日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

旅路07

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    7上野駅の待合室で、午後五時三十分、会おうと言った伊東栄吉は遂に来なかった。列車が動きだし、雄一郎は心残りと腹立
(单词翻译:双击或拖选)
    7

上野駅の待合室で、午後五時三十分、会おうと言った伊東栄吉は遂に来なかった。
列車が動きだし、雄一郎は心残りと腹立たしさで、遠ざかって行く東京の灯をみつめた。
雄一郎は、東京で伊東に逢ったことは姉は勿論、妹の千枝にも話さなかった。
尾鷲で、伯父夫婦に無理矢理、見合をさせられた話をすると、
「折角伯父さんがお世話してくださったのに、もっと真面目にやらなくては駄目でないの……」
はる子は、まるで自分が見合に失敗したように残念がった。
十日間の休暇が終ると、雄一郎には、又、鉄道員としての忙しい明けくれが戻ってきた。
朝の八時に出勤すると、翌朝の八時まで、びっしり二十四時間の勤務である。
そして——。
宿直室の窓に、雪のちらつく夜が次第に多くなって行った。
北海道に、今年も又、冬将軍の訪れる季節が来たのである。
南部駅長の孫娘、三千代の結婚式は明治節の日に東京で行なわれ、小樽からは、祖母の節子が上京し、出席したという噂《うわさ》が雄一郎の耳にも風のたよりに伝わって来た。
三千代の結婚の話を、雄一郎は自分でも意外なくらい平静で聞けた。
諦めというのではなく、今の雄一郎にとって、三千代は遥《はる》か遠い存在であり、彼女への初恋も、もはや過去の出来事になってしまっていた。
そんな或る日、千枝が一通の封書を持ってやって来た。
「兄ちゃん、オワシの伯父さんからだよ」
「馬鹿だな、尾鷲と書いてオワセと読むんだ」
手紙は、昔気質の伯父らしく、巻紙に毛筆で認めてあった。
「伯父さんから、何んと言って来なすったの……」
炊事場に居たはる子もとんで来て、手紙をのぞき込んだ。
「まあ……中里さんが小樽へ来なさるんじゃないの」
はる子が思わず声をあげた。
「姉ちゃん、中里さんて誰アれ?」
「ほら、このあいだ雄ちゃんがお見合した……」
「ああ、あの人……」
が、千枝は首をかしげた。
「だって、あの縁談、駄目だったって言ってたじゃないの。なんで、それなのに小樽へ来るのよ」
「先様で、もう一度雄ちゃんと会ってみたいっておっしゃるんだって……」
「じゃ、そのお嬢さん、余っ程、兄ちゃんに惚《ほ》れちゃったんだね」
千枝の眼が好奇心で輝きを増してきた。
「振られても振られても、離れないなんて……まるでスッポンみたいなお嬢さんだね」
「馬鹿……」
「えへ……、兄ちゃん、ぐっといい男ぶっちゃってる……」
「馬鹿……」
千枝は亀の子のように首をすくめると、ペロリと舌を出した。
「この浦辺さんていうかたは?」
「ああ、尾鷲の村会議員とかいっていた。もともと網元の家でね、同業だから伯父さんとも親しいし……中里さんとも商売かなにかで関係があるらしい……。村会議員なんてのは、そんな世話ばかりやいて歩いてるもんじゃないのかい。中里さんが小樽へ来るっていうの、おそらく、その人あたりのお膳立てだよ」
「そうかしら……、でも、やっぱり向うさんが雄ちゃんを気に入ったからじゃないの、そうでもなけりゃ、わざわざ北海道くんだりまで出向いていらっしゃるかしら……」
「どうせ、暇だから、北海道でも見物してやろうっていうのか、浦辺さんの顔を立てなきゃならない義理があるんじゃないのかな……」
「あんなこと言って、内心、うれしくってわくわくしているくせに……」
千枝が悪戯《いたずら》っぽい眼をして言った。
「馬鹿……」
「ほうれ、赤くなった……」
「こらッ」
雄一郎が撲《なぐ》る真似をして腰を浮かすと、千枝はまるくなって土間へ逃げた。
「止めなさい、雄ちゃん……、千枝も……」
しかし、はる子は手紙のことが気になってならないらしかった。
「近いうちにって書いてあるけれど、もし、年内にいらっしゃるんだったら、雄ちゃん、着物と羽織新調しとかんと……」
「いいよ、そんなの……」
雄一郎は面倒くさそうに言った。
「そうはいかないわ……、それにこの家、もう少しなんとかせんとね……」
「こんなボロ家見たら、兄ちゃんの縁談あかんようになるかのう」
千枝が不安そうな声を出した。
「うるさいな、家だの着物だの、どうだっていいだろう……とにかく、俺は絶対に結婚なんかしないよ……真ッ平ごめんだ……」
雄一郎は肩をそびやかした。
雄一郎の気持は複雑だった。
見合の相手の中里弘子には、別にどうという感情もなかったが、彼女の妹の有里を想うとき、心にほのかな揺めきが湧《わ》いた。
なにを馬鹿な、と自分で自分を叱《しか》りつけながら、雄一郎は、あの竹林での、あまりに鮮烈な有里の印象を忘れかねた。
しかし、そんなこととは知らないはる子は、弟の縁談にすっかり夢中になっていた。
人一倍気の回るはる子は、その晩、手宮《てみや》の南部斉五郎の官舎を訪ね、伯父からの手紙を見せて相談した。
「まとまるものなら、なんとしても纏《まと》めてやりたいと思うのですが、なにしろ、こんなこと生れてはじめてなもんですから……」
はる子は正直に自分の気持を打ちあけた。
「ふーん、しかし、それでわざわざ、小樽まで出てくるというのは解せんなあ……」
話を聞き終ると、南部は首をひねった。
「雄一郎は、この浦辺というお方に、中里さんが何か義理があって、それで一応|恰好《かつこう》をつける意味で北海道まで出向いてくるのだと申すんですけれど……」
「或はそうかも知れん……」
まるい顎《あご》を撫《な》でながら、天井を見上げた。
「でも、その弘子さんてかたが、お見合のとき気のり薄に見えたっていうの、雄一郎さんの誤解だったんじゃありませんか。女ってものは、お見合の時なんぞに、なかなか本当の気持を表に見せないものですよ。まして深窓育ちのお方でしたらねえ……」
南部の妻の節子が、そばから口をはさんだ。
「そうか、女ってのは嘘《うそ》つきだからな……」
「いいえ、慎しみ深いからですよ、第一、はじめてのお見合なら、恥かしくって、顔も上げられないものですわ」
「なにを言っとる。見合の席で洋食ぱくぱく食いやがって、テーブルのかげで帯をゆるめてやがったの、どこのどいつだ……」
「あら、知ってらしったんですか」
「当り前さ、伊達《だて》や粋狂で見合したわけじゃないわい」
二人のやりとりを、はる子は半ば羨《うらや》ましいと思いながら眺めていた。
南部駅長の坐っている場所に、伊東栄吉が坐り、南部夫人の所に自分が居たら……。
(ああ、そんなことは考えないことだ……私には、まだまだそんなことは許されない。結婚することだけが女の仕合せではないのだ……)
はる子はいそいで、妄想《もうそう》を振りはらった。
「失礼だけど、御器量は……?」
節子がこちらを向いて何か言っていた。
「は……?」
「そのかた、お綺麗《きれい》なの?」
「雄一郎は、美人だって申しましたけれど……」
「あいつに女の器量なんぞわかるものか。女ならみんな美人に見える年頃だ……。とにかく、その人が来たら、わしが一遍会ってみよう。顔を見りゃ、大抵《たいてい》のことは見当がつく。これでも無駄には年はとっとらんつもりじゃよ」
「お願い致します」
はる子は両手をついた。
「それと……はなはだ勝手なお願いなんですけど、駅長さんがご覧になって、もし、よいお嬢さんだったら、なんとしても雄一郎のところへ来て頂けるよう、駅長さんからお口添え願いたいのですけれど……」
「いいとも、及ばずながら尽力しよう」
南部は大きく顎を引いた。
「有難うございます……なんですか、雄一郎の話を聞いたときからこっちがわくわくしてしまって、仕事もろくに手がつきませんの。これでほっとしました」
はる子はあらためて礼を述べて、座を立った。
南部は玄関先まで見送って来たが、ふっと声をひそめて、
「はる子さん、あんた雄一郎君の縁談に夢中になるのはいいが、あんた自身のことも考えにゃいかんよ」
と言った。
「この次来るときは、あんた自身のことで相談に来なさい。尾鷲《おわせ》にゃ、生憎知りあいもないが、東京にはいくらでも居る……、もしあんたの相手が東京に居る人間なら、たぶん、なんか役に立てると思うでな……」
はる子は思わず南部の顔を見た。
(駅長さんは、栄吉さんのことを……)
恥らいが、はる子の頬《ほお》を赤くした。
「じゃ、おやすみ、気をつけてな……」
南部の微笑に送られて、はる子は門を出た。
外に出たとたん、何か冷めたいものが頬に当った。朝からの曇り空が、とうとう雪を降らせはじめたのだろう。
しかし、はる子の胸には、南部斉五郎の慈父のような言葉の数々が染みていて、まるで春の陽《ひ》を浴びてきたように暖かかった。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%