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歌月十夜145

时间: 2019-11-29    进入日语论坛
核心提示:*s178□カレー店メシアンの店内 そうだな。デートに行こうって誘ったのはこっちの方だし、こうなったら覚悟を決めて事の顛末を
(单词翻译:双击或拖选)
*s178

□カレー店メシアンの店内
 ……そうだな。デートに行こうって誘ったのはこっちの方だし、こうなったら覚悟を決めて事の顛末を見届けるとしよう。

「———————!」
「———————!?」
「———————!!!!」
「———————!!!???!」
……厨房から聞こえてくる話し合いは段々と熱気を帯びてきて、そろそろ打撃音が混ざってきそうな白熱ぶりだ。

「オマタセシター」
と、店員さんが何食わぬ顔でチキンカレーと野菜カレーライスセットを運んできた。
「どうも」
軽く店員さんにおじぎをして、もぐもぐとチキンカレーを食べ始める。
ま、時間はあることだし、せめて自分ぐらいはまともな客らしく料理を楽しもう。
 
□大通り
メシアンを出た頃にはもう夕方になろうとしている頃だった。
メシアンの店長との交渉が決裂したのか、ぶつぶつと文句を繰り返すシエル先輩を引っ張ってデートを再開した。
 で、レシピぐらい教えてくれてもいいじゃないですか、とお冠な先輩が元に戻るまで街を歩いた結果、時刻はすでに午後十時過ぎ。
先輩は時計を見るなり、
「うわ、もう巡回の時間ですか!?」
なんて、憑き物が落ちたように気を取り直してくれた。

「なに、先輩今夜も見回りをするの?」
このまま別れるのは残念なので、ついそんな事を言ってしまった。
【シエル】
「はい、これも仕事ですから。けどいつもの巡回ルートを回って、異状がなければ二時間ほどで終わるんです。……その、遠野くんが今夜泊まってくれるんでしたら、先に部屋に戻って待っていてください」
と、先輩も同じ気持ちなのか、わずかにうつむきながらそう言ってくれた。……その頬は赤くなっていて、こっちも釣られて照れてしまう。

「なんだ、そういう事なら俺も付いて行くよ。今日一日は付き合うっていっただろ? 足手まといにならない程度に頑張るから、たまにはシエルの手伝いをしたい」
意識してシエル、と口にした。
先輩は嬉しいのか困ってしまったのか、複雑な顔をした後によろしくおねがいします、と手を繋いできた。
 
□街路
———夜の街を先輩と歩く。
 去年の通り魔殺人の影響か、深夜になって出歩く人は少なくなった。
「……ああ、そういえば」
最近は別の殺人鬼が現れたとかなんとか。
だからだろうか、まだ零時にもなっていないというのに街が死んだように静かなのは。
【シエル】
「遠野くん? 何か言いましたか?」
「え————いや、なんでもない。独り言っていうか、ちょっとボケッとしてた」
【シエル】
「はあ。あまり気を張るのもいけませんけど、もうちょっと周囲に気を配ってくださいね。わたしがいる、という事で死者も警戒しているんです。
主を失った彼らにとって、この法衣から醸される微弱な香りでさえ苦痛になります。ですから、もし擬態している者がいれば耐えきれずに襲いかかってくるでしょう」
「その、匂いの元を断つために?」
【シエル】
「そうです。ですから夜の街で、この姿のわたしの側にいるという事だけで注意すべき事なんです。……その、こうしている分には眼鏡を外すほどではありませんけど、危ないと感じたら眼鏡を外さないとダメですよ。遠野くんの危険を察知する感覚はお化けですからね、それに関してはたいへん頼りにしています」

夜の大通りを歩きながら、先輩は色々とレクチャーをしてくれる。
 けれど、今の会話にはどこかひっかかるモノがあった。

「—————メガネを外すって、なんで?」
一人呟く。
そんな事になんの意味があるんだろうか。
別にメガネを外した所で何が起こるわけでもないし、自分は今までだってなんの力も借りずに——�

□街路
「…………っ」
頭痛がした。
シエル先輩の言葉、メガネを外すとかなんとかいう言葉の意味を考えようとすると眩暈がして倒れそうになる。

「—————————」
はあ、と先輩から目を逸らして深呼吸をする。
……少し、休もう。
今は何も考えず、とにかく先輩の側にいればそれでいい。
「…………ん?」
先輩から視線を逸らして建物の影を見た時、なにやら人影らしきものがあった。
「……………」
なにげなく視線を向ける。
それは

【ダークシエル】
赤い眼をした、先輩だった。

□街路
「せ、先輩————!?」

【シエル】
「はい? どうかしましたか遠野くん?」
前を歩いていた先輩が振りかえる。
「あれ———? あ、そうだよな、先輩はここにいるんだから———」
????
それじゃあさっきのは誰だろう?
こっちを見て笑っていたように見えたけど、アレは確かに——�
「あの、先輩」
「はい。だからなんですか遠野くん」
「先輩って良く似た姉妹がいる?」
【シエル】
「———————————」
途端、先輩の顔が凍りついた。

「遠野くん。それを、何処で見ましたか」
緊迫した視線。
……話してはいけない。
シエル先輩に、たった今見た“誰か”のコトを話してはいけない、と咄嗟に思った。
「————そう、あそこですね」
だっていうのに、先輩はこっちの視線から方角を看破してしまった。
 
「遠野くんはここにいてください」
感情のない声で先輩は言う。
「ま———ダメだ、行くべきじゃない先輩っ……!」
厭な予感に心臓を掴まれて、全力で先輩の後を追う。
 
□裏通り
先輩は躊躇う事なく路地裏へと消えていく。
その後を追ってトンネルをくぐるなり、強烈な吐き気に襲われた。
「な——————」
恐ろしいまでの血の匂い。
この奥、いつもの路地裏から夥しいまでの血の匂いが流れてきていた。
「く———————」
思わず頬を拭う。
香りだけで肌に血が付着してしまいそうなほど、濃厚な血の匂い。
まるでこの先には、たった今抜き出したばかりの血液で満たされたプールがあるような錯覚。

「————ダメだ。そいつに会っちゃいけないんだ、先輩……!」
知らず、そんな呟きを洩らす。
……自分はこの感覚を知っている。
もう何度も味わっている、対面してはいけない自分の鏡像の気配。
けれど朝になれば忘れてしまう、今も覚えていない悪夢。

「くっ———!」
ポケットからナイフを取り出して、間に合うようにと路地裏へと駆けこんだ。

□行き止まり
 路地裏についた。
そこには
【シエル】
憎しみの籠った瞳で虚空を睨む先輩と、

【ダークシエル】
それを幽然と受け止めている“誰か”の姿があった。

「あら。残っていなさいって言われたのに付いてきたんだ。……ふふ、愛されているというのは愉快なことね、シエル」

【シエル】
「———黙りなさい。貴方にシエルなどと呼ばれる筋合いはありません。死者風情がなんのつもりかは知りませんが———」

【ダークシエル】
「この姿をするのは止めろ、といいたいの? けどそれこそ筋が合わない。わたしはもとからこの姿だもの。それは貴方のほうがよく解っているんじゃなくて?」

“誰か”は愉快そうに笑っている。
そのたびにシエル先輩の憎しみは増していくようだった。
見れば。
黒剣を握る先輩の指は、あまりに強く握っているために血が零れ出している。
【シエル】
「いいでしょう。止めないというのなら——」

【ダークシエル】
「殺す? 無理ね、貴方にはわたしは殺せない。だってわたしは———」
「黙りなさい—————!」
 
 炸裂する先輩。
———そう表現するしかないほど、シエル先輩の動きは高速だった。
先輩は弾ける火花のように、
予備動作もみせずに“誰か”に切りこんだ。

鉄を切る音。
肩口から一刀両断、大木さえ絶命させる一撃は、しかし、“誰か”の人差し指だけで容易く受け流されてしまった。

□行き止まり
「———————!」
咄嗟に間合いを離す先輩。
“誰か”は一歩も動かず、ただ黒いケープを揺らしている。
【ダークシエル】
「ほら出来ない。たしかにシエルには教会で鍛え上げた体がある分、わたしより戦いには長けているでしょう。けれどその分、貴方が失ったものをわたしはまだ持っている。
戦う術がない故にソレを鍛え上げたシエルと、初めからソレを持っていたわたしとでは力が違うわ。
所詮貴方の牙は作り物。必死にオリジナルに似せたイミテーションだもの」

「———————」
先輩は無言で“誰か”を凝視する。
……ぎちり、という音。
憎しみが極まったのか、先輩は砕けそうなほど歯をかみ締めている。
「震えているのね、シエル」
否。
それは、恐怖で。
シエル先輩は震えて、ガチガチと鳴る歯を押し殺すために、必死に力を込めているだけだった。

「理解してくれた? 今まで何度も言ったでしょう、貴方ではわたしを殺せないって。
だってわたしは貴方だもの。今の貴方が恐れる悪夢、思い出したくもない貴方の過去。だから、貴方には決してわたしは殺せない」
笑う“誰か”。
「———————やだ」
先輩は、置いていかれた子供のように、声をもらした。

「———思い出しなさい、シエル。わたしは貴方よ。貴方が生み出した貴方の影。永遠に貴方には拭い去れない忌まわしい記憶。
————そう。この姿は決して許される事のない、貴方の罪の具現でしょう?」

「—————————!」
先輩が崩れ落ちる。
頭を抱えて、狂ってしまったかのように首を振る。

「先輩っ……!」
たまらず駆け寄った。
もがいて、ガチガチと震えているシエルの体を強く抱きしめる。
「先輩、先輩……! くそ、なにしてるんだよシエル……! しっかりしないとダメじゃないか……!」
暴れる体を必死に押さえる。
「だって———だって、だって———!」
先輩には何も見えていない。
いまにも舌を噛んでしまいそうなほどの狂乱ぶりで先輩は震えている。

「こ、の————いい加減にしろ、いつもの冷静なシエルはどこにいったんだよ……! アレがなんだか知らないけど、敵の前で怯えてるなんて先輩らしくないっ! あんなヤツ、先輩が出来ないってんなら俺がやっつけてやるから!」
「——————ぁ」
顔をあげる。涙に滲んだ瞳で俺を見て、先輩は、悲しそうに首を振った。

「できません。遠野くんには、できない」
「……!? だから、どうして!」
「だって、アレは———わたしの、罪だから」
懺悔のような呟き。
 その瞬間。焼けた飴のように、先輩と俺の意識は融け合った。

□行き止まり
——————そこは、一面の赤だった。

どれほどの屍山を築けばこれほどの血河を作れるのか。
その、片田舎の町にはいささか立派すぎると誰もが誇りに思っていた教会は、その全てが赤色に染められていた。

その河の中で蠢くいくつかの虫がいる。
ずるり、ぴちゃり、と這いずりまわる生き物がいる。
 それを、彼女は蛆のようだと笑った。
 手足をもがれて棒のようになった生き物は出口を求めて這いずりまわる。
彼女は別段、それらの行動を咎める事はしなかった。

ぴちゃぴちゃと音をたてて、背中と腰だけでそれらは這いまわる。
出口はそれらのすぐ側にあった。
ただ、出口は少しだけ高く作られていて、立ちあがらないかぎり届く事がない。
 呪いの言葉を吐きながらそれらは這いまわる。
それでも一昼夜を過ぎて次の夜を迎える頃には、それらの呪いは嘆願に変わっていた。

———モウイヤダ。

ぴちゃぴちゃ。

———ナニモミエナイ。

ずるずる。

———テアシ、テアシ、テアシ!

ごろんごろん。
 
———クルシイデス。

ぐちゃ。

———イタイ、イタイ。

ぴくぴく。

———オネガイシマス

ずるずる。

———モウ

ぴちゃぴちゃ。
 
———————コロシテクダサイ
 無論、彼女はそれらの嘆願など無視した。
はじめから聞いていなかった。
血の貯水庫で虫を飼うのは予想に反して退屈だった。
彼女が待っているモノの到着までまだまだ時間はある。
それまでの時間をいかに過ごすかは彼女の自由だ。
彼女は貯水庫に蓋をして物思いに耽る。
蓋である鉄の塊を落とした時、なにやら潰れる音がしたけれど、そんなものはもちろん彼女の耳には入らなかった。
 
 それが日常の断片だった。
それ以上の日常など見たくもない。吐き気と震えと恐怖で、強引に夢から覚めた。
□行き止まり

「ハッ———ハァ、ハァ————!」
先輩から体を離す。
それで視界は元に戻ってくれた。
けれど先輩は逃げ場がない。
依然として地面に崩れ落ちたまま、あの光景を見せ付けられている。
「—————立って! ここにいちゃダメだ、シエル……!」
泣き崩れている先輩の腕を掴んで、強引に走り出す。

□裏通り
「ハッ———ハッ、ハッ————!」
息を切らせて走る。
先輩は力なく、ただ引っ張られるままに付いてきている。
 
□街路
「よし、ここまで来れば—————」
大丈夫、と振りかえって愕然とした。
「せ、先輩————」
そこにシエル先輩の姿はなかった。
さっきまで確かに掴んでいた腕も、まるで幻のように消え去っている。
【ダークシエル】
「無駄よ。自身の悪夢に出会ったからには逃れられない。シエルは目覚めるまでずっとあの中で苦しむだけだもの」
「おまえ—————!」
いつのまに現れたのか、“誰か”は嫌な笑みをうかべて言った。

「そしてそれは貴方も同じ。貴方には貴方の悪夢があるのだから、わたしたちの邪魔はしないで。
貴方が側にいるとわたしまでいらないカタチを持ってしまうわ。
だから、貴方は消えてちょうだい」
 
「な—————」
ざくん、と膝が地面に落ちる。
巨大なフォークで首を串刺しにされたような、感じ。
「———おやすみなさい。明日もよろしくね、遠野くん」
 それが、この夜に聞いた最後の声だった。
 
 ……なんというか。
“誰か”かの声は最後まで愉快そうで、まるで先輩が嬉しそうに笑う時のように、聞き覚えのある響きだった————
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