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蛇神4-8-2

时间: 2019-03-26    进入日语论坛
核心提示:    2「起きてらしたんですか」 聖二がそう声をかけると、姉の耀子は、寝間着の胸元を痩《や》せ細った手でかき寄せ、少し
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「起きてらしたんですか」
 聖二がそう声をかけると、姉の耀子は、寝間着の胸元を痩《や》せ細った手でかき寄せ、少しはにかんだように笑った。
「ええ。うつらうつらしてたんですけど、外の騒ぎで目が覚めてしまって……」
 そう言っている間にも、庭の方からはどっと笑い声が起こった。
 見ると、相撲の方は一段落して、武が土俵の中央で、怪しげな腰つきでダンスのようなものを踊っており、それを見ていたギャラリーが沸いたという風だった。
「確かにちょっとうるさいですね。そうではないかと心配して来てみたんですが……。今、やめさせますから」
 聖二はそう言ったかと思うと、踵《きびす》を返して部屋を出て行こうとした。
「あ、待って。いいんです。うるさいわけじゃありませんから」
 耀子は慌てて言った。
「むしろ、気分がいいんです。あの子たちの楽しそうな笑い声を聞いているのは。だから、やめさせないで」
「そうですか? 姉さんがそうおっしゃるなら……」
 聖二は思い止《とど》まったように、また引き返してきた。
「あの子……あんなに明るい子だったんですね」
 耀子は庭の方を見やりながら言った。
「武ですか」
 聖二もつられたように中庭の方に視線をうつした。
「ええ。前に会ったときはもっとおとなしい子かと思っていたんですけど……。あんなに明るくて剽軽《ひようきん》な子だったとは。あの子が来てから、この家全体が明るくなったみたいだわ。美奈代さんがあんな風に笑うの、わたし、久しぶりに見たような気がします」
 耀子にそう言われて、聖二は、武を取り巻いているギャラリーの中にいる妻の方を少々苦い表情で見た。
 姉の言うとおりだった。武が来て、妻は微妙に変わった。少し若返ったようにも見える……。
 この二十年の間に、自分が少しずつ妻から奪っていったものを、たった一週間で、武は妻に取り戻してやったというのだろうか。
 そう思うと、何やら苦いものがこみあげてくる。
「この家の人間も変わったかもしれませんが、武自身も大きく変わりましたよ。新庄家にいるときはあんな風ではなかった……」
 土俵の中央で相変わらず怪しげなダンスを続けている甥《おい》の方をじっと見ながら、聖二は言った。
「そうなの? わたしは新庄の家には行ったことがないから……」
「あんなに明るくはなかったですよ、あの家にいたときは。もっと屈折している感じでした。あんな風に笑うことも滅多になかっ———」
 そう言いかけて聖二は、一瞬目を剥《む》いた。
「あいつ、さっきから、何をやっているんだ」
 腰をくねらせながら妙なダンスをしていた武が、何を思ったか、いきなり、Tシャツをゆっくり脱ぎ出したのである。
 ギャラリーからは喝采《かつさい》と拍手が起こった。
 少女たちの中には、「きゃー」と嬌声《きようせい》をあげて両手で目を覆う子もいる。
「あの馬鹿……また、あんな真似を」
 聖二は舌打ちした。
「な、何やってるんですか、あの子は」
 耀子も思わず年甲斐《としがい》もなく頬《ほお》を赤らめながら聞いた。
 まるで武の動きは、ストリップでもしているように見えた。妙な腰つきといい、身体のくねらせ方といい、まさにストリップダンサーのそれだった。
「アメノウズメノミコトの真似やってるんですよ。昨日、村長たちが集まった宴席で、あいつ、酔っ払って、あれを突然やりだして……。途中で止めさせるのに苦労しました」
 聖二は思い出し笑いをしながら言った。
「アメノウズメノミコトの真似って……?」
 武はTシャツを脱ぎ捨て、上半身裸になってしまうと、今度はジーンズのベルトに手をかけ、踊りながら、それをはずそうとしていた。
「大日女様のところでも危うくストリップしかけたんです。大日女様にお印を見せろといわれて……」
 聖二はそのときの話を耀子にした。
「それで、うちへ帰ってきてから、そのことを皮肉って、おまえはアメノウズメノミコトかって言ったら、彼は知らなかったらしくて、アメノウズメノミコトって何だって聞くから教えてやったんです。この女神が岩戸に籠《こ》もった天照大神を外に出すために、岩戸の前でストリップめいた踊りを踊って、太陽神の気を引いた逸話を。その故事が、大神祭の『御霊降《みたまふ》りの神事』の原型になっていることを。そのときは、神妙な顔つきで聞いていたんですが、一体何を学習したのやら、昨夜になって、宴会の席で、酔っ払ったあげくに、いきなり『アメノウズメノミコトのマイケル・ジャクソン風やります』と言い出して、着ているものを脱ぎながら踊りだしたときにはこちらの肝がつぶれましたよ。男のストリップなど見たこともないご住職など腰抜かしそうになっていました」
「まあ」
 耀子の顔に笑みがこぼれた。
「そういえば、昨夜、座敷の方が凄《すご》く騒がしかったのはそのせいだったんですね」
「まさか、まっ昼間から、またあれをやろうというんじゃないだろうな。ちょっと目を離すと、何をしでかすやら……」
 聖二はそう呟《つぶや》いて、はらはらした表情で甥の方を見ていたが、武は、ジーンズのベルトをはずして空に放りあげ、ジーンズのジッパーを半分ほど下にさげかけたところで、「おしまい」というように踊りをやめた。
 ギャラリーからは、失望半分|安堵《あんど》半分というような軽いどよめきが起こった。
 そのあとは、向かいの部屋の縁側に座って、背中の蛇紋に興味を示す子供たちに、得意げにそれを見せびらかしていた。
「本当に貴明さんに似てきましたね」
 耀子は庭の光景をなおも見つめながら言った。
「顔だけでなく、負けず嫌いでプライドの高いところなど、性格も兄そっくりです」
「でも、貴明さんとはどこかが大きく違うような気もしますが……」
 耀子はふとそんなことを言った。
 聖二は思わず姉の顔を見た。
 それは、聖二も最近になって感じていたことだった。たまに新庄家を訪れたときは、兄と武の似たところばかりが目についたが、ここでは、なぜか、この二人の異なる点が目につくようになった。
 似て非なるもの……。
 この父子《おやこ》に関しては、最近ではそう思うようになっていた。
「どこがどうとは、うまく言えないんですけれど、二人を太陽にたとえると、貴明さんの方は容赦なく照りつける真夏の強い日差しみたいなところがあるのにたいして、武は、どこかほのぼのとした秋の木漏れ日のようなところがあります。貴明さんなら無視してしまうような片隅に咲く小さな花も見落とさずに光を注いでくれるような、そんな優しさがあの子の中にはあるような……」
 耀子は、考え考え、そう言った。
 優しさ……?
 姉の言わんとすることが聖二にもなんとなく分かるような気がした。
 確かに、武にはそういうところが小さい頃からあった。
 たとえば、部屋の中に虫が迷い込んできたとすると、兄なら、みつけざますぐに叩《たた》きつぶしてしまうだろうが、武なら、殺さずに、その虫をつかまえ、そっと外に逃がしてやるだろう。
 激しい気性の中にもそんな弱いものに対する思い遣りのようなものがある。
 実際、義姉《あね》から聞いた話では、中学に入る頃から、よく同級生や部活の先輩などと喧嘩《けんか》騒ぎを起こすようになったらしいが、いずれも自分と同等か目上の者に刃向かう場合がほとんどで、弱い者いじめ的な喧嘩は一度もなかったということだった。
 ただ、姉が「優しさ」と感じたことは、自分には、「ひ弱さ」あるいは「甘さ」と感じていたのだが……。
 そして、それは矯正すべき武の弱点だと思っていた。しかし、ひょっとしたら、姉の見方の方が正しいのかもしれない。
 自分が「ひ弱さ」と感じたあの性格は、武の美点とも言える部分なのか……。
 この姉とは、昔から何かと意見が異なり、対立することも多かった。二十年前のことにしてもそうだ。日登美のことで、姉とは意見が真っ向から対立した。
 ただ、姉のことは一目おいていた。一見おとなしやかだが、その眼力の鋭さには侮れないものがある。何かと意見が対立したというのも、実は、この姉に一目おく気持ちがあったからで、もし、精神的に見下しているような相手だったら、最初から対立しないようにうまく言いくるめていただろう。
「実は……」
 聖二は言った。
「今度の大神祭で、武に大神の御霊をおろそうと思っています」
「あの子を三人衆にするということですか」
 耀子はさほど驚いた様子もなく聞き返した。
「そうです。彼はこの村で生まれ育ったわけではないので、その点がネックだったんですが、先日、大日女様とも話しあって、それは大した問題ではないということになりました。お印が出たということこそ最優先されるということで。それで、このことは、昨夜の宴席で、村長やご住職にも伝えておきました」
「そうですか。あなたが大神祭が近づいたこの時期に、あえて、あの子をここに連れてきたことからして、もしかしたらそのつもりではと思っていました。療養とか受験勉強とかは口実にすぎないだろうと……」
 耀子は静かにそう言った。
 やはり、姉には見抜かれていたか。
「それと……もう一つ、ご報告することがあります。今度の大神祭では、三人衆は武一人にさせます」
「他の二人は選ばないということですか」
 耀子もここまでは予想していなかったようで、少し驚いたように言った。
「ええ。彼一人に大神の御霊をおろします。日女の子ではない男児に、しかもこんな前例の全くない形でお印が出たことで、私も大日女様も、この件をどう扱ったらよいのか思案にくれたのですが、これは、武一人を依《よ》り代《しろ》にせよという、大神のメッセージと受け取ることにしました」
「そう……」
「とにかく、今年の大神祭は異例のものになるでしょう。もしかしたら、今年の祭りこそが本物かもしれません」
「本物?」
「そうです。大神の御霊が本当に武におりるかもしれないということです。今までの祭りは、社を守る日女や神官の血統を絶やさないためのかりそめのものにすぎませんでした。でも、今度の祭りで、大神は武の中に本当に復活するような気がします。そして……」
 聖二はそう言いかけ、思い止まったように口をつぐむと、
「姉さんはどう思われます? 武に大神の御霊をおろすことについて、私のやり方が間違っていると思われますか」
 と耀子に向かって訊《たず》ねた。
「……いいえ」
 耀子はしばらく沈黙したあと、はっきりとかぶりを振った。
「間違っているとは思いません。反対ではありませんよ。たとえ、わたしごときが反対したところで、いつぞやのように、あなたは大神のご意志の名の下に、ご自分の意志を通してしまわれるでしょうが……」
「……」
「でも、今回の決定はわたしも賛成です」
 耀子は晴れやかに微笑《ほほえ》んだ。
「もし、大神が誰かの肉体を借りて、再び、この世にたち現れるのだとしたら」
 耀子は庭の方を見ながら呟くように言った。
「その依り代となる人は、貴明さんのような人ではなく、あの子のような人であってほしいとわたしは願っていましたから……」
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