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暗鬼07

时间: 2019-11-23    进入日语论坛
核心提示:     7 翌日は、前日にも増して暑さの厳しい日で、午前中から温度計の目盛りはぐんぐんと上がっていった。「どうしたの、
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     7
 翌日は、前日にも増して暑さの厳しい日で、午前中から温度計の目盛りはぐんぐんと上がっていった。
「どうしたの、顔色が悪いよ」
朝、店に出る前の和人が不思議そうな顔で法子を見た。法子は全身から冷たい汗が吹き出しそうになりながら、懸命に笑顔を作って「そう?」と答えた。
「いつもと変わらないわ」
「なあに、具合が悪いの?」
すかさず公恵が身を乗り出してくる。法子はますます身を固くして「平気です」とだけ答えた。
「疲れたんじゃないの? 帰ってきてすぐ、こういうことになったから」
今度はふみ江が心配そうな顔で法子を見た。新聞を読んでいた武雄も、健晴の食事の世話をしていた綾乃も、同時に法子を見た。
──見ないで。私を、見ないで。
法子は俯《うつむ》きがちに食事をしながら、ひたすら笑顔を作ろうと努力した。けれど、昨日までのように、素直な笑みの浮かぶはずがない。
昨夜は結局、午前三時を回った頃に、和人はようやく戻ってきた。階段を昇る足音が小さく聞こえてきただけで、法子は恐怖のあまりに声を上げてしまいそうだった。だが、必死で歯を食いしばり、全身を強《こわ》ばらせて、とにかく眠っているふりをした。
「おやすみ」
部屋に戻ってきた和人が耳元で囁《ささや》いた時にも、思わず彼の顔をはねのけたい程だった。そして「どういうことなの!」と叫びたかった。だが、和人一人の行動が怪しいわけではない、この家全体が奇妙なのだと思うと、突然騒ぎ始めても、かなうはずがないと思った。法子一人、孤立無援の状態で敵地に乗り込んでいるのと同じことだ。こんなに広い家で、少しくらいの悲鳴を上げたところで、とても隣近所までは聞こえるはずがない。庭の木々が、風の騒《ざわ》めきに溶かし込んでしまうに違いなかった。やがて隣で規則正しい寝息が聞こえ始めた後も、法子は闇《やみ》を睨《にら》み、突然|湧《わ》き起こった疑問を整理しようと、必死で頭を働かせた。
──氷屋。無理心中。ガス爆発。葬儀。
結局、法子はついに一睡もしないままで朝を迎えた。
「大丈夫かしら、今日の告別式は、やめにしておく?」
そう言ったのは公恵だった。法子は急いで顔を上げ、顔を強ばらせたまま「大丈夫です」と答えた。耳の奥には、昨夜、ヱイの部屋から聞こえた武雄の「大丈夫」という声が残っている。
「無理することないのよ。何だったら──私が行くから」
「大丈夫ですったら!」
思わず苛立《いらだ》った声を上げると、公恵は驚いた顔になって法子を見つめた。他の家族も、目を丸くして法子を見つめている。
「──眠れなかったのかい」
すでに喪服を着ている武雄が、何かを探るような目つきで言った。心臓が冷たくなりそうな感覚の中で、法子は懸命に首を振った。
「よく眠ったつもりなんですけど──何か、嫌な夢を見て──ああ、エアコンを、きかせすぎてたのかも知れません。それだけですから。ああ、ねえ、和人さんは、寒くなかった?」
わざと言うと、和人は「え?」と言った後、少しばかり慌てた様子で「ああ、エアコンね」と頷いた。法子は無理に強ばった笑いを浮かべ、「寒かったわよ、絶対」と言いながら、必死で箸《はし》を動かした。
「食欲もほら、ありますから。大丈夫ですから」
とにかく外へ出たい。そして、家族に見とがめられない場所で、誰かに連絡を取りたかった。その相手も、昨夜のうちに決めてある。結婚式以来、連絡を取っていない大熊知美以外にはいなかった。
「気分が悪くなったら、すぐに帰ってきていいのよ」
「この暑さだから、無理をしないでね」
出がけにも公恵とふみ江に言われて、法子は二日目の喪服姿で家を後にした。どうしても足早になりそうだったが、振り返ると二人が並んでこちらを見ていたから、出来る限りゆっくりとした足どりで、靴音を響かせて歩いた。
葬儀は通夜《つや》よりは整然とした形式で進められた。無宗教ということもあって、神父や僧侶《そうりよ》が呼ばれているわけでもなく、会場には静かな音楽が流れているばかりで、線香の煙も読経の声もなかった。武雄が生前の氷屋の家族、一人一人についての紹介を行ったあと、参列した人達は祭壇に並べられた四つの棺の前に花を捧《ささ》げた。それから、本庄屋と縁のあった人々が数人、弔辞を読み始める。すすり泣く人がいないわけではなかったけれど、肉親と呼べる人達の存在しない式典は、どこか空々しい雰囲気があった。
「氷屋もさ、恩を仇《あだ》で返すようなことになっちまったな」
「それにしたって、イチフジさんは大したものだよ。なかなか出来ることじゃないよ」
今一つ、荘厳さに欠ける雰囲気の中で、参列者は口々にそんな話をしあっている。彼らにしたところで、大半は商店会の店主仲間か、近所のお得意様ばかりで、故人に縁のあるというよりは、志藤家と縁のあるという人達ばかりのようだった。法子は、ぼんやりと彼らの会話を聞いていた。
「余裕があるから、こういうこともしてやれるんだろうけど、人が好いよね、イチフジさんも」
「あれだってよ、氷屋。家賃だって、ここ半年くらいため込んでたっていうよ」
「じゃあ、踏んだり蹴《け》ったりっていうところか」
白い花で埋まった祭壇には四つの棺が並んで、その数の多さもまた、普通の葬儀とは異なる雰囲気を醸し出していた。心から哀しむ人もいない中で、誰が探し出したのか、生前の本庄屋の家族の写真が虚《うつ》ろな表情で人々を眺めている。
──本当は、どうだったの。教えて、あなたたち、殺されたんじゃないの?
寝不足のせいか、神経ばかりがぴりぴりと張りつめている。法子は、ひたすら彼らの遺影を見上げていた。実際、四つの棺を前にしてみると、昨夜の考えは法子の妄想だったのではないかという気がしてきた。暗闇の中で、一人でパニックに陥って、ひどく取り乱していたから、そんなことを考えてしまったのかも知れない。こうして現に骸《むくろ》となってしまった家族を前にすると、そんな大それたことなど簡単に出来るはずがないではないか、とも思う。第一、動機が分からない。
「相当、具合が悪かったんだろうかね、氷屋は」
背後で誰かがそう言った。大きく引き伸ばされている本庄屋の写真は、先月、法子が庭先で会った男とは同一人物とは思えないくらいに精悍《せいかん》で逞《たくま》しい顔つきをしていた。
「ここ五、六年くらいだろう? 急に病気がちになったのは」
「親父さんが死んでからだな。あの頃はほら、商売がえを考えてるなんて、結構張り切ってた、その矢先だよ」
「ああ、覚えてるわ、それ。何だか、お金を出してくれるところが見つかったとか、そんなことを言ってたの」
「それ、イチフジさんのことじゃないのかね」
聞けば聞くほど、法子は昨夜の全てが妄想だったのかも知れないと思えてきた。結局のところ、自分はよそ者にすぎない。近所の人々は、法子よりもよほど志藤家のことをよく知っている。彼らが噂《うわさ》する志藤家の人々は、法子が実感しているのと同じ、善良で誠実な仲の良い家族だ。
──でも、この人達も知らないことがある。
目をつぶれば、すぐにでも眠りに落ちてしまいそうな感じだった。それでも、神経ばかりがぴりぴりと張りつめて、法子を眠らせまいとする。
──でも、じゃあ、昨日の相談は何だったの。何故《なぜ》、うちの人達が警察のことまで気にするの。何故、皆お通夜《つや》にもお葬式にも出ないの。寝覚めが悪いからじゃないの? せめてもの償いのつもりで、それで葬式を出してやってるんじゃないの?
「あの前の日にね、見たのよ」
急にはっきりとした声が聞こえて、法子はびくりとなり、意識が遠のきそうになっていたことに気付いた。俯《うつむ》いていたせいで、首に汗がたまっている。
「前の日よ、氷屋がイチフジさんの裏木戸から出てくるところ、見たの。ああ、氷屋もご隠居さんのところへ行ったんだと思ったんだけど。でも、ほら、声はかけない方がいいかなって思ったのね。まさか、その次の日にこんなことになるなんて思わなかったしねえ」
聞き覚えのある女性の声が、早口にまくしたてている。その声は、やはりヱイの元を訪れる客の一人に違いなかった。顔ははっきりとは覚えていないが、法子は少なくとも四、五回はその声を聞いている。
──あの男も来ていた。
法子はつい振り返って声の主を見てみたい衝動にかられた。
昨日、法子は和人に聞いたはずだ。そんなに悩んでいたのなら、本庄屋もヱイに相談してみればよかったのにと。その時、和人は何も答えなかった。
「──信じないから、いけないんだ」
今度は男の押し殺した声が囁《ささや》いた。法子は、またもや頭が混乱しそうになった。昨夜から、どうも人々の会話の意味が分からない。
ただでさえ、前々から不思議に思っていることがある。
人々は、そんなにもヱイの元を訪ねて何をしているのだろう。早い人ならば十分程度で帰ってしまうのだから、それほどの相談ごとでもないと思うのに、何故、彼らはそれ程までにヱイを求めるのだろう。
「では、最後にもう一度|黙祷《もくとう》を捧《ささ》げまして、岩井英志さん、雛子さん、友孝くん、美里さんのご冥福《めいふく》を心から祈念いたしたいと思います。何かのご縁で、こうして同じ町内で長い年月を過ごした私達の、そして、本日ここにお集まり下さいました方々の、それぞれの追悼の心が、岩井さんご一家の魂を少しでも慰めることが出来、安らかにお眠りいただけるよう、祈りの心で導いて差し上げられることを信じます」
武雄の、荘厳とも言えるほどの声が響くと、人々の囁きも途絶えた。昨晩、公恵に「大丈夫なの」と言われていたとも思えない程、その声は落ち着き、哀しみに包まれた葬送の集いを演出するには実によく似合っていた。
「黙祷!」
人々と共に起立して、法子は深く頭を垂れた。
──教えて。あなた、本当に自殺したの? あなたが、あなたの手で家族を殺したの? あなたは、私に何を言おうとしていたの。
今となっては、本人に確かめる術《すべ》もない。法子は固く目を閉じ、ひたすら哀れな氷屋の一家に話しかけた。あなた方は殺されたのではないのかと。
それから、四つの棺は火葬場へと向かった。法子は義父に無理をしない方が良いと言われ、霊柩《れいきゆう》車の列を見送る側に回った。冷房のきいていた会場から出ると、空には夏の雲がもくもくと湧《わ》き、一気に汗が吹き出してきた。
「イチフジさんの、お嫁さん?」
立ち話をしたり、各々に帰路につく人達に混ざって、のろのろと数珠をバッグにしまいこんでいると、ふいに声をかけられた。それだけで、法子はどきりとして鼓動が速まった。顔を上げると、四十前後に見える女性が、不安そうな表情でこちらを見ている。
「ちょっとうかがいたいの」
女は、素早く周囲に視線を走らせた後で、ひどく秘密めいた口調でそう言った。法子は、曖昧《あいまい》に「はあ」と答え、その女を注意深く見つめた。
「お宅に、百歳くらいのおばあさんがいらっしゃるんですって?」
「──おりますが」
「初めてうかがって、すぐにお目にかかれる?」
法子は小首を傾《かし》げながら、相手の女性の言葉の意味を探ろうとした。彼女が何を言おうとしているのか、よく分からなかった。
「あの、何か御用ですか?」
取りあえずはそう聞き返すと、彼女は一瞬驚いた顔になり「えっ、だって──」と言いかけて、それから数回瞬きを繰り返した。
「あの──おばあさんのところへ」
そうだ。この人からどういう用件か聞き出せば、ヱイへの来客の意味が分かるかも知れない。法子は、どういう方向に話を持って行けば不自然でなくそれを聞き出せるだろうかと、目まぐるしく頭を働かせた。
「結構、色々な方がみえるものですから、忙しいんですが」
すると、その女は「やっぱり」と言って瞳を輝かせる。そして、ますます法子に身を寄せてきた。葬儀に参列していた人の群れは、もう四方に散っていて、法子はその女性と二人だけで取り残された形になっていた。
「秘密は守りますから、ねえ、うかがわせていただけないかしら。ぜひ。私もどうしても、お力をいただきたいの」
「力っていっても──」
白いハンカチを取り出して、わざとらしく額を抑えていると、女は苛立った表情になって「ねえ」と眉《まゆ》をひそめた。
「お願いよ。よそでは絶対に手に入れられないっていうんでしょう?」
──手に入れる?
法子は俯《うつむ》いて迷うふりをしながら、女が「秘密は守りますから」と言うのを聞いていた。辺りには蝉《せみ》の声が満ち、世界中の全ては、太陽に焼き尽くされて真っ白に見える気がした。
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