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蛇神5-7-4

时间: 2019-03-27    进入日语论坛
核心提示:     4「日美香ですけれど」 部屋の前で声をかけると、「どうぞ」という聖二の声がした。 騒動が一段落つくと、一同は座
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「……日美香ですけれど」
 部屋の前で声をかけると、「どうぞ」という聖二の声がした。
 騒動が一段落つくと、一同は座敷に戻り、ようやく朝食を済ませた。郁馬の膳《ぜん》は最後まで手付かずだったが、武の方は自分が引き起こした騒ぎの事など忘れ果てたような顔で、山盛りごはんを三杯もお代わりするという旺盛《おうせい》な食欲を見せて、家人を唖然《あぜん》とさせていた。朝食を終えて座敷を出ようとしたとき、聖二から「ちょっと話があるので部屋に来てほしい」と言われたのである。
「ほかでもない。話というのは、昨夜のことだが」
 部屋に入って、いつものように、座卓を挟んで部屋の主と向かいあうように座ると、聖二はややためらうような表情で言った。
「その……昨夜の神事は全て無事に終わったのですか」
「いえ、それが……」
 家々を回り終えた武が機織り小屋に戻ってきたあと、まだ風邪が治りきっていなかったのか、ひどく気分が悪そうに見えたので、それ以上の儀式は自分の独断で中止して、武を休ませ、看病していた。
 日美香は昨夜の出来事をそう告げた。
「……ですから、あの神事は途中までしかできなかったんです。すみません」
「そうか。いや、あなたが謝ることはない。彼は病み上がりでもあるし……。具合が悪かったならば仕方がない」
 聖二はそう言ったあと、考えこむような顔をして黙った。
 その表情は、大事な神事が最後まで至らず失敗に終わったと知らされても、さほど失望したり怒っているようには見えなかった。それどころか、なぜか、ほっと安堵《あんど》しているようにも見えた。
「……ということは、武はまだあの神事の詳しい内容については知らないということですか」
 聖二はふと顔をあげて聞いた。
「……ええ」
「だとしたら、今朝の騒動は単なる気まぐれだったのか」
 独り言のように呟く。
「田舎生活にもう飽きたから帰るといっていたが、それは口実で、本当は、昨夜のことで何か腹をたてていたんじゃないかと思っていたんだが。彼には神事の詳しい内容を前以て知らせてなかったから。それで、へそを曲げて、腹いせにあんなことをしでかしたのではないかと。でも、儀式を途中で中断したのなら、そんなこともないわけか」
「……」
 実は聖二の憶測通りだったのだが、むろん、そのことは黙っていた。
「それにしても」
 聖二は思い出すように言った。
「今朝は少々意表をつかれたよ。まさか、あんな行動に出るとは……。大神祭の長い歴史の中でも、大神役をやった者が祭りの途中で村を出るなんて不祥事はただの一度もなかったし、そもそも、そんなことを思いつく者もいなかった。この村で生まれ育った人間にはとても思いつかない発想だ。よそ者ならではというか」
 聖二の口調には、甥の仕出かしたことを怒るというよりも、まるで感心でもしているようなニュアンスが感じられた。
 顔にもどこか面白がっているような半笑いが浮かんでいる。
「でも、もし、あのまま武が村を出てしまったら大変なことになっていましたよ。笑い事ではないと思いますが?」
 日美香は少しむっとして言い返した。今朝の騒動に関して、養父が意外に寛大なことに苛立《いらだ》ちのようなものを覚えながら。ぎりぎりのところで引き留めたからよかったものの、もし、あのまま、武を外に出していたら、祟り神と呼ばれるものを寄り憑《つ》かせたまま東京に戻り、そこで何も起こらなかったとしたら……。
 その場合、神家の当主としての聖二の立場がどれほど悪くなるか。容易に想像がつくことなのに、当の本人が、他人事のような顔をして、呑気《のんき》に笑っているなんて……。
 そんな腹立たしさすらおぼえていた。
「むろん笑い事ではないです」
 聖二は真顔になって言った。
「もし、あれをやったのが武でなく、村の若い者だったら、それなりの厳しい処分を考えたとは思うが……」
 そう言って、
「ただ、今回の件で、一つ満足したこともあるんです」
「満足?」
「正直言うと、玄関で見せたあいつの言動には、私は少々たじろいだ。まさかあんな行動に出るとは思っていなかったので意表をつかれたということもあるが、一瞬だが、彼の『気』に呑《の》まれたんだよ。
 口調こそふざけていたが、彼の全身からは周囲の者を圧倒するような強い『気』のようなものが発散していた。私だけでなく、あそこにいた者全員が、彼の『気』に呑まれたようだった。ちょうど蛇に一|睨《にら》みされて蛙や鼠が動けなくなるように。
 あれこそ、まさしく日子《ひこ》の呪縛力であり威厳だ。お印が出たとはいっても、今までのあいつの言動はどこか軽々しくて、日子らしい威厳が微塵《みじん》も感じられなかった。女子供に好かれるのはいいが、それだけでは困る。何よりも、周囲の者が自然にひれ伏すような威厳が備わらなければ、頂点に立つ者としての資格がない。しかし、今朝、はじめて、その片鱗《へんりん》を見た思いがする」
「でも、それは、よりにもよって、あなたに真っ向から反抗するという形ではありませんか」
 日美香は不満そうに言った。
「まあ、そのへんが皮肉といえば皮肉なんだが。ただ、対等である限り、時には対立することもあるだろう。こちらの命令通りにしか動かない者など対等とは言えない。真っ向から対立することができる人間だからこそ、味方にしたときは、心強いし頼りにもなる。
 とにかく、これで、私もようやく確信がもてた。彼は日子に間違いない。大神の意志を継ぐ者とはまさに彼にほかならない。今度の祭りで、確実に、大神の御霊が彼の身体に宿ったと……」
「でも、それはまだ半分の力にすぎないのではありませんか」
 日美香が言った。
「例の神事は中途半端に終わってしまったから、彼には、まだ大神の持つ『天』の力しか宿っていないことになります。あの神事を通して、わたしが授けることになっていたもう半分の『地』の力の方はまだ……」
「そうですね。それが残念なんだが」
 聖二の眉《まゆ》が僅《わず》かに曇ったが、すぐに気を取り直したように明るい表情になり、
「しかし、今回、あの神事が失敗したからといって、全てが無に帰した、祭りそのものが失敗だったというわけではない。あの神事が武の体調不良で完遂できなかったというのも、見方を変えれば、失敗というより、それはそれで一つの必然だったとも考えられる」
 と言い出した。
「……必然?」
「言い換えれば、まだ機が熟していなかったということだ。どんなに前以て綿密に考え、用意周到にお膳立てをしても、なぜか、事が成就しないことがある。これは、その事が成る『機』のようなものがまだ熟していないからだ。『人事を尽くして天命を待つ』ということわざもあるでしょう? 物事が成るには、人間の知恵や努力だけではどうしようもない部分もあるんだよ。『天命』とか『好機』と呼ばれる人知を越えた何かが揃わなければ。だから、今回のことも、失敗ととらえるよりも、少し時期が早すぎた、チャンスはまだある。機が熟すのを待てという意味に解釈した方がいいかもしれない」
「……」
「それに、『天と地を支配する双頭の蛇が交わる』という家伝書のくだりを、私は、文字通りの『交合』という意味に解釈してしまったが、これは、もっと曖昧《あいまい》な『結婚』くらいの意味なのかもしれない。
 今回の祭りで大神の御霊《みたま》を宿した武と、あなたがいずれ『結婚』という形を取ることで、武に欠けていたもう半分の『地の力』が宿る。そう解釈することも可能なんだよ。そう考えれば、今回の神事の失敗など大したことではない。ようは、この失敗を取り戻すためには、近い将来、武とあなたが結婚すればいいだけの話だ」
「それは、武を神家に婿入りさせるということですか?」
 日美香は不安そうな表情で聞いた。
「もちろんそうです。武を神家に入れるのでなくては意味がないし、あなたを外に出す気など毛頭ない。お社の宮司職の方は郁馬に継がせるとしても、私の実質的な後継者は武だ。そして、その武の配偶者はあなた以外には考えられない」
 聖二はそう言って、日美香の方を愛情と敬意の入り混じった表情で見た。
「今朝の騒動では、武の言動に腹をたてるというより、半ば感服したが、それ以上に、つくづく感服したのは、あのとき、あなたが咄嗟《とつさ》に取った行動の方です」
「わたし……?」
「玄関で私を含めて家の者が皆武に呪縛されたようになっていたとき、いち早くその呪縛を自ら解き、あなたは武を追おうとした。しかも、途中で出会った権爺から猟銃を奪うなどということまでして」
「あれは……無我夢中でしたことです。武を村から出してはいけない。そんな思いに駆られて。なんとかあの子の足を止めたくて。女の足ではただ追いかけても追いつけないと思ったから。おじいさんの銃を見たとき、咄嗟に思ったんです。飛び道具があれば、制止力になるかもしれないと思って。でも、武を傷つけたりする気はなかった……」
「そんなことは分かっています。それにしても、あの突発的な状況の中で、あれだけ迅速な行動力と的確な判断力をもてるというのは大したものだ。私ですら、あそこまで出来たか自信がない。しかも、結局、あなたは武を傷つけることなく無事に連れ戻すことができた。あなたと武は全く互角の勝負をした。いや、気力において、あなたの方が勝っていたともいえる。
 武の伴侶《はんりよ》になるのは彼と互角に戦えるくらいの気力の持ち主でないと駄目だ。これからも、成長していく過程で、今日のような暴走に近いことはあるだろう。そのとき、単に支えるだけでなく、時には制止したり諌《いさ》めたりするだけの胆力をもった女でなければ勤まらない。ただ夫に甘えきってすがりついているだけのひ弱な女では、彼のような男には足手まといにしかならない」
「……」
 褒められても、日美香はどこか浮かない顔をしていた。
「ただ、結婚といっても、今すぐというわけにはいかないだろうし、少なくとも、武が成人に達するまでは待つ必要がある。でも、今のうちに婚約という形くらいは取っておいた方がいいかもしれないね。祭りが終わったら、新庄家とも話しあって、年内に、この儀式だけは執り行っておこうか」
「あの、お養父《とう》さん……」
 聖二のいつになく機嫌の良い饒舌《じようぜつ》を遮るように、日美香は口を挟んだ。
「前にも言ったように、わたしは武が嫌いではありません。異母弟《おとうと》ではないと分かった今も、弟に対するような愛情はもっています。だから、もし、そうすることがこの村や神家にとって必要なことなら、喜んで、彼と結婚します。でも……」
「でも?」
「……一つ、ひどく不安なことがあるんです。武と結婚する……というか、武をこの神家に婿入りさせることについて……」
 日美香は考え考え、言葉を選びながらそう言った。
「不安……どんな不安なんです? 私の目から見て、武の方もあなたに好意以上の感情を抱いているように見えるし、彼は次男だから、この家に入ることは新庄家にとっても別に問題はないはず。そのことは兄にも打診して既に了解を得ている。この縁談に不安な材料など何もないはずだが」
「名前なんです」
 日美香は思い切ったように言った。
「名前?」
「ええ。わたしが不安でしょうがないのは、あの子の名前なんです。あの子の名前が、いつか、わたしたちに大きな災いをもたらすような気がして……」
「武という名前が?」
 聖二は意味が分からないと言う顔で聞き返した。
「今はまだいいんです。でも、わたしと結婚すれば、この家に婿養子として来れば、あの子の名前が変わってしまいます」
「……」
「新庄武から神武《みわたける》へと」
「……」
「神武《じんむ》になってしまうんです。物部《もののべ》の神ニギハヤヒを攻め殺して、その地位と財宝を奪った男と同じ名前に……」
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