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时间: 2019-03-22    进入日语论坛
核心提示:    1 砂漠を往くベドウィン人が用いる湾曲した水入れの皮袋──アラビア湾(ペルシャ湾)は、そんな形の海である。ただ一
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 砂漠を往くベドウィン人が用いる湾曲した水入れの皮袋──アラビア湾(ペルシャ湾)は、そんな形の海である。ただ一ヵ所、幅五十キロメートルのホルムス海峡以外に、外海への出口がない点でもまた、よく似ている。
 奥行九百キロ、幅二百ないし二百五十キロのアラビア湾全体からみると、鋭く折曲したホルムスの海峡は、皮袋の小さい飲み口に当たるほどの狭さである。この海の出入口を固く締めるために、南側から長く突き出しているのが、オマーン半島だ。
 このオマーン半島から、もう一つの半島、アラビア湾の中央部に、アラビアの大陸からさし込まれた親指のように突き出たカタール半島までの間に、海と不毛の砂漠に挟まれて、七つの土侯領が並ぶ。いまは、アラブ首長国連邦という国家を構成する邦々である。
 サウジアラビアのダーランから、カタール半島を経てオマーン半島に至る、アラビア湾東部の南岸は、いまやアラビア湾奥に次ぐ、世界第二の大産油地帯となっている。
 この、アラブ首長国連邦の一都市の、真新しいホテルの最上階にある食堂で、石油開発基地建設に従事する設計士の久我京介と、タンカー承天丸の航海士緑川光が、遅い夕食をとっていた。現地時間で、十二月十一日午後八時だった。
 もう夕食には遅過ぎる時間なのに、食堂は、ほとんど満員だ。中東の戦火も、ここには及んでいない。このため、この地の石油はさらに一層脚光を浴びるようになった。それを求めていろんな人間が集まって来た。急遽派遣された石油買い付けの商社員もいたし、千載一遇のチャンスをねらう一発屋の油ブローカーもいた。武器商人の顔も見えたし、諜報員らしいのも現れた。そしてこの国に石油輸出制限措置を採らせようとする勢力とその逆の立場の勢力の双方から、外交官や政治家が多数駆けつけた。
「港も大変な混みようでね」
 緑川がぽつりといった。
 彼の椅子からは、久我の背後の広い窓を通して、北西の海が見えた。十隻ほどのタンカーが赤と黄色の灯をつけて停まっている。アラビア湾南岸には珍しい陸地に接続したこの石油積出港には、せいぜい十五万重量トン級の船しか入れないが、アラビア湾奥の港が閉ざされたために、ここに回航して来る巨船も多くなった。たとえ半量でも積み込んで帰ろうというわけである。
 承天丸は丸二日待たされ、今日ようやく八万キロリットルほど積み込んだ。それでも優遇された方だ。以前からここに通っていた実績があったし、長期契約で積むべき原油が確保されていたからだ。
 船長は、明日もう一押し、あと四、五万キロリットル積めるように交渉する、といって船をシーバースの近くに停めたまま、緑川らに一時上陸を許可したが、こんなに待船が多いのでは、そううまくいきそうには思えない。
「船屋さんも大変だなあ」
 ちょっと背後の海を見て、久我が答えた。
「うちも大騒ぎだよ。俺みたいな建築屋まで、いまは油掘りの手伝いさ。夜中の電話番なんかさせられてるよ」
 日焼けした顔に、自嘲の笑いが浮かんだ。
「今朝も午前五時に東京から電話があってね。本社の社長直々にさ、いきなり�今日から二倍に増産しろ�って怒鳴りやがる。うちの油田は昨年のはじめに生産開始したところなんだ。いままでは、石油が過剰気味だから開発は急ぐ必要はない、なんていってたのに、急に今日から二倍にしろったってどうにもならんよ。社長は銀行から天下りした男で、油田のこと、何も知らんのだ」
「それで、どう答えました」
「僕は建築設計会社の人間だから、石油開発の社長には遠慮いらんからね、いってやったよ。僕も油田のことはわかりませんがね、算術はよくわかります。東京はいま、午前十時でしょうが、ここは午前五時です、おやすみなさい、とね」
 二人は大きな口を開けて笑った。
 だが、突然、緑川の笑いが、止まった。声を失った笑顔が一瞬凍りつき、弾力を失ったゴム風船がたわみをもどすようにみにくく崩れた。その血の気の去った顔の中の目に赤い点が揺れていた。
 久我は緑川の見つめている海の方を振り返った。そしてそこに恐しいものを見た。
 同時に鈍い音が聞こえた。耳よりも腹に響く、低く重い音だった。
 二人は、同時に立ち上がっていた。
 北西に開いた窓の右寄りに見える、海岸線近くに並んだ銀色の石油タンクの一つが、大きな炎と黒煙を吹き上げていた。その黒煙の塊を貫き抜けて、橙色の点のようなものが尾を引いて流れていた。流星のようにも、西洋式の打ち上げ花火のようにも見えた。だが、それは、海面に落ちると、青白い光を発し、大きな水柱を上げた。
 続いてもう一つ、同じものが飛んで来た。こんどは、前のよりはるかに力なく、ずっと右の方に、つまり黒煙の塊の手前へ落下した。しかし、その効果は、はるかに大きかった。
 まばゆい青白い火が、銀色のタンクの上部を包み、巨大な赤黒い炎が上がった。タンクのフローティング・ルーフの平たい円板が跳ね飛び、三つに分かれて空中に舞った。
 食堂の中は騒然となった。アラビア語、英語、ドイツ語、フランス語、ギリシャ語の叫びが、一斉に起こった。グラスが割れ、椅子が倒れた。
「ロケット攻撃らしい」
 久我の背後で、緑川が独り言のようにつぶやいた。そのつぶやきが、騒然たる中で、久我には不思議なほどによく聞こえた。
 
 ロケット弾は、射程が長く、発射装置が簡単だ。五十キログラムのロケット弾と組立式の発射台は、乗用車でも馬車でも、場合によっては、人間の肩でも運搬でき、しかも一五糎カノン砲に劣らぬ破壊力を、それ以上の遠方に飛ばすことができる。このため、ロケット弾はゲリラにはきわめて有効な兵器である。五発か十発のロケット弾を、都市や大基地に射ち込んで、さっと逃亡するゲリラ戦法を抑えることは、ほとんど不可能に近い。そのことをベトナム戦争は実証した。アラブゲリラが、この兵器を大量に装備しているといううわさも以前からあった。
 そのロケット弾が、いま、姿を現したのだ。
 久我と緑川は、エレベーターを待つ余裕はなかった。二人は十階分の階段を一気に駆け降りた。
「元気でな」
 ホテルのロビーを走り抜け、回転ドアから外へ飛び出した時、緑川は叫んだ。
 久我もどなり返そうとしたが声は出なかった。
 久我は、ホテルの横手の空地に停めたジープの方に走りながら、東南の空をみた。彼が建設に参加している油田のある方向だ。その方向は暗かった。月のない空に、大きな星が、数限りなく輝いていた。
〈ウチの油田は無事らしい〉
 久我は一息つく思いがした。
 もう、新たに飛来するロケット弾はないようだ。わずか五分か七分で、攻撃は終わったのだ。だが、その短い不意打ちの威力は歴然としていた。北の方の空は、赤々と映え、空の四分の一が黒煙におおわれていた。
 何をすべきか、久我は一瞬迷った。ジープのシートの冷たさが、心を平静にした。冬の砂漠の夜はもう冷えはじめていた。
 その時、警察か軍隊関係らしい車がサイレンを鳴らして走り去った。
〈そうだ、まず東京へ知らせることだ〉
 立派な建物の国際電信電話局があるとはいえ、この地区の通信施設はまだ貧弱だ。極東向けの電話は一日置きに八時間しかつながらない。その受付時間は今日の午前中で終わっている。ここには日本大使館も領事館もない。ここはジェッダに駐在するサウジアラビア大使館の兼轄である。新聞の特派員や国際通信社の常駐通信員もいない。
 久我はジープを走らせた。国際電報ならすぐ打てるはずであった。途中、何台かの軍用車とすれ違ったが、誰何されることはなかった。
 国際電信電話局へは五分とかからなかった。白い大理石で固めた豪華なホールには一人の客もいない。久我は窓口に走り寄った。
 頼信紙をつかみ取った時、久我はあることに気づいた。いま、午後八時四十分、日本では翌日の午前一時四十分である。石油開発会社にも、彼の属する建築設計会社にも、人はいない。つまり、どこの誰に電報を打つべきか、久我は迷ったのだ。
「そうだ、あいつだ」
 久我はこの夏、バグダードからここまで、旅を共にした新聞記者の本村英人を思い出した。
 久我はA紙本社と本村の名とを、宛名の欄に、自分の氏名を発信人欄に書いた。
 その時、正面玄関から、二人の将校の入って来るのが見えた。
〈閉鎖される〉
 とっさに久我はそう思った。
「オマーン半島は燃えている」
 久我はこれだけ書くと、頼信紙を窓口に突き出し、当直員の手に五十ドル札を握らせた。
「あの兵隊を引きとめてるから、これだけは打ってくれ」
「ナアム・ナアム (よし、よし)」
 パレスチナ人らしい若い当直員は、久我の真剣な表情に同情したのか、五十ドル札の魅力に引かれたのか、そういって二度大きくうなずいた。
 久我の電報は、日本時間十二月十二日午前二時、A紙本社に着いた。朝刊最終版の締め切りギリギリの時間だった。それは翌朝の新聞に、未確認情報として、小さく載った。本村英人が、久我京介の信憑性を保証したのだ。
 このニュースは、その後十数時間、この地域の情勢を伝える唯一の情報となった。この地の国際電信電話局は封鎖され、ラジオ放送も沈黙したからである。
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