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輪(RINKAI)廻25

时间: 2019-11-21    进入日语论坛
核心提示:     19 大久保の家に帰ると、ドアを開けた途端に時枝の厳しい顔が香苗を出迎えた。長野の友だちのところへ行ったのではな
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 大久保の家に帰ると、ドアを開けた途端に時枝の厳しい顔が香苗を出迎えた。長野の友だちのところへ行ったのではないことは既に承知、暗雲のかかったような時枝の顔がそれを告げている。おおかた作田が何らかの形でご注進に及んだのだろう。どのみちこのことについては、時枝と話し合わなければならないと思っていた。だから真穂が寝つくのを待って、問い質《ただ》される前にN町八木沢地区へ行ってきたことを時枝に話した。そこでどんな真穂を目にしたかも。
「そう、知ってしまったの……」力なく時枝は呟いた。その顔が、翳に溶けかかったように黒くくすんでいる。
「正直驚いた。過去に何があったかもさることながら、真穂がそんな因縁を抱えているってことに」
「私のせいだよ」時枝は言った。「あの人のことだ。いつか私を追いかけてくる。このまま無事に済む訳がない。いつも私は思っていた。だけどまさかこんな形であんたの娘に、あの人が乗っかってくるとは思わなかった」
修は作田のことを村の鼻つまみ者だったと言った。ある意味ではいちのも同じだった。病的な虚言癖と弱いものいじめ、いちのは相手が逃げ場のない人間であればあるほど、執拗な嫌がらせを重ねた。いちのは土地の豪農、首藤家の一人娘だ。村人にしてみれば、あからさまに知らん顔をすることもできなければ作田のように鼻つまみ者扱いすることもできない。それゆえ表面的には下にも置かぬ扱いをしていたが、内心誰もがいちのを忌避し、敬遠していた。いちのさんと関わり合うとろくなことにならない──。
どこそこの娘は手癖が悪く、家に手伝いにくると必ずものがなくなる、どこそこの女房はもとは廓の安女郎だった……いちのはまるで自分がその目で見てきたように、ありもしない作り話をまことしやかにして聞かせる。話というのはおかしなものだ、それがもとはいちのの口から出たいつもの作り話とわかっているのに、いつしか話が勝手に一人歩きをし、やがては尾ひれがついて膨れ上がる。
「それで縁談が壊れたり、苦にするあまり病気になったり……いちのさんて人は、決まって首藤に文句が言えない立場の人間を標的にした。あの人には、みんな迷惑してたんだ。私もずいぶんいろいろ言われたけど」
しかし時枝は、大飯喰らいの役立たずと言われようが、嫁いできた時点で傷ものだったと言われようが、黙ってそれに耐え続けた。時枝の一番下の弟の信光は出来がよく、本人も医者になりたがっていたし、両親もこの弟には期待をかけていた。信光が医大へ進む学費は、首藤の家が出してくれる約束になっていた。けれどもいちのはこれが豪農の一人娘かと呆れるほどの吝嗇《りんしよく》家で、米櫃にも鍵をかけ、日に一合たりとも余分に米を出そうとはしない。そんないちのの人柄を知るにつけ、これで本当に信光の学費を出してもらえるのかと、次第に時枝も危惧し始めていた。やがてそれが現実になった。
「そのやり方が汚かった。信光の不品行の噂やよからぬ行状をでっち上げて、通っていた高校を放校になるように仕組んだんだ。高等学校を追い出されたんじゃ、とても医大になんか進めやしない。医大へ行かないとなれば、金を出す必要もない。当然約束は反古《ほご》さ」
「ひどい」香苗は顔を曇らせた。
「いちのさんていうのは、そういう人なんだよ」
「それでその信光っていう、おかあさんの弟は?」
「死んだよ」吐き捨てるように時枝は言った。
大雪の晩だった。荒れて慣れない酒を飲んだ信光は、田んぼの畦道の溝に落っこちて、そのままそこで眠り込んでしまった。家族は戻らぬ信光を探しに出た。あたりは一面雪景色、からだの上にも雪が積もり、夜目では見つけることができなかった。翌日昼過ぎに見つけだした時には、信光は既に凍え死んでいた。
「それですっかり気落ちした母は、からだまで悪くしてしまってね」
いちのは信光を、酒で命を落とした大馬鹿者と、笑い話の種にした。そんなたわけが医者になろうとしたというのだから笑わせる──。許せないと思った。
「あんたは、新潟は思ったよりも閉塞的な感じがしなかったと言ったけど、それは夏に行ったせいだよ。冬になってごらんよ。あたりじゅう雪、雪、雪……。積もった雪に埋もれて、窒息してしまいそうになる。そこで仇みたいな姑と、来る日も来る日も顔突き合わせているのは地獄だよ。ショックで寝ついた母も春を待たず、信光のあとを追うみたいにしてあの世へ行ってしまった。私はもう、我慢の限界にきていたんだ」
今日こそ胸に積もったいっさいの恨みを、残らずいちのに向かって吐き出すのだ、そんな思いを内に控え、山にはいったいちのを追った。一度あとを尾けたことがあったから、場所はだいたいわかっていた。
「最初から、殺すつもりじゃなかったんだ。……いや、殺すつもりだったのかもしれない。自分でもそこのところがはっきりしない。だけど結果的には、あの人を崖から突き落としてしまった。まだ息があるあの人を置き去りにして、何喰わぬ顔をして一人家に戻ってきた」
「それで東京に逃げてきたのね。だけどよく──」
「警察に捕まらなかったものね、と言いたいんだろ?」
香苗は黙って頷いた。
「だっていちのさんのことは、事故ということで決着したんだもの。山で勝手に足を滑らせたんだって」
「え?」
口には出なくても、誰かがいちのを殺したことは、村の人間みんながわかっていたことだ。中でも嫁の時枝を、最も疑がっていただろう。けれども村人は、調べに対して口を閉ざした。誰もが一度はいちのに痛い目に遭わされている。いちのとの間にまったくいざこざがなかった人間は、いなかったと言ってよい。いわば誰もが容疑者、同じ立場に置かれていた。下手なことを口にして、逆に火の粉が自分に降りかかるのはご免。山菜の群生地を知られたくないばっかりに、いちのは一人で山にはいった。それゆえ足を滑らせ崖下に落ちても、助けを求めることもできなかった。あれは不幸な事故。うまいことに厄介者は死んでくれたのだ、ならばそれでよいではないか──。
「だったら、逃げることなんかなかったのに」
「そうはいかないよ。周囲の目があるし、亭主は明らかに気がついていた。警察に私を突き出すまではしなくても、まさか母親を殺した女と、その先も夫婦としてやっていけやしないだろう?」
だから時枝は香苗を連れて家を出た。実家の山上家とも縁を切った。そうしなければこの先山上家の人間が、村で暮らしていきづらくなると思った。村から完璧に自分の存在を消し去ってしまうことが、村の人間に事件を忘れさせる唯一の方法だった。
「でも、新潟から一人、私を追いかけてきた人間がいた。鬱陶しい過去が、うるさく纏わりつくみたいにね」
聞かなくても、それが誰かはわかっていた。八木沢地区のもう一人の厄介者、作田文治。
「あいつはね、見ていたんだよ。今で言う、事件の目撃者ってやつだったんだ」
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