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蛇神5-1-2

时间: 2019-03-27    进入日语论坛
核心提示:     2 鬱蒼《うつそう》とした松並木の長い参道を抜けると、左手に水舎、目前には、再び銅の鳥居が見えてきた。 その鳥
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 鬱蒼《うつそう》とした松並木の長い参道を抜けると、左手に水舎、目前には、再び銅の鳥居が見えてきた。
 その鳥居の向こうには、太いしめ縄を張った檜《ひのき》造りの拝殿がそびえている。
 参拝を終えて拝殿を眺めながら、宝生は子供の頃のことを思い出していた。
 あれは、四、五歳の頃だったか。もっと小さかったかもしれない。拝殿に張り巡らされた太いしめ縄をはじめて見たとき、まるで大蛇が巻き付いているようだと感じたことがある。傍らにいた祖母にそれを言うと、祖母のキエは、少し声をひそめるようにして、「ここに祭られている神様は、蛇の神様なんだよ」と教えてくれた。
 後になって、近所の遊び友達にそのことを言うと、年かさの子供から、嘘をつくなと怒られた。あそこに祭られているのは、「大国主命《おおくにぬしのみこと》」という人間の神様で、蛇の神様なんかじゃない、というのである。
 確かに、出雲神話を幼児向けの絵本仕立てにした本を読んでみても、出雲の神様は、困っているウサギを助けた気の優しい人間の神様であると書かれており、蛇などとはどこにも書いてなかった。
 嘘を教えられたのかと悔しくて、夜、そのことを祖母に問いただすと、キエは微《かす》かに笑いながら、「でも、本当は、蛇の神様なんだよ。その証拠に、あそこの御神体は、とぐろを巻いたウミヘビだよ……」と教えてくれた。そして、そのとき、祖母はこんなことを言った。
 そもそも、藤本家というのは、出雲大社と並ぶ古社でもある佐太神社の祝《ほうり》と呼ばれる下級神官の家柄で、この祝の家では、代々、出雲大社や佐太神社に納める御神体のウミヘビの剥製《はくせい》を作る仕事をしていたのだという。
 しかも、この神聖なウミヘビの剥製を作るのは女性の仕事で、祝の家では、母から娘へと世襲で引き継がれたというのである。
 祖母が問わずがたりに話してくれた話によれば、古くから、出雲では、海岸にあがったセグロウミヘビを「竜蛇《みい》さん」と呼び、竜宮城の使いとして崇《あが》める習慣があったらしい。
 というのも、出雲地方では、古来、陰暦十月になると、季節風の走りがあり、西風や北西風が吹きまくって気候が急変する。これを俗に「お忌み荒れ」という。
 その頃、沖合から寒冷水が張り出し、セグロウミヘビが海岸に上がってくる。大昔、船がなかった時代、漁師たちがセグロに接するのは、そのような年に一度の機会だった。
 セグロウミヘビは、その名の通り、背が黒く、腹が黄色い。これは、天地玄黄《てんちげんこう》の相を表し、二色《にしき》蛇とも言われる。
 年に一度しかお目にかかれないという希少性と、その派手で神秘的な外見ゆえに、「竜蛇」と呼ばれて、人々に崇められ、神社の御神体になっていったのである。
 昔は、一年に一尾しか使わず、「竜蛇」を捕らえた漁師は、それを出雲大社か佐太神社に持っていくと、米一俵を貰《もら》えたという。
 出雲大社では、旧暦十月の神在月《かみありづき》の祭りには、三重にとぐろを巻かせたセグロウミヘビの剥製を白木の三方《さんぽう》に載せて、行列の先頭に出して公開する。
「竜蛇」は水難火難よけとしても信仰され、出雲地方の旧家では、出雲大社、佐太神社、日御碕《ひのみさき》神社から、「竜蛇」を請けまつり、家の土蔵の神として祭ったともいう。
 藤本家の土蔵にも、祖母が自ら皮をはぎ、内臓を抜いて作ったという、とぐろを巻くウミヘビの剥製が、「家の守り神」として恭しく祭られていた。
 ウミヘビだけでなく、出雲では、毎年農村では、収穫が終わった晩秋から初冬にかけて、藁《わら》で大蛇を形作り、これを松や榎《えのき》などの大木に巻いて、豊作を祝う「荒神《こうじん》まつり」が行われた。
「……だから、蛇をむやみに恐れたり嫌ったりしてはいけないよ。蛇は家や国を守ってくれる大事な守り神なんだからね」
 祖母は諭すようにそう言った。
 そして、さらにこうも続けた。
 そもそも、おまえの「輝比古」という名前も「蛇」に由来しているのだと。「かがひこ」の「かが」とは、本来、「蛇」を表す古語だというのである。つまり、「かがひこ」とは、「へびひこ」の意味であると……。
「そんな名前を付けたのは、おまえが生まれたとき、家の庭に一匹の白蛇が姿を現したからなんだよ。白蛇は幸運をもたらし縁起が良いといわれている。蛇はおまえの守り神でもあるんだよ……」
「てるひこ」と読まれがちなこの奇妙な名前にそんな由来があったとは、そのときまで知るよしもなかったから、縫い物をしながら、幼い子供にも理解できるように、噛《か》んで含めるように話をしてくれた祖母の顔をただただ見つめて聞き入っていた。
 思えば、もの心ついた頃から、蛇という生き物にたいして、多くの人々が感じるような恐怖や嫌悪の感情を全く抱いたことがなかった。
 それどころか、毛足の長い生き物に触れるときよりも、蛇や爬虫《はちゆう》類のあのひんやりとした冷たい膚《はだ》に触れている時の方が、なぜか心が落ち着くような気がするのも、出雲地方に古くから根付いていたというこの蛇信仰の話を祖母の口から折りに触れて聞いて育ったせいかもしれない。
 今はたった一人で住んでいる東京の自宅には、どの部屋にも、蛇やトカゲを入れた水槽が所せましとおかれて、まさに水族館のようになっている。
 たまに友人や仕事関係者を招くと、誰も二度とは訪ねてこないほど気味悪がられるこの家も、宝生にとっては、どこよりも心くつろげる空間だった。
 思い返せば、祖父母の元から引き離されて、宝生家で暮らすようになったとき、生まれてはじめて飼ったペットが、犬猫の類《たぐ》いではなく、一匹の小さな蛇だった……。
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