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暗鬼27

时间: 2019-11-23    进入日语论坛
核心提示:     27 永遠に終わらない、地獄のような時が流れているとしか思えなかった。雨戸を閉めきっているとはいえ、夜が来て朝に
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     27
 永遠に終わらない、地獄のような時が流れているとしか思えなかった。雨戸を閉めきっているとはいえ、夜が来て朝になり、再び夜を迎えたことくらいは、その気配から分かった。
──もう、やめて。
一定の波を持った家族の攻撃は絶えることなく続いた。部屋には汗まみれの異様な匂《にお》いが満ち、誰の顔も脂《あぶら》で光っていた。
法子は、既にもう何時間も、十何時間も前から意識が朦朧《もうろう》としていて、何を言われても言い返す気力など失いきっていた。プライドはずたずたに切り裂かれ、全ての価値観は木っ端みじんに打ち砕かれて、自信とか意欲とか、法子が法子であった理由とか、そんなものの全ては、風に舞う塵《ちり》のように消え去っていた。
──私はつまらない人間だったんだ。こんなにも無能で、愚かで、自惚《うぬぼ》れだけで生きてきた。
だからこそ、家族はこんなにも怒ったのだと思った。欺瞞《ぎまん》に満ち、真実を見極める目を持たないからこそ、彼らは絶望し、怒っているのだ。そうに違いなかった。法子の中で、急速に死への欲求が高まっていた。自分の人生も、体内を流れる血も、そして生命さえも、もう、何の意味も持たない無駄なものに過ぎない。
「何か、言うことはないの」
気絶寸前の状態で、法子は遠い声を聞いた。法子は涙も涸《か》れ果てた状態で、うつろにかぶりを振るだけで精一杯だった。
「──私なんか、死んでしまえばいいのに」
自分の声さえ遠く聞こえる。
「こんな──こんな、つまらない人間なんか、生きている価値はないんだもの。私なんか、死んでしまえばいいんだわ」
涙も出ないはずなのに、乾いた嗚咽《おえつ》ばかりが洩《も》れた。頭の中は既に真っ白で、このまま死ねるのならば、その方が楽だとも思われた。
「その、『私なんか』っていうのが、いちばんいけないんだ。何故《なぜ》、そこまで自分に執着する? 何故勝手に自分の生命を縮めようと思う?」
ふいに肩に温もりを感じた。嵐《あらし》のように耳の中で響き続けてきたこれまでの声とはまるで調子の異なる、柔らかい声だ。法子はやっとの思いで顔を上げ、目の前に和人の顔を見た。
「そんな君でも、僕は選んだ。君はもう、勝手に動いてはならないんだよ。だって、僕らは家族なんじゃないか。何をするのも一緒だろう?」
和人の声は、この上もなく優しく、柔らかく、暖かかった。法子は呆然《ぼうぜん》と夫の顔を見つめ、そして、彼の限界のない愛情の深さを心の底から感じた。
「──和人、さん」
彼の顔も脂ぎって光って見えた。けれど、確かに笑っている。その目が許すと言っていた。
「──こんな私でも? 皆は許してくれるの? 何の取り柄もない、こんなに醜い、汚れきった私を?」
和人がゆっくりと頷《うなず》いた時だった。ぱたん、と音がして、室内が明るくなった。法子は、ゆっくりと顔を動かした。もう、視線だけを動かすことなど不可能な程に疲れきっていた。
「おまえは、私の子。私の親。私の孫。私の血を受けたものになるよ」
そこにヱイが立っていた。法子は、逆光の中で、彼女が真っ直ぐにこちらに向かって歩いてくるのを見た。
「奇跡は起こる。おまえが心を開けば、私達はより強い絆《きずな》を作り、おまえの上にも奇跡を起こす」
全身が震えた。真っ白だった頭に閃光《せんこう》が走り、法子はただ呆然とヱイを見上げていた。こんな感動を、これまでに経験したことがあっただろうか。法子が、ついに心の壁を破ったとき、再び奇跡が起きたのだ。法子は、赤ん坊のように手放しで泣いた。大ばばちゃんが立った。大ばばちゃんが歩いた。それこそが、法子が生まれてこの方、唯一《ゆいいつ》行った価値あることだと思った。
「ああ──ああああ──ああ──」
惚《ほう》けたように泣き続けていると、「分かったね?」という武雄の声がした。法子はヱイの方を見たまま、全身の力を弛緩《しかん》させて、ただおろおろと泣いた。
「よかった。法子ならば、きっと分かってくれると思った」
和人に抱きしめられて、法子はただ「ああ、ああ」と泣き続けた。家族は誰もが法子と共に泣き、法子を抱きしめ、法子の頬《ほお》を撫《な》でた。自分と異なる体温、異なる皮膚の感触が、四方から伸びて法子を慰める。その心地良さ、あの暖かさに、法子は恍惚《こうこつ》となっていった。
大きな盆に盛られた大福餅《だいふくもち》のようなものが運ばれてきた。法子は和人に抱かれたまま、その盆を見た。
「今こそ家族の絆を深める時、今こそ、真実に目覚める時。そして、全ての壁を取り去る時だ」
ヱイの声が響いた。家族の手が伸びてきて、それを一つずつ取っていく。法子も、その盆に手を伸ばした。さっきまでの熱狂の時は去り、今度は厳粛な空気が流れた。法子は泣きながら、家族と共にそれを食べた。大福に見えたものは、温室で栽培している、あのペヨーテというトゲのないサボテンだった。
──家族になる。一つになる。
意識が朦朧《もうろう》としてきた。目の前を色彩が飛び、天上の音楽とも思えるものが耳の中で鳴り響いた。生まれてこの方、ずっと法子の身体に押し込められていた全てのものが、独自に動き始め、外部に流れ出ようとする。脈拍も呼吸も荒くなり、法子の中で確実に何かが変わり始めていた。
「法子──法子」
誰かの手が伸びてきて法子の服を脱がせようとする。背中のファスナーを外された瞬間、法子は自らの背中から白い翼が伸びるのを見た。
「ひとつなんだ、みんな、ひとつだ」
誰かが言った。その時には他の手が法子の下着を脱がせていた。法子は、夢中になって他の誰かの服を脱がせていた。ひとつになるのだ、全てを共有し、全てを受け継ぐ。その為に、服など着ている理由はなかった。
綾乃が裸で踊っている。健晴が、同様に裸になって綾乃に従っていた。和人は公恵の服を脱がせていた。公恵は、和人の裸の胸を撫《な》で、うっとりと微笑《ほほえ》んでいる。法子は、誰かに横たえられて、踊る綾乃を見ていた。自分も踊りたい、彼女と一緒に、健晴と一緒に、踊りたかった。
「ああ、お義父《とう》さん──」
顔を上げると武雄の顔があった。武雄の呼吸は法子以上に荒く、瞳《め》は異様な程に輝いている。
「さあ、ひとつになるぞ。私の血を受けるものは、家族の血を受けるもの。大ばばちゃんからの血、おじいちゃんの、おばあちゃんの、公恵の血」
「──お義父さん」
再び顔を動かすと、和人が綾乃に馬乗りになっているのが見えた。兄妹は、互いの肉体をもっとも深い部分で確かめあっている。同様に、法子も武雄とつながるのだということが、とてもよく分かった。そうすることで、法子は本当の家族になるのだ。
「血は濃くなければならない。薄まることは許されない。だから、法子は私の血を受け、家族となる。汚れを祓《はら》うためにも、選ばれた人間となるためにも」
公恵とふみ江が並んで笑っている。彼女達も一糸まとわぬ姿になって、やはり裸になっているヱイを挟んで座っていた。法子は、何と美しい人達なのだろうと思った。性別も年齢もない。ここにあるのは、真実の家族の姿、本当の家族の姿だ。
──家族って、こういうものなんだわ。
武雄が自分の中に入ってきたのが分かった。法子は、家族に見つめられ、和人に微笑まれて、武雄の血を受けた。嬉《うれ》しさのあまりに、狂喜の声が口から洩《も》れる。けれど、どんな声を出そうと、どんな姿を見せようと、もはや家族の前で何の気兼ねもいるはずはなかった。
「法子は私達の家族」
「法子は志藤の家の人間になった」
家族から歓声が上がった。法子の頭の中で、立ち上がったヱイの姿が蘇《よみがえ》った。松造が喋《しやべ》った時のことも、綾乃と健晴が絡み合っていたことも、全てがくるくると回った。法子は混乱の中で室内を見回し、汗を滴らせる武雄を見上げ、黙って見守るヱイ達と、絡み合っている綾乃と健晴、そして、やはり横たわったままふみ江に裸体をさすられている松造を、公恵と抱き合う和人を見た。武雄に組み敷かれたまま、手を和人の方に差しのべると、彼は、その手を力強く握ってくれる。
「父さんの血を受けるんだ。僕らに流れているのは皆、同じ血なんだから、選ばれた血を、受けるんだ!」
「恥ずかしくないのよ! 汚くない、美しいことなの!」
今度は公恵が叫ぶ。法子は幾度も頷《うなず》いた。夫の父、愛すべき家族と交わる幸福に酔いしれた。時間の経過も、天も地も、もはや何の意味ももたなかった。
「私達の肉体はひとつ。私達の精神はひとつ。私達は、隠すこともごまかすこともいらない。皆、ひとつの血でつながった家族なんだわ!」
それから、法子は狂ったように和人と交わり、健晴と交わり、そして綾乃とさえ互いの裸体を抱きしめあった。欲情というには、それはあまりにも激しく、純粋で、そして美しかった。もう、本当に一人ではない。自分は家族の一部になったのだということだけで、感動はいつまでも鎮まらなかった。これこそが本当の家族なのだ。法子を産み、育ててくれた実家の人々など、ただの詭弁《きべん》の家族に過ぎない。彼らは欺瞞《ぎまん》に満ちた生活を送るだけの、陳腐な存在に過ぎないのだと思った。
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