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蛇神5-6-2

时间: 2019-03-27    进入日语论坛
核心提示:     2 その夜。 神聖二は自分の部屋で一人で酒を呑《の》んでいた。 零時を過ぎたというのに、一向にやまない座敷のど
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 その夜。
 神聖二は自分の部屋で一人で酒を呑《の》んでいた。
 零時を過ぎたというのに、一向にやまない座敷のどんちゃん騒ぎぶりが、中庭を筒抜けて、窓を閉めていても、ここまで聞こえてくる。
「一気、一気」という大歓声と手拍子から察するところ、座敷では、帰郷した弟や甥《おい》たちがまだ居残っていて、学生がコンパでよくやるような「一気飲み」に興じているのだろう。
 例年のことだが、初日からあの騒ぎでは、いくらこの日のために用意しておいたとはいえ、酒樽《さかだる》が幾つあっても足りないな……。聖二は苦笑まじりにそう思った。
 とはいっても、祭りの間は、いわゆる無礼講で、酒の上でのどんな馬鹿騒ぎも喧嘩沙汰《けんかざた》も一切見て見ぬふりをせざるをえない。
 さきほども、ガラスが割れるような派手な音がして、若い男同士で怒鳴りあっている声が聞こえてきた。ふだんなら何事かと様子を見に行くのだが、今宵ばかりは、腰もあげず聞き流していた。
 誰かがすぐに仲裁にでも入ったのか、それ以上は聞こえてこなかったが、今度は「一気、一気」の大コーラスだ。
 乱痴気騒ぎは明け方まで続きそうだ。
 聖二自身も若いころは、帰郷してきた兄弟たちと夜が明けるまで大騒ぎをして過ごしたこともあったのだが、さすがにこの年になると、とても若者の馬鹿騒ぎにはついていけない。
 それに、家長の自分がいつまでも座敷に居座っていては、いくら無礼講とはいえ、弟たちも羽目がはずしにくかろうと思って、早々と宴会の席を立ってきたのである。
 しかも、今夜はなぜか気が沈んで、ぱっと派手に騒ぐ気になれない。一人で静かに呑《の》みたいような心境だった。
 そんなことを思いながら、冷えたコップ酒を口に運んでいると、廊下の方からパタパタと軽やかな足音がして、コンコンとやや遠慮がちに戸が叩《たた》かれた。
 女のようだった。
 美奈代かなと思いつつ、「誰だ?」と言うと、「耀子です……」という意外な返事がかえってきた。
 姉さん?
 聖二は少し驚いて、片|膝《ひざ》をたて、やや自堕落な格好で寄りかかっていた座椅子の背から身を起こした。
 何の用だ。
 姉がこの部屋を訪れるなんて。
 用があるときは、聖二の方が姉の部屋に足を運ぶのが通例になっていた。
 耀子がこの部屋に来ることなど滅多にない。
「どうぞ」
 いぶかしがりながらも、そう言うと、襖《ふすま》が開いて、耀子が入ってきた。
 両手に盆を持ち、酒のつまみの皿のようなものを載せていた。
「ああやっぱり……何も召し上がらないでお酒だけ呑んでいらっしゃる。美奈代さんの言う通りだったわ」
 耀子はそう言って、弟の悪戯《いたずら》を見つけた姉のような顔つきで入ってきた。
 聖二の傍らには、美奈代に持ってこさせた一升瓶があり、卓の上には、中身が半分ほど入ったコップしかなかった。
「いけませんよ。冷や酒をそんな風に呷《あお》るように呑んでは。いくらあなたがお酒に強くても、身体に毒だといつも申し上げているではありませんか」
 姉はたしなめるようにそう言うと、盆を置き、座卓の上に持ってきたつまみの皿と箸を並べた。それは、美奈代が作ったのであろうと思われる簡単な手料理だった。
「一人で静かに呑みたいときはこの方がいいんです。やれつまみだの、癇《かん》をつけるだの、人の出入りが頻繁にあると煩わしくて……」
 弁解するように言うと、
「祭りの夜だというのに一人で呑みたい心境なのですか」
 耀子は笑いを含んだ顔でそんなことを言った。いつもは青白い顔がほんのり桜色に染まっているところを見ると、今まで座敷にいたのだろうか。
「それなら、わたしがここに居座ってお相伴すると言ったらお邪魔かしら」
「……」
「お邪魔でも付き合ってもらいますよ。あなたが一人で呑みたい心境なら、こちらは、誰かとしみじみと昔話でもしながら呑み明かしたい心境なのだから。年寄りは年寄り同士で」
 耀子はやんわりと、しかし有無をいわさぬ口調でそういうと、盆に載せてきた自分用のコップを両手で捧《ささ》げ持って、「注げ」というように、弟の前に差し出した。
「年寄りはひどいな。まだそんな年じゃないですよ」
 思わず抗議すると、姉は笑って、
「あら、そうかしら。わたしはこの年で、既にひ孫までいますし、あなただって、戸籍の上では、孫までいる身ではありませんか。世間的に見たら、二人とも立派なお年寄りですよ」
「……」
「さあ、ついで」
「一体、どういう風の吹き回しですか……?」
 聖二は、あぜんとした面持ちで姉を見ていたが、仕方ないなというように、一升瓶をとりあげると、差し出されたコップの上にそれを傾け、三分の一ほど中身を注いだ。
「もっと」
 耀子は不満そうに言った。
「え?」
「もっと注ぎなさい」
「……」
 半分ほどつぎ足すと、「もっと」と言う。
「もっと?」
「こぼれるほどなみなみとついでくださいな。そんな因業な飲み屋の店主みたいにケチらずに」
「……。こんなについで呑めるんですか」
「呑めます。わたしだって、蛇神の末裔《まつえい》の神家の人間ですからね。文字通りのうわばみです。お酒の強さではあなたに負けません」
 耀子はそう言って澄ましている。
 所望どおり、こぼれそうになるほどつぎたすと、驚いたことに、姉はそれを白い喉《のど》を鳴らして一息で呑みほした。
「だ、大丈夫ですか、そんな呑み方をして」
 慌てて言うと、姉は、水でも飲んだあとのようにけろりとした顔で、空のコップを卓に置き、
「これを学生たちの間では一気呑みとかいうんですってね。智成が言ってました」
 晴れやかに笑いながら言い放った。
 末弟の智成も、戸籍上は弟ということになっているが、耀子の実子である。もう一人翔太郎というのがいて、ふだんは学業や仕事で東京で暮らしている息子たちが一斉に帰省してきていた。
 いつになく姉の羽目をはずした陽気なふるまいも、祭りの夜だからというだけでなく、いつもは離れて暮らしている息子たちに会えた喜びから来ているのかもしれない。
「人に冷や酒呷るなって説教したあとで、ご自分がそんな乱暴な呑み方をして。そっちの方がよっぽど危険ですよ」
「祭りの夜くらいいいでしょう、多少羽目をはずしても。聖二さん。あなた、少し陰気すぎます」
「……座敷の方がまだ賑《にぎ》やかなようだが、武はどうしてます? まさか、また酔っ払って裸踊りなんかしてるんじゃないだろうな」
「武さんなら、もうとっくにお部屋に引き取られましたよ。あなたが座敷を出られたすぐ後に。慣れない大役をされたせいか、少しお疲れのご様子に見えました。今夜はあまり騒がず、料理にもさほど箸《はし》をおつけにならなかったみたいだし……」
「熱は下がったとはいえ、まだ身体の方が本調子ではないのかな。明日もあることだから、どんちゃん騒ぎをして夜を明かされるより、早く休んでくれた方がこちらとしては有り難いですがね」
「日美香さんもお部屋に引き取られて、今は、郁馬を中心に帰郷組が大騒ぎしてますよ」
「郁馬が……?」
「ええ。今夜は妙に機嫌が良いようです。武さんが来る前のあの子に戻ったみたいにはしゃいでいました。きっと、翔太郎や智成に会えて、日ごろの憂さが晴れたのかもしれません」
 そう言ったあとで、
「でも……貴明さんは今年はお帰りにならないようですね」
 と姉は少し憂い顔になった。
「選挙活動で、それどころじゃないんでしょう」
「選挙が間近に迫っているからこそ、大神の御力を借りに来られると思っていましたのに。二十年前のときのように……」
 二十年前。
 聖二はふと昔を思った。
 二十年前のあの大祭の年。それまで舅《しゆうと》の秘書をしていた兄がはじめて政界に打って出た年……。
 あれから二十年が過ぎたのか。
 その兄は、今や、大臣の座を得て、今月半ばに行われる総選挙で与党が勝利し現政権維持となれば、史上最年少の総理大臣誕生かとも噂されている……。
 時がたつのは早いものだ。
「今の兄さんにもはや神仏の御加護は必要ないでしょう。兄さんが今度の選挙で落選するなんてことは、天と地がひっくりかえる以上にあり得ませんからね。それに、今年は武がいるから、武を自分の名代くらいに思っているんじゃないですか」
 聖二がそういうと、
「だったらいいのですけれど……」
 耀子は少し不安を残した顔でそう呟《つぶや》いた。
「何かご心配なことでも?」
 なんとなく姉の様子に気になるものを感じて問い返すと、
「いえ、ちょっとね。智成が妙なことを言っていましたものですから」
「妙なこと?」
「貴明さんの様子が最近おかしい。どこか元気がないというか、一緒にいても、以前のような強いオーラがあまり感じられなくなった……と。ほら、あの子は新庄家にはよく出入りしているようだから」
「……」
 そういえば、似たようなことを武が言っていたなと聖二は思い出した。あれは、貴明の長男である信貴が弟の様子を見にこの村に来たときのことだった。
 信貴が父についてそんなことを漏らしていたと後で武が……。
「智成に会ったとき、たまたまひどく疲れていたんじゃないですか、兄さんも。身も心も疲れていれば、そりゃ、オーラとやらも弱まるでしょう」
 不安をふきとばすように言うと、
「それもそうですね」
 耀子も愁眉《しゆうび》を開いて、前の明るい顔付きに戻り、
「そうだわ。智成といえば、あの子のもってきたビッグニュースって、何でしたの?」
 と聞いた。
「ビッグニュース?」
 聖二は何のことだという顔で、口元まで運びかけたコップ酒を途中で止めた。
「昨夜、智成がわたしの所に帰省の挨拶《あいさつ》に来たときに、そんなことを言ってましたよ。あっと驚くようなニュースを土産にもってきたと。てっきり、もうあなたのお耳に入っているものだと……」
「はて。何のことだろう。私は何も聞いていませんが」
 聖二はけげんそうに言った。
「あら、そうなんですか。郁馬には話したようですから、そのうち、郁馬の方からお耳に入るのでは? きっと、祭りの準備に追われて、あなたに報告するのを忘れているのかもしれません。それとも、智成は少し大袈裟《おおげさ》なところがありますから、ビッグニュースとか言いながら、あなたのお耳に入れるほどのことではなかったのかしら」
「……」
 なんとなく話が途切れた。
 聖二は黙って酒瓶を取り上げ、姉の空になったコップにつぎたした。姉もそれを飲む。今度は一気ではなく、ちょっと口をつけるという穏やかな飲み方だった。
 相変わらず、座敷の喧噪《けんそう》が聞こえてくる。
「そういえば」
 しばらく沈黙したあと、耀子は話題を変えるように言った。
「日美香さんから転生の話を聞きました?」
「聞きました」
「どう思われます? わたしはあの方は緋佐子様の転生者ではないかと思うのですが……?」
「私もそう思います。間違いないでしょう。母に作ってもらった襤褸《ぼろ》人形を見せたら、ほんの一時でしたが、母であったときの記憶を取り戻してくれました」
「まあ、そうだったんですか」
 耀子の顔が一瞬ぱっと輝いたかと思うと、
「こんな形で緋佐子様はここに戻ってきてくれたのですね」
 としみじみとした口調で言った。
「ええ……」
「聖二さん。あなた、もしかしたら、最初から、あの方が緋佐子様ではないかと気づいていらしたのではないですか」
 突然そんなことを言った。
「……もしやとは思っていました。女児には出たことのないお印があると知ったときから。でも、お印がそのまま転生者の証《あか》しとは限らないし、日美香の方も、ここでの記憶はあまり持っていないように見えたので、確信はもてなかったのですが……」
「やっぱりそうだったんですか」
 耀子は何かを合点したように呟いた。
「やっぱり?」
「いえね。日美香さんと出会ってから、この半年くらいの間に、あなたのご様子が変わったような気がしていたものですから」
「変わったというのは……?」
「少し優しくなったというか」
「……」
「あなたも年を取られて幾分人間が丸くなられたのかと思っていたのですが、あのような形で緋佐子様が帰ってきてくれたことに気が付かれて、長いこと、お母様のことで、あなたの中に蟠《わだかま》っていた何かが癒《いや》されたというか鎮まったのかもしれませんね」
「……」
「でもよかった」
 耀子は明るい声で言った。
「日美香さんが緋佐子様の転生者だと分かって、これでもう一つ気がかりがなくなりました」
「なんです、気がかりって?」
「武さんとのことです。わたし……もしかしたら、あの二人は異母姉弟《きようだい》ではないかと密《ひそ》かに疑っていたものですから」
 聖二は姉の顔を凝視した。
「あなたはあの二人をいずれは一緒にするおつもりなのでしょう?」
「二人がそれを望めば……」
「だから、よけい気になっていたんですよ。もし、日美香さんの父親が貴明さんだったらと思うと」
「……」
「わたし、知っていたんですよ。二十年前の事。昭和五十二年の大祭のとき、貴明さんが太田さんと入れ替わっていたこと。あなたがそれを知っていて許したこと。それに、日美香さんがどことなく貴明さんに似ているような気もして。でも、これで、その心配はなくなりました」
「姉さんに隠し事はできませんね……」
「ええ、そうですとも。わたしは地獄耳の千里眼ですから。どんな小さなことでも聞き逃さず見逃さないのです」
 耀子は自慢げにそう言ったあと、
「でも、なんだか不思議な気がしますね……」とふっと遠くを見るような視線になった。
「今年の大祭は、まるで二十年前の大祭の再現のようです。あの昭和五十二年の。あのときも、大祭直前になって、色々なアクシデントがありましたね。わたしが発病したせいで、この村の生まれではない日登美さんが急遽《きゆうきよ》『神迎えの日女《ひるめ》』役をやるはめになったり。そして二十年たって、あの年に、『大神』役をやった人と『日女』役をやった人の子供たちが、こんな思いもかけない形で、同じ役をやる巡り合わせになるとは。因果としかいいようのないものを感じてしまいます」
 姉は感慨深げに言った。
「そうですね……」
 それは聖二も同感だった。
「ところで」
 耀子がふと言った。
「武さんはご自分の役割を全て分かって引き受けられたんですか?」
「いや。全部は話してないです。『神迎え神事』に関しては。でも、日美香の方は全て心得ていますから、まあ、なんとかなるだろうと……」
「そうでしたか。それもあのときと同じですね。いえ、同じというか、ちょうど二人の立場が二十年前とは逆転したような形になっているのですね。『日女』役の日美香さんは何もかも知っていて、『大神』役の武さんの方が何も知らないなんて」
「……」
 姉の声になんとなく咎《とが》めるようなニュアンスを感じて、聖二は黙った。
 そう言われてみればそうだ。
 昭和五十二年の大祭を陰画《ネガ》とすれば、今年の大祭は、その陰画を焼き付けた陽画《ポジ》のようなものか。
 状況は非常に似ているが、構図が裏返しになっている。
「どうして、武さんに前以て何もかも話しておかなかったんです?」
「あいつの性格が今一つ読めなかったからです。一見、単純に見えるが、右といえば左を向くような天《あま》の邪鬼《じやく》なところもあるから、下手に打ち明けたら、役を降りるとも言い出しかねない。そうなっては困ります。それで、いっそ詳しいことは知らせずに成り行きにまかせようと思ったのです。いざとなれば、若い牡の本能に従って成るように成るだろうと」
「そうですか……」
 耀子は、深いため息をついた。
「あなたのそういう肝心なところを隠して事をおし進めようとするやり方が、武さんを傷つけて、二十年前の二の舞いにならなければいいのですがね……」
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