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歌月十夜194

时间: 2019-11-29    进入日语论坛
核心提示:*s242□廊下まだクラスに戻る気になれないし、もうちょっと見て回ってみようか。さすがにすぐ戻れるように二年の区画が中心にな
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*s242
 
□廊下
まだクラスに戻る気になれないし、もうちょっと見て回ってみようか。
さすがにすぐ戻れるように二年の区画が中心になるけど、まあ、今年の出し物は二年が一番凝ってるって話だし。

「……ん?」
なんか向こうが騒がしいな。
ただでさえ祭りで浮き足立った雰囲気が一層ざわついているような感じ。
騒がしさはこちらに向かってきている。まるで芸能人がカメラを率いて移動しているような、そんな喧騒だ。
「誰か有名人でも来てるとか」
ひょい、と人込みをかきわけて喧騒の元を覗く。

「—————————え?」
そこにいたのは、俺が毎日見ている顔だった。
【翡翠】

「ひ、翡翠……!?」
間違いない。
翡翠は人込みと喧騒でざわつく廊下をいつもの調子で歩いている。
「————————」
翡翠は無言で、教室を一つ一つ確かめるように進んでいる。
そんな翡翠に合わせてまわりのざわめきも進んでくる。
……理由は言うまでもない。いくら学祭といっても翡翠の服装は珍しすぎるし、くわえて翡翠ほどの美人が着ていれば話題にならないほうがおかしい。
「————」
翡翠は周囲の喧騒をまったく意に介していないように見える。
何人かの男子が声をかけても無言で歩いてるし、足取りもいたって冷静。
見知らぬ学校の中において物怖じする所がない————なんていうのは、翡翠を知らない人間の意見だろう。
「———————翡翠!」
たまらず声をかける。
こんなコトをしたら後で周りからどんなに言われるかなんて、そんな問題もうどうだっていい。

【翡翠】
「志貴さま……!」
無表情だった顔が一変する。
咄嗟にそんな顔をしてしまうほど、彼女は不安だったに違いない。
「こっちだ。悪いな、迎えに行けなくて」

さも当然のように翡翠の手を取って、とりあえず喧騒から離れる事にした。

んで、小走りで去る俺たちの背後。
「あー、いっちゃったー!」
「なにあれ、2−Cの呼びこみ要員だったわけ?」
「まっさかあ、三組にあんな可愛い子いるわけないじゃん!」
「っていうかさあ、アイツ誰よ」
「アイツって遠野だよ。金持ちなんだか貧乏なんだかわかんないヤツでさー、たまにオレたちと食堂でかけそば食ってるんだぜ」
「ほう。そりゃあいいヤツだな」
「あー、おまえら論点違うだろ! いいか、今の子志貴さま、だなんて言ってたんだぞ!? さま付けだぞさま付け! 遠野のヤロウ、あんな可愛い妹だけじゃあきたらずあんな子にさまづけさせてんだぞ、あのエロ学派がぁ!」
 ……ああ、やっぱりそうなったか。
ちなみに学派とはガッパと読む。うちの学校で頻繁に使われるスラングで、そう呼ばれた男子は翌日みんなから殴る蹴るの暴行を受けるという、まこと嬉しくない称号である。
□階段
 これだけの人込みから翡翠を隠す事なんてできないわけで、とりあえず教室を離れて階段までやってきた。
依然として周囲からの視線を感じるけど、さっきよりは遥かに静かだ。
「それで翡翠、今日はまた一体どうして」
あたりの目……とくにクラスメイトや有彦に見つからないかと神経を研ぎ澄ましながら声をかける。
【翡翠】
「—————————」
翡翠は難しい顔をしたまま、ただじっとこちらを見つめてくる。
「?」
考えてみれば、屋敷から外に出たがらない翡翠がうちの学校にやってくるなんてタイヘンな事だ。
なにか屋敷の方で事件がおきて、それで俺と秋葉を呼びにきた——�
「あれ? それ、お弁当?」
【翡翠】
————という訳ではなさそうだ。
「………………」
えっと。つまり、もしかして——�
「……はい。その、以前お約束した事なのですが」
【翡翠】
「不出来な物なのですが、お弁当をお作りいたしましたのでお届けにあがりました。今日は学園祭というものをしているから、届けるには丁度良いと姉さんに言われたのです」
言いにくそうに肩をすぼめる翡翠。
「……ですが出過ぎた行為でした。食事をする所がこれほどあるのですから、わたしなどが作った物よりこちらでお食事をなされた方がよろしいかと思います。
それでは失礼します。志貴さまの身の回りをお騒がせして申し訳ありませんでした」
ぺこり、と一礼をして踵を返す翡翠。
「待った。それ、俺のお弁当なんだろ? ならありがたく頂くよ」
がしっ、と翡翠の腕を掴む。
【翡翠】
「……ですが、味は保証できません。未熟なわたしが作ったものより、皆さんが用意なされている食事の方がおいしいのではないでしょうか」
「———もう。いいんだ、味なんて多少問題があっても。そんな事より翡翠と一緒に食べられるほうが何倍も嬉しい。こんな機会めったにないんだし、二人でお昼ごはんにしよう」
「……それでは、志貴さまはわたしの料理でよろしいのですか?」
「ああ、今はなによりのご馳走だよ。ほら、せっかくお弁当を作ってきたんだろう? なら外で食べよう。人目につかないとっておきの場所があるから」

翡翠の手をとったまま強引に階段を下りる。
まだ躊躇っている翡翠を引っ張って、まわりから向けられる好奇の視線もうっちゃって、一目散に中庭へと足を向けた。
 
□中庭
「よし、ここなら問題ないな」
シートを広げて座れる場所を作る。……自分一人だけならシートなんて必要ないんだけど、翡翠の服は芝生の上で座る、なんていう物じゃない。
「それじゃ座ろうか。飲み物はある?」
【翡翠】
「……はい、紅茶ですがよろしいでしょうか?」
「おっけーおっけー! ほら、いつまでもシュンとしてないで元気ださないとダメだぞ。せっかくのお祭りなんだから、楽しまないと損だろ?」
どうぞ、と翡翠をシートの上にエスコートする。
「………………はい。志貴さまが、そう仰られるのでしたら」
 
 翡翠はやっぱりためらいがちに、シートの上に腰を下ろした。
———さて。
それじゃあお弁当を作ってきてくれたお礼をしなくちゃ。
こんな機会はめったにない。せっかくのピクニックっぽくなったんだから、なんとかして翡翠に笑ってもらうとしよう———
 
「それでさ、全学年で一番人気があったクラスは後夜祭で表彰されるんだ。キャンプファイヤーを前にして、こう校長先生さまからメダルをかけてもらう。それで何がどうなるとかってワケじゃないんだけどね、なんか嬉しいというかなんていうか。
なんていうのかな、一ヶ月もお祭りの準備をして、それが二日だけで終わっちゃうだろ?その最後の締めとして、一番優れていたクラスの代表がメダルを貰う。貰ったクラスも、それを悔しげに眺めているクラスも同じぐらい嬉しいんだ。夜になって、ごうごうと燃えている火に照らされて、ああもう終ったんだなあってみんな一緒に肩を休める疲労感っていうか……」
 うう、やっぱりあの感覚はうまく言えない。
「っと、ごめん。意味不明だよな、いまの話」
後夜祭とはなんですか?という翡翠の問いに、つい長話で答えてしまった。
去年の後夜祭を思い出しながら、ただ感想だけを語っていたのだから話が通じる筈がない。
「……うー、面目ない。つまらない話をしちまった」
ぽりぽりと頬をかく。
そんな俺を翡翠は優しげな目で見つめていた。
「そんな事はありません。志貴さまの伝えたい事はよく伝わりましたから」
ニコリ、と柔らかく笑う翡翠。
「—————」
……うう。翡翠を笑わせようとしたくせに、いざこういう風に笑いかけられると顔が真っ赤になってしまう。
「そ、それじゃそろそろごはんにしようか! 天気がいいんでつい日向ぼっこに興じちゃったな」
「はい。どうぞ、お召しあがりください」
ぱかり、とお弁当のフタが開けられる。

「サンドウイッチだね。重箱だからてっきりごはん物だと思った」
「………………………」
「あ、違う違う! 別にごはんが良かったわけじゃないぞ! うん、好きだなサンドウィッチ! 食べやすいし、ピクニックっていったらやっぱりこれだろ!」
「……はい。わたしもそう思いまして、今日はサンドウィッチにしてみました」
少し恥ずかしそうにお弁当を見つめる翡翠。
———ふう、危ない危ない。翡翠にとって最もコンプレックスになっているのが料理なんだから、言動には細心の注意を払わなければっ。
「へえ、なんかキレイだね。色鮮やかっていうか、美味しそうっていうか。とくに左側なんて職人さんが作ったみたいだ」
「…………………」
おべっかでもなんでもなくて、サンドウィッチは美味しそうだった。
ごはん物に例えるなら右側のがメインで左側はおかずっていうコトなんだろうか?……サンドウィッチでそういう区分けをするのはどうかと思うけど、とくにかく左側のサンドウィッチは多種多様で素晴らしい。
外見からしてあれだけ美味しそうなサンドウィッチなんて、お店でも食べられそうにない。
「すごいな翡翠、これだけできればもう料理オンチなんて言われないぞ。とくに左側の、その鶏肉とレタスが挟まってるヤツなんて———」
「…………………志貴さま。申し上げにくいのですが、志貴さまから見て左側のランチは姉さんが作ったものです」
「—————ヤツなんて、まあよく見ればコンビニで売ってるのとあんまりかわらないか。は、大したコトないな琥珀さんも!」
「………………………………」
うう、視線が痛い………。
「……えっと、それじゃ右側のが翡翠が作ったヤツ?」
「はい。志貴さまが以前好物だと仰られていたもので調理してみたのです。……その、お口にあうかどうかは分かりませんが」
ちらっ、と期待に満ちた眼差しを向けてくる翡翠さん。
「っ………………」
その期待には応えたいんだけど、その……なんでそのサンドウィッチ、ことごとく血のように赤いんだろう……?
「……志貴さま? あの、お食べになられないのですか……?」
「——————ああ。それじゃあ、いただきます」
つい左側に伸びそうな指を全精神力を動員して右側にズラす。
ぴちゃ。
普通、乾いているはずのサンドウィッチのパンは、血のしたたる肉のように湿っていた。

「……………………………」
じーっ、と見つめてくる翡翠。
「—————————ぱくっ」
耐えきれずに食べた。ああ食べましたとも!
 
「—————————」
すっぱい。いや、そんな言葉で済ませられるすっぱさじゃない。
泣きたくなるような苦さ酸っぱさ歯ざわり食感。
こう、じわーと口内に広がって脳に直接あがってくるような酸っぱさは、もう間違いなく———

「翡翠。これ、梅?」
「そうですが、いけませんでしたか? 以前志貴さまが梅の雑炊が好きだと教えてくださいましたので、今日は贅沢に使ってみたのですが」
「———————」
ぜ、贅沢ってあなた、俺を殺す気なんですか。
そもそも梅は風味が好きなんであって、実際はあんまり好きじゃないんだよう……。
「志貴さま、あの……お気に召したでしょうか?」
「え、あ? あ、味ですか? 味は、うん、独創的」
もにゅもにゅと梅サンド、否ウメジゴクをなんとか食べきる。
「———はい、ありがとうございます!」
声を弾ませて喜ぶ翡翠。
普段クールな彼女がここまで喜ぶなんてよっぽど嬉しいんだろう。……これは、いよいよもって完食しなくてはならなくなってきた模様です。
「———えっと、翡翠も食べていいよ。俺一人じゃ食べきれないからさ」
「よろしいのですか? それでは姉さんが作ってくれた方をいただきますね」
「———いや、バランスよく食べよう。せっかく琥珀さんが作ってくれたんだから、二人できちんと分けないとね」
ていうか、ありがとう琥珀さん。これを見越して救急処置として作っておいてくれたんだね。
「……そうでした。姉さんが二人で食べなさいと言ってくれたのを失念してしまいました。……申し訳ありません志貴さま、なんだか嬉しくて気が回らなくなっているみたいです」
言って、ニコー、と華のような笑みを浮かべる翡翠。
……うう、なんて皮肉なんだ。翡翠がこんなに地を見せてくれる事なんて一年に一度あるかないかなのに、なんだってこんな責め苦を味わわなければいけないんだろう。
ああ、ごっとせーぶみー。
 で、翡翠の白い指が赤いサンドウィッチをつまむ。
なんとなくエロスだなあ、と眺めていると、翡翠は本当に美味しそうに梅サンドを食べてしまった。
「———ひ、翡翠!?」
「はい? なんでしょうか志貴さま」
「いや、なんでしょうかって、今————!」
今、梅サンドを食べたんだよな?
「?」
不思議そうに首をかしげる翡翠。
「えっと—————おいしい?」
「……はい。外見は不出来ですが、味は悪くないと思います」
頬を赤らめて言う翡翠。
「——————そうか、忘れてた」
そうだった。
包丁が使えないとか知識がないとか、そんな事は本当に些細な問題だったのだ。
翡翠は料理ベタなんじゃない。
もう、こればっかりは治しようがないってぐらいものすごい味オンチなんだ。
生まれつき味覚が俺たちとはちょっと違うんだから、翡翠が美味しいと感じるものは、つまり———
「志貴さま? どうぞ、遠慮なさらずにお食べになってください」
はい、とばかりに重箱を差し出してくる翡翠。
「は———————はは」
ああもう、逃げ場なんて何処にもないし! いいよ、やってやるよコンチクショー!
「————むっ。むぐ、もぐ、もぐもぐもぐ」
「志貴さま、そんな一度に二つもお口にいれるのは無作法ではないでしょうか……?」
「———うぐ。んぐぐ、んぐ」
翡翠の言葉に頷きつつ、一気に梅サンドと決着をつけるべくさらに三つ目を喉に流しこんだ。

———うう。なんか、気が遠くなってきたぁ……
 
□中庭
———そんなこんなでなんとか終わった。
 食後、翡翠と二人きりで日向ぼっこをしていたのだが、どこからかメイドさんがいるぞ!と聞きつけてきた先輩たちによって冷やかされ、翡翠と別れる事になってしまった。
……まあ、こっちもそろそろクラスに戻って手伝いをしなくちゃいけないし、翡翠も琥珀さんと待ち合わせをしているそうだから頃合と言えば頃合だ。
「屋敷に帰ったら、また」
と軽い別れを告げて、教室へと走り出した。
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