最近、ちょっと不思議だなと思うことがあるんだけど、「子どものころだれだれの作品に触れて、漫画家になろうと決めた」り、「思春期のころなんとかいうバンドを聞いて、雷に打たれたような気持ちになり音楽の道に入った」などの話って、けっこう多いもんなの?
自分にそういうのがなかったし、まわりにもいなかったんで今まで考えてもみなかったんだけど、世の中には案外あるもんなのかしら。
インタビューなどで訪ねて来る人がよく使う言葉のひとつに「きっかけ」というのがある。今はもう慣れてしまったが、この言葉がとても苦手だった。
「その人、その事があったからその後ざざざーっとそういうことが起こってきたわけなんざんす」というような、派手なものを期待されてるようだったからだ。もちろんそんなものを期待しているのは、自分で話を面白くまとめようという努力をしない、相手が「そのまんま使える」ものを差し出してくれると思ってる怠け者のインタビュアーだけなんだけど、まあ、いるんだ、そういう人も。で、そういう人はもちろん自分を怠け者とは知らないので、私が「使える話」をしないと機嫌が悪くなっちゃうのよね。怠け者のくせに、自分のこと「忙しい人」だと思ってるからさ。
でも、そういう人たちともたくさん会わないと、その中にたまに隠れてる、出会えてうれしい人に会える確率が下がってきちゃう。だから会う。そのうち、そういう人たちとの話し方もだんだんわかってきた。そう考えてみれば、「私はなになにに出会って衝撃を受け、こうなりました」ということとかにしとくと、とっても便利かもしれない。うーむ、なるほどね。
バンドでは「きっかけ」と言うとき「ドラムのこのフレーズきっかけにしてエンディングね」というようなつかい方をする。そっちの「きっかけ」の意味はとってもよく把握してる私なんだけどねー。