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月蝕姫のキス02

时间: 2019-09-15    进入日语论坛
核心提示:CHAPTER 01それは何だかやけに肌《はだ》寒い、教室の窓から見える何もかもが鉛《なまり》色に塗《ぬ》りつぶされたホームルーム
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CHAPTER 01

それは何だかやけに肌《はだ》寒い、教室の窓から見える何もかもが鉛《なまり》色に塗《ぬ》りつぶされたホームルームでのことだった。
「えー、それでは、創立祭の準備については、いま発表した通りの日程でお願いします。もちろん、飛び入り参加も大歓迎《だいかんげい》です」
クラス委員長の的場長成《まとばおさなり》が、やる気のあるんだかないんだかわからない、いつもの調子で言った。聞く方も聞く方で、こんなどうでもいい連絡|事項《じこう》なんかさっさとすませろよ、なんて投げやりな調子でわき見したり、関係のないおしゃべりに夢中になったりしていた。
そんな中で、ぼく——暮林一樹《くればやしかずき》だけは例外だった。妙《みょう》にワクワクした、ちょっと誇《ほこ》らしくさえある気分で、的場の言葉の続きを待ちかまえていた。だが、ぼくの予想に反して、
「じゃ、この件はそういうことで、えっと、次の議題は……」
彼は同じ委員の京堂広子《きょうどうひろこ》に、彼女の身長に合わせたローアングルで、視線を投げた。太ぶちで度の強い眼鏡《めがね》の下の顔は、年じゅうあまり機嫌《きげん》がよさそうではないが、このときも例外ではなく、
「あ、あれはもう……」
とか何とか、小声で言った。的場は「あ、そっか」とうなずくと、
「じゃ、今日はこんなとこで。どうも、みんな、お疲《つか》れさんでした」
言うなり、京堂広子ともども引っ込みかけた。それを受け、みんながいっせいにガタガタとそれぞれの席から立ちかかる。
「あの、ちょっと」
ぼくは思わず、手を挙げていた。挙げたあとで、しまったと後悔《こうかい》したが間に合うわけもない。クラスメートの大半は、このあとの部活やら何やらに早くも心が行っていて、ぼくの声や動作など気にもとめなかったが、それでもクラス委員の二人や、何人かは「ん、何だ?」と言いたげな表情で、こちらを振《ふ》り返った。
「あ、あのさ」
ぼくはジワリと冷汗《ひやあせ》がわくのを感じながら、おずおずと中腰になり、切り出した。
「創立祭の人員配分の件なんだけど……あれは、あのまんまでいいの?」
「あのまんまって、どういうこと?」
京堂広子が、デフォルトよりいっそう不機嫌そうに顔をしかめ、聞き返してきた。一方の的場はポカンとして、ぼくの問いかけに応じる意思さえないみたいだった。
「いや、だから」ぼくは続けた。「クラス企画《きかく》のスタッフをどう出せば、スケジュール的にOKか、前のホームルームで決まんなかったのは、あれは、今日は検討しなくっていいのかなと……ちょっと、まあ、そんなことを思ったりして……」
言いながら、だんだん声が弱々しくなるのが自分でも情けなかった。それ以上に、自分で自分の発言内容をどうでもいい、大して重要でないことのように言いつくろおうとしていることに。
だが、それも無理はなかった。ぼくの行動に目をとめたクラスメートの大半は、もうとっくに興味を失って帰り支度や雑談にとりかかったり、とっとと教室を出て行ってしまっていたし、そうでないほんの少数や黒板の前の二人からは、ひどく冷ややかで白けた視線しか返ってきていなかったからだ。
「ああ、そのことね」
京堂広子が、かすかに唇《くちびる》をゆがめると言った。
「それなら、たった今、的場君が言ったように、めいめいが空いた時間に自主的に参加するってことになったんじゃないの。ていうか、もともとクラス企画とかって、そういうもんじゃなかったっけ」
「いや、まぁ、その……」
ぼくは卑屈《ひくつ》な笑いを浮《う》かべながら、ゆっくりと椅子《いす》に尻《しり》を着地させた。
「そうだよね。ごめん、ちょっと訊《き》いてみたかっただけなんだ」
壇上《だんじょう》で、的場と京堂のどちらかがフッと鼻を鳴らし、誰かが舌打ちするのが聞こえた。それが誰なのか、伏《ふ》せ気味にした顔を上げて確かめる勇気は、ぼくにはなかった。
また、やってしまった——そんな後悔が、冷たい爪《つめ》で胸を引っかいた。
とはいえ、これはいつものことだった。唯一《ゆいいつ》の救いは、誰もぼくのやりきれない思いなど知っちゃいないということだったが、これも毎度同じことなのだった。
五分後、みんなが帰宅部を含《ふく》めた部活やその他の用事に散ってゆく教室で、ぼくも帰り支度を急いでいた。机の中身をカバンに移そうとして、一冊のノートが目にとまった。
ぼくは自嘲《じちょう》のため息をついた。それこそは、ここ何日かの思索《しさく》の産物であり、ことに昨夜などは貴重な睡眠《すいみん》時間を割《さ》いてつくりあげたプラン——創立祭のクラス企画のための人員配置について記したタイムテーブルなのだった。
ぼくは苦心の作であるそいつを乱暴《らんぼう》にひっつかむと、つかつかと教室の端《はし》っこまで歩いて行った。そこにあるゴミ箱めがけてポーンと投げつけると、あとを確かめもせずにクルリと背を向け、自席に戻《もど》った。まるでそのノートが全ての元凶であるみたいに、
(ざまあみろ)
心の中で、憎々《にくにく》しくつぶやいてやった。
だからといって、うさが晴れるわけでないのはわかっている。問題はぼく自身の性格にあり、いつのころからか身についた厄介《やっかい》な性癖《せいへき》にあったのだ。
とにかく、ものごとをとことんまで考えないではいられない。それも、あくまでも自分の頭で、自分なりのやり方でだ。
数学の問題や古文の解釈《かいしゃく》といった勉強関係をはじめ、小遣《こづか》いの使い道や交通機関の乗り継《つ》ぎ方といった日常の行動まで、考えに考えぬいてしまうのだ。たとえば、学校で新たに告知ボードを設けるに当たって、どこにしたらいいのかというような、普通どうでもいいことまで最適最善の場所を選ぼうと悩《なや》んでしまう。
いったんそうなったら、答えにたどり着くか、デッドロックに突《つ》き当たり、もうどうにもならないことがわかるまで止まらない。
こんな風にいうと、ぼくのことを勉強家の優等生とカン違《ちが》いしてくれる人がいるかもしれないが、現実は正反対だ。もし、そうありたいのなら、自分の頭で自分なりに考えるのはやめて、あらかじめ用意され、期待された通りの答えを、そこへ至るルートごと丸のみにするのが一番だ。
何より困ったことに、ぼくのやり方——いっそ病気といった方がいいが、こいつは時間がかかりすぎる。テストの時間は、一から幾何学《きかがく》の定理や物理法則を打ち立ててゆくには短すぎるし、ちょっとしたクラスの決めごとに何日も費やすことは、小学校だってあまり歓迎はされない。
そのことは十分わかっていた。わかっていながら、今度もまた同じあやまちを繰《く》り返し、同じ後悔をかみしめるはめになったのだが……ただ、このときは、いつもと違うリアクションがあった。
「ふぅん、クラスのみんなのスケジュールを書き出して——それに、これは一人ひとりの多忙《たぼう》度を数値化したもの? それを、作業全体を細かいユニットに分解したものとにらみ合わせたわけか。すごく、よくできてるじゃない」
パラパラとページを繰るらしい音とともに、背後から聞こえてきた声があった。
(ま、まさか、捨てたはずのあれ[#「あれ」に傍点]を?)
ぼくはギクッと立ちすくんだ。そういえば、ちゃんとゴミ箱にたたきこめたかどうか確かめなかったが——だが、あのノートを拾われたらしいこと以上にぼくを狼狽《ろうばい》させたのは、その声の主《ぬし》が誰かということだった。
ぼくはおそるおそる、だが極力さりげない風を装って、ゆっくりと振り向いた。そのとたん、
「これ、あなたが全部作ったの、暮林君?」
声の主——クラスメートの行宮《ゆくみや》美羽子《みわこ》が、あのノートを手にぼくの方に微笑《ほほえ》みかけていた。
「あ……う、うん、そうだけど?」
どぎまぎと答えながら、ぼくは相手の顔をぬすみ見た。信じられないことに、ぼくを見つめる瞳《ひとみ》の奥には、畏敬《いけい》の念さえ浮かんでいるように見えた。それが、決して希望的観測ではなかった証拠《しょうこ》に、
「すごいじゃない、この分担表。どうして捨てたりなんかしたの」
行宮美羽子はそう言うと、長い黒髪をちょっとかきあげ、ぼくの方を見つめた。ぼくはどうにかこうにか平静を装い、でも現実にはうれしさと困惑《こんわく》を丸バレにしながら、
「いや、まぁ……さっき見た通り、すっかり無視されて、提出するチャンスも失《しっ》しちゃったみたいだし」
と小声で言った。
「そうなの」
彼女はそう答えると、薄《うす》く微笑みながらゆっくりとぼくの方に歩み寄ってきた。まさに、思いもよらない展開だった。
そのとき、ぼくの心臓がいつもより大きく、早く脈打たなかったといったら嘘《うそ》になる。だが、そのときのぼくの内心が、昔ならもっぱら女の子向けの雑誌に、今なら少年マンガにあふれてるみたいなドキドキとときめきに占《し》められていたかというと、それはちょっと違う。
確かに、それらはぼくの胸の中にあった。あったどころか、体じゅうを駆《か》け回り、飛び跳《は》ねていた。だが……それだけではなかった。
ふいに崖《がけ》っぷちに立たされたみたいな戦慄《せんりつ》、剽悍《ひょうかん》な肉食獣《にくしょくじゅう》と直面したような緊張《きんちょう》——人が聞いたら「お前は女性|恐怖症《きょうふしょう》か」と笑われかねないが、確かにそんな冷たいものが、ほんの一瞬《いっしゅん》だが全身を駆け抜《ぬ》けたのだ。
「——はい、これ」
行宮はぼくの手にノートを載《の》せてくれると、言った。
「捨てたりしちゃだめじゃない」
「あ、うん……」
ぼくは口ごもり、そのあとに「ありがとう」と付け加えようとした。だが、彼女はそれに耳を貸すことのないまま、まるで床《ゆか》を滑《すべ》るかのように間近を通り過ぎていった。彼女の髪がぼくの横顔をなで、甘い香《かお》りが鼻をくすぐったと思ったときには、その後ろ姿はもう教室の出入り口の方へと遠ざかっていた。
だが、ぼくは確かに聞いた。彼女の唇がぼくの耳元と最接近した刹那《せつな》、こんなささやきをもらしたのを……。
——君のその才能が、生かされるときがきたらいいね。
と。
決して幻聴《げんちょう》などではなかった。でなければ、ぼくは空耳か電波のメッセージに小躍《こおど》りし、ひそかに赤面したことになってしまう。あれはまさしく現実の出来事だった。その直前、彼女から感じた戦慄と緊張が錯覚《さっかく》ではなかったのと同じように。
 行宮美羽子とは、どんな女の子だと訊かれたら、さてどう答えたらいいだろう。
身長はぼくより少し低いぐらい。といっても、ぼく自身は平均より下回る方なので、女の子として特に大柄《おおがら》なわけではない。それどころか、ほっそりして華奢《きゃしゃ》な体つきだ。
中高《なかだか》のうりざね顔というのか、日本的な物静かさが漂う顔立ちでありながら、どこか異国的な気配が感じられる。鼻も口元もちんまりとして、しかし彫《ほ》り付けたようにくっきりしているのだ。何よりの特徴《とくちょう》は、どこか夢見るような瞳と、抜けるように白く、それでいてあえかなピンクに染まった肌で、どんな化粧《けしょう》も不要であり無用と思われるほどだった。
こんな風に表現すると、さぞ学校じゅうのあこがれの存在であり、もててもててしょうがないだろうと想像するかもしれないが、そうでもない。といって、近づきがたいというのでも決してない。
決して派手ではなく、どちらかといえば地味で、うわさに上ることも少ないけれど、それでも修学旅行とか臨海学校とかの晩に、男子連中がお気に入りの女の子たちの人気投票なんかする際、意外なほど多くの隠《かく》れファンがいることが発覚する——そういったタイプだと言えばわかってもらえるだろうか。
そういうぼくは、彼女のファンだったかどうかって? まあ、それは想像に任せておくことにするが、ほんの二言三言、言葉をかわしただけで、今日のみじめな失敗も孤立《こりつ》感も全部帳消しになったのだから、そうでないと言っても信じてはもらえないだろう。
確かなことは、この放課後のちょっとした一コマが、ぼく——暮林一樹にとって一つの始まりだったことだ。もっとも、そのときのぼくは自分の目の前に非日常へのブラックホールがぽっかり口を開いているなどとは気づきもせず、行宮美羽子ともう少し仲良くなれそうなきっかけを得たのではと、ほんのり喜んでいたのだが。
そう……要するにぼくはバカだった。底なしのお人よしだった。つまりはそういうことだ。
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