示:    4「西宮まで頼む」 ハイヤーが精油所の門を出ると、寺木鉄太郎は、運転手に声をかけた。 次の週の火曜日、寺木鉄太郎
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「西宮まで頼む」
 ハイヤーが精油所の門を出ると、寺木鉄太郎は、運転手に声をかけた。
 次の週の火曜日、寺木鉄太郎と小宮幸治は大阪・泉北地区の視察に来ていた。
 役所では、同じ課の課長と首席事務官の課長補佐が一緒に出張することは、よほどの大問題でもない限り、滅多にない。それなのに今回の泉北地区公害防止施設視察の出張に、寺木が特に小宮を誘ったのだから、当然ほかに用件のあることは、わかっていた。果たして寺木は、精油所幹部の夕食の誘いを断わり、急いで車で飛び出したのである。
〈近郊住宅都市の西宮に、どんな重大な用事があるのだろう〉
 と、小宮は不思議に思った。
「これから、鴻森芳次郎さんを訪ねるんだ」
 小宮の疑問を見透したように、寺木がいった。
 だが、それは誠に意外な話であった。
 鴻森芳次郎という名は、小宮も記憶している。関西の古い商社「鴻芳」の、五代目とか、六代目とかの当主である。いわゆる名門には違いないが、有名人ではない。鴻森は、財界活動も政治運動も、およそ世間の話題になるようなことは、少しもやらない。鴻芳という会社も、時々、技術導入の仲介や輸出入取引で機敏なところを見せることはあるが、どちらかといえば地味な中堅企業だ。どう考えても、本省の課長が、わざわざ自宅を訪ねる相手とは思えないのだ。
 一つだけ、小宮の印象に残っている出来事があった。一年ほど前、鴻芳の子会社の一つが、繊維膜で水中に物資を貯える技術を開発した、ということが報じられた。この時は通産省も、この技術が石油や食糧の貯蔵に利用できるかどうかを確かめるために、専門技術者に調べさせた。調査結果は�きわめて有望�ということだったが、実用化までには安全性テストと法令改正が必要なので、早くて数年はかかるとみられた。小宮は、その頃工業技術院にいてこの調査にいくらか関係したのである。
「鴻森さんは、俺と高校、大学を通じて同級でね。学生時代から凄く頭のいい奴だったよ。古美術や金貨の収集でも有名だ」
 寺木のそんな話からは今夜、わざわざ小宮を連れて訪ねる用件はわからなかった。
 西宮の山手にある鴻森邸に着いた時、小宮はまず、その邸の広さに驚いた。とにかくそこでは、門から玄関まで、ハイヤーが�走る�ほどの距離があった。
 そのうえ、二人が通された応接間では、正面の暖炉で、本物の薪が燃えていた。
「エル・グレコだね」
 暖炉の上にかかった絵を見て、寺木がいった。
 そこには、エル・グレコ特有の下半分が細まった顔の女性が描かれていた。
「少なくとも一億円はするね、これは」
 寺木の言葉に、小宮はもう一度驚いた。
 間もなく、白髪の老紳士が、和服姿の長身の青年を伴って入って来た。老人の方には、小宮も見憶えがあった。関西経営協会会長、大河原鷹司だ。関西財界の重鎮であり、電力業界の長老でもある大河原は、通産省関係のいくつかの審議会にも名を連ねている大物である。
「わざわざ遠いところまで……。寺木はんが東京から来るちゅうさかいに、大河原会長にも来てもろうてますねや。どうせあんたの話はむずかしいから、一緒に聞いてもろた方がええやろ、と思いましてな」
 和服の青年は、笑顔を見せ、のんびりした関西弁でいった。
 寺木は小宮を紹介した。
 青年は、少し腰を浮かせて、頭を下げた。
「鴻森芳次郎です。よろしゅう」
 やや間のびした端正な顔は、寺木課長と同年輩とは思えぬほどに若々しい。
「それで、今日はどないな話ですか」
 短い雑談のあと、芳次郎は本題に入ることをうながした。
「今日は石油が入って来んようになった場合の話でして……」
 寺木は黒い鞄から複写焼きの資料を取り出して、鴻森芳次郎と大河原会長、そして小宮幸治にも配った。半紙二枚に、寺木の特徴ある細い文字が、いくつかの表とグラフとともに、びっしりと並んでいた。
「ほう、また油が入って来んようになる心配がありまんのか」
 芳次郎は受け取った紙を眺めた。
「大いにあります」
 寺木の声には力がこもっていた。
「産油地帯での政治的軍事的混乱から石油輸入の大幅減少の可能性は十分にあるのです。この前の石油危機もこのケースだったんですが、あの時はアラブ産油国の外交戦略上の石油輸出制限が原因でしたから、あまりひどいことにはならなかった。削減率もせいぜい二五%くらい、期間も二ヵ月で終わったんですが、万一、産油地帯そのものが紛争に巻き込まれるということになると大事です。しかも、日本に来る石油の八割は、イランを含む中東地域からのものです」
「そうなったら、世界中が大事でっしゃろ」
 鴻森芳次郎は、茶を啜った。
「むろんそうです。だけど、その大変さ加減が国によって全然違う。いちばん困るのが日本です」
 日本は石油需要の九九・七%までを輸入に頼っている。国内で採れる原油は年間百万キロリットル、平均消費量でいうとわずか一日分余りだ。
 国産原油で十分やって行けるソ連や中国、全需要の八五%までを国産で賄えるアメリカは別格としても、資源に乏しいヨーロッパ諸国でも、EC九ヵ国平均で四、五%の自給率を持っている。
 そのうえ、全エネルギーのうちで石油に頼る割合がいちばん高いのもまた日本だ。アメリカの四〇%、ヨーロッパ諸国の五〇〜六〇%に対して、日本は七五%が石油エネルギーである。
「外国はどんどん脱石油を進めています。原子力発電所も次々と造られているし、石炭利用も伸びています。西ドイツでは石炭のガス化を実用化し、フランスでは数年前から石油火力発電所の建設を一切止めてすべて原子力に集中しているんです。アメリカでは一九七四年以来、プロジェクト・インデペンデンスという計画を建てて、国内油田の再開発と並んで、石炭・原子力の開発や地熱・太陽エネルギーの利用技術の開発を、進めているんです。日本はどうしても�独立�というわけにはいきません。半分の自給もとても不可能です。もちろん、資源の乏しいことは、日本の恥でも罪でもありません。ただ、資源の乏しい国は、それ相応の備えがいります。それを日本はやっていない、そこが問題なんです」
「というと……」
 大河原会長が、身を乗り出した。
「長期的にはいま政府が進めている『サン・シャイン計画』のような技術開発が第一でしょうが、当面は石油の備蓄でしょう。ヨーロッパ諸国は、これを必死にやっています。イギリスは、北海の海底油田開発に成功しましたが、同時に、スコットランドに大規模なCTS、つまり石油備蓄基地を建設しています。フランスとスペインは海底油槽をすでに実用化しています。西ドイツは岩塩層を利用して超大型の地下貯蔵をやっています」
 大河原はうなずいた。電力事業を通して、エネルギー問題にも関係している大河原にはよくわかる話なのだ。
「ところが、世界一石油に頼り、世界一自給率の低い日本が、世界一何もしていない。この日本の態度には諸外国からも批判が強いので、このままではいざという時に、欧米諸国の援助を受けられないおそれも十分にあります」
 寺木は言葉を切り、タバコに火をつけた。
 短い沈黙が生まれた。
「寺木はん」
 鴻森芳次郎は、両手を袖の中で組んだまま、天井を見上げていった。
「ずばりいうて、中東からの石油が停まったら、日本はどないなりますか」
「わかりません」
「………」
「それがわからんのです」
 寺木は、苦し気な表情で、繰り返した。
「これが日本のもう一つの弱点、いやひょっとしたら最大の弱点かも知れません」
 再び、沈黙が来た。
「どないしたらええんだす」
 芳次郎がぽつりといった。
「まず調査でしょう」
 寺木は熱っぽい目つきになった。
「石油の輸入が大幅に減少した時、日本はどうなるのか、そしてその時どうしたらよいのか、それを知ることが先決です」
「そういう調査は、役所でやらんのですか」
 大河原会長が、不思議そうな顔をした。
「それがなかなかむずかしいんです」
 寺木は、視線を落とした。
「予算の問題は別としても、万一その内容や結果が洩れると大変です。いや、そんな調査を役所がやってる、ということがわかっただけでも世間を動揺させるおそれがあるし、悪くすれば外交上の問題にも影響します」
「ほな、大河原はん、あんたのところでやってみたらどないだす」
 芳次郎が、大河原会長の方を顧みた。
「関西経営協会の調査能力は第一級というやおまへんか」
 大河原は天井を見上げた。
「お金が問題だ。まあ、一千万円くらいならなんとか予備費から出せるが……」
「そら足りんわ。一億はかかりまっせ。これは大っきな調査やよって」
 そういって、芳次郎はしばらく考えている風だったが、
「ようわかりました。その費用、私が出しまひょ。まあ一億円だけはな。こういうことには領収書のいらん金がかかるもんです」
 一億円という金額に、小宮は驚いた。簡単に、それだけの金を、この何の得にもなりそうもない調査に出そう、という鴻森芳次郎という男の気持も勘定も、全くわからなかったからだ。
「それはどうも」
 寺木はそれだけいった。
「じゃ仕事はうちの方で……」
 と、大河原会長がうなずいた。
 三人の男たちはなおしばらく話を続けたが、もう話題は世間話に変わっていて、二度と再び調査と一億円の話は、誰の口からも出なかった。
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