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蛇神2-5-7

时间: 2019-03-24    进入日语论坛
核心提示:    7「やっぱり、ここにいらしてたんですね」 神美奈代はかすかに笑いながら近づいてきた。 その口ぶりは、まるで日美香
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「やっぱり、ここにいらしてたんですね……」
 神美奈代はかすかに笑いながら近づいてきた。
 その口ぶりは、まるで日美香がここにいることを知っていたようだった。
「どうして……?」
 自分がここにいることを知っているのかという意味でそう聞くと、美奈代は、義姉《あね》から聞いたのだと答えた。
「あね?」
「太田はわたしの実家なんです。今の村長は兄にあたるんですよ。さきほど、ちょっと用があって実家に寄ったら、義姉があなたのことを……」
 美奈代はそう説明した。
「義姉はあなたが蛇ノ口に行ったのではないかと心配していたものですから、見に来たんです。時々、観光客が立ち入り禁止の標識を無視して入り込むことがあるものですから……」
 前にも、数人の若い観光客が好奇心でここにやってきて、中の一人が沼に近づきすぎて、はまりそうになったことがあったのだと美奈代は言った。
 仲間たちに引っ張り出されて、辛うじて助かったのだという。
「その人は下半身泥だらけで旅館に戻ってきたそうです。一人だったら、そのまま飲み込まれていたかもしれませんね……」
 美奈代はそう言って、何がおかしいのか、くっくと声を殺して笑った。
 日美香はこの陰気な中年女になんとなく薄気味悪いものを感じた。
 年の頃は四十そこそこだと思うのだが、中年というより老婆のような印象があった。両頬《りようほお》はげっそりと肉が落ち、肌《はだ》にも生気のようなものが全く見られない。目にも光りがなく、ひどく疲れ果てているような様子だった。
 まだ青年のように見える宮司の夫とは対照的だった。
「昔、ここで、祭りの最後の夜に、一夜日女が殺されたそうです……」
 美奈代は暗い目で沼を見つめながら、ぽつんと言った。
「真夜中、神官たちによって、生きたまま沼に投げこまれたんですよ。そのときの一夜様の悲鳴が、近くの人家にまで聞こえてきたそうです……。今でも、このあたりの人は、大祭の夜になると、早々と雨戸を閉めて、眠るときは耳に綿でしっかりと栓をして寝るのだといわれています。そうしないと、どこからか一夜様の悲鳴が聞こえてくるようで、眠れなくなるからだと……。
 底無しといわれていますが、底はあるみたいなんです。ただ、ひどく深いので、底はないようなものだと言われているんです。もし、この沼の底を浚《さら》ったら……すごいでしょうね。百体以上もの人骨が見つかるでしょう。この沼に沈められた一夜様の骨が……」
 美奈代はそう言って、日美香の方を見て笑いかけた。日美香は、美奈代の話よりも、その笑顔にぞっとした。
「でも、底を浚うなんてことは実際には不可能でしょうけれど……」
 美奈代はそうつぶやくと、ふいに、日美香の顔を見ずに言った。
「何の用だったんですか」
「え?」
「兄にです。兄に用があって訪ねたんでしょう?」
「それは……三人衆のことで話を聞きたかったんです。昭和五十二年の三人衆の一人が太田さんだと聞いたものですから」
「船木さんや海部さんのお宅も訪ねたそうですね……」
 美奈代は薄笑いを浮かべて言った。
「どうしてそれを……」
 日美香は驚いて聞き返した。
「海部さんから電話があったと義姉が言ってました。あなたがあの年の三人衆の中に父親がいると思っているらしくて、船木さんや海部さんの血液型を聞いていったと……」
「…………」
「兄の血液型も知りたいですか」
 美奈代の目にはどこか勝ち誇ったような色があった。神家にいるときの、夫の目に脅え、使用人のようにかしこまっていた彼女とは別人のようだった。
 日美香は黙って頷《うなず》いた。
「兄は……A型です」
 A型……。
 ということは、やはり、わたしの父親は太田久信だったのか。いや、少なくとも、太田久信が父親だという可能性はある……。
 日美香がそう思いかけたとき、美奈代が、日美香の心の中を読んだように言った。
「でも、兄ではないですよ」
「え……?」
「兄があなたの父親ではありえないと言ったんです」
「……なぜ?」
「兄夫婦には結婚して十七年になるのに子供がいません。長野市の病院で調べてもらったら、原因は兄の方にあることが分かったそうです。無精子症とかいって、いわゆる子種がないんです。どうやら、子供の頃にかかった病気が元でそうなったらしいんですが……」
「でも、さきほどお会いしたとき、奥さんは赤ちゃんを……」
 日美香はすぐにそう言った。村長宅を訪ねたとき、村長の妻はまだ一歳にもならないような乳飲み子を抱いていたのだ。
「あれは兄の子じゃありません。同居している従弟の子供です。稔さんの奥さんも役場で働いているので、昼間は義姉が面倒を見ているんです」
「稔さんて、まさか……矢部稔……?」
 日美香ははっとした。
 確か、達川の話では、倉橋一家を襲った犯人の矢部稔は、日の本村の村長の親戚筋《しんせきすじ》にあたり、今は村長宅に同居しているらしいということだった。
「そうです。あの矢部稔です」
 美奈代は薄笑いを浮かべたまま、「あの」という言葉に力を入れて言った。
「二十年前にあの人が起こした事件のことは村中の人が知っています。だけど、誰もあんな事件のことなんか気にしてません。それどころか、ここでは、稔さんは村の功労者と思われているくらいです。あの人が刑期を終えてこの村に帰ってきたときなど、村をあげての歓迎会が催されましたし、今では村会議員をつとめ、いわば副村長のような立場にいますよ。兄の片腕のような存在になっています」
「功労者……」
 日美香はあぜんとした。
 幼児を含めた三人もの人間を惨殺した男が、いくら罪を償ったからとはいえ、その故郷では功労者として迎えられ、村議までつとめているとは……。
「もちろん人殺しはけっしてほめられたことじゃありませんが、あの人のおかげで、一度は中止になりかけた大神祭をやることができたんです。だって、あの事件のせいで、日女《ひるめ》の血を引く日登美様と春菜様がこの村に戻ってきてくれたんですからね。だから、村の人たちにとっては、あの人は前科者ではなくて功労者なんですよ。それに、そもそも、この村の人たちは、稔さんのしたことを殺人という風には思っていません。あれは当然の制裁だったと思っているんです。この村に生まれ育った男なら、掟《おきて》を破った者に対して当然なすべき制裁だったと……」
「制裁……」
「そうです。制裁なんです。日女様を妻にすることなど、人間の男がしてはならないことだからです。それがほんの一時許されるのは、大神からお許しを得た三人衆だけと昔から厳しく定められているんです。だから、その掟を破った者は、たとえ外の世界の人だったとしても、村の男たちによって制裁を受けなければならないのです。死に至る制裁を……」
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