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旅路11

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    11室伏雄一郎は二日間の休みをもらった。それに夜勤あけの休日を加えると、どうにか丸三日間が休める。これも、売店を休
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    11

室伏雄一郎は二日間の休みをもらった。
それに夜勤あけの休日を加えると、どうにか丸三日間が休める。
これも、売店を休んだ千枝と二人、早朝に小樽を発った。函館まで、中里家の一行を出迎えるためである。
(なにもわざわざ、函館まで出迎えさせることはないじゃないか……)
夜勤あけの疲れも手伝って、雄一郎は機嫌が悪かった。
「変な人ねえ、自分の嫁さんになるかもしれん人を迎えに行くのに、ぐうすけ眠ってばっかりいるなんて……」
千枝が首をかしげた。
「ねえ、弁当食べなよ、お茶もあるからさ……」
「うるさい、夜勤あけは眠いんだ、すこし静かにしておれ」
千枝を怒鳴りつけて、眼をつぶった。
雄一郎は、うつらうつらしながら、あの竹林で見た娘のことを思い出していた。
こちらをふり向いて、ちょっと、はにかんだように笑ったその顔がどうしても忘れられない。それだけに、彼は余計腹がたって仕方がなかった。
しかし、雄一郎は知らなかった。自分がこれから出迎える中里家の一行の中に、その面影の人、有里が加わっていようとは。
有里は無論、雄一郎のほのかな慕情を知らず、雄一郎は、又、有里がひそかに好意を持っていようとは夢にも思わなかった。
ただ、この日、運命の神は、しずかに二人を近づけつつあったのだ。
雄一郎が汽車で函館へ向っている頃、有里は青函《せいかん》連絡船の甲板から、じっと海をみていた。
北の国の海は、冬の陽《ひ》の中で、灰色に小さなうねりをみせていた。尾鷲の温い南の海にくらべると、きりっと引き締り、なんとなく男性的な感じがする。有里は北海道に近づくにつれて、次第に胸がときめいてきた。
「あの子変ねえ、だんだん元気になるみたい……」
「本当に落着きのない子だねえ、いくつになっても子供が遠足に行くような調子なんだから……」
船室では、みちと弘子が笑っていた。
「さっき甲板へ行ってみたら、あの子ったらあまり品のよくない若い女の背中をさすっているのよ、どうしたのかと思って聞いてみたら、悪阻《つわり》の介抱なんですって……」
「おやおや……」
みちが眉《まゆ》をひそめた。
「そんなことをして、もし、そんな女に引っかかりでも出来てしまったら、いったいどうする気なんだろうねえ」
「人がよすぎるのよ、いまにそれできっと失敗すると思うわ、世の中は善人ばかりが住んでいるんじゃないんだから」
「もう少し、身分てものを考えなくちゃねえ」
「そうなのよ。有里ったらねえ、私があの方と一緒になればいいと本気で思っているらしいのよ。どうかと思うわ」
「馬鹿馬鹿しい……」
みちは、吐き捨てるように言った。
「世間には裏と表ってものがあることを、さっぱり分っていないんだよ。浦辺なんて成り上り者の機嫌を取らなきゃならないなんて、尾鷲の中里も随分落ち目になったもんだよ」
「みんな兄さんがだらしがないせいよ」
弘子は眉をしかめた。
「あんな、まだ下っ端の鉄道員風情と見合をすること自体、妹の経歴に傷がつくってことがどうして分らないのかね。すこしは体面ってものも考えてもらわないと……」
「私はいいのよ、お母さま、何事も勉強だと思っていますもの、そういう意味では面白いかた、あの室伏雄一郎という人……」
「変人だよ、すこし……」
母と娘は顔を見合せて、思わず笑いを噛《か》みころした。
「ね、お姉さま、函館よ、もうすぐ上陸よ」
有里が息をはずませて報告した。
船の汽笛が鳴った。
青函連絡船、松前丸は次第に速度をおとして、函館駅連絡桟橋へ近づいて行った。
「あっ、来たよ、兄ちゃん」
のびあがって沖をみつめていた千枝が、船を指さして叫んだ。
「大きな船だねえ……」
「うん……」
「あれで何人くらい乗れるのかな」
「さあ……」
「兄ちゃん、浮かん顔しとるね……」
千枝が心配そうに、雄一郎の顔をのぞきこんだ。
「ほんとに嬉《うれ》しくないの、お嫁さん来るっていうのに……」
「俺《おれ》は……」
雄一郎は松前丸をにらんだまま言った。
「結婚なんかしないよ」
「どうして……だって、むこうさんはそのつもりで来るんでしょう」
「分るもんか……」
「兄ちゃん、弘子さんて人、好きじゃないの?」
「ああ、好かん……」
「へえ……」
千枝は眼をまるくした。
「じゃ、わざわざ振られにくるようなもんじゃないか……」
が、途中から不安そうな顔になった。
「でも……、断ったら義理が悪いんじゃないのかい、尾鷲の伯父さんやなんかに……」
「まあな……しかし、自分の一生のことを義理やなんぞできめられてたまるものか」
雄一郎はきっぱりと言いきった。
「俺は愛のない結婚など、絶対にしないぞ」
「へえー、兄ちゃんて、案外しっかりしてるんだね」
「馬鹿ア……」
妹に揶揄《からか》われて、雄一郎は照れた。
松前丸が、ゆっくりと桟橋に横づけになった。
「兄ちゃん、中里さんに逢ったらどうするの?」
「三十六分待ちで、函館本線の下りが発車するからな」
「まっすぐ、家へ来てもらうの」
「うん、中里さんだってそのつもりだろう」
桟橋では職員たちが、忙しそうに走り回っていた。
舷梯《タラツプ》から、大きなトランクや信玄袋をぶらさげた乗客たちが、ぞろぞろと降りて来た。
雄一郎は、伸び上がって、みちと弘子の姿を探した。
「兄ちゃん、判る?」
千枝も雄一郎のうしろから首を伸ばして、話にだけ聞いたことのある、二人の顔を見つけようと一生懸命だった。
誰か東京の名士がこの船に乗っていたらしく、日の丸の小旗を持った人々が大勢つめかけていた。やはり出迎えに駆り出されて来たらしい中学生の楽隊が、たどたどしい行進曲《マーチ》を演奏している。
その間を、接続列車に乗ろうとする人々があたふたと駈《か》け抜けて行った。
「兄ちゃん、居ないの?」
千枝が心細そうな声を出した。
「待て待て、そう慌てんでも、いまにきっと来る、どうせここを通らなければ、外へ出られんのだ……」
雄一郎の言った通り、人と人の間に挟《はさ》まれて、よたよたとこちらへやってくるみちの姿を見つけるのに、そう時間はかからなかった。
「中里さん、遠いところをわざわざおいでいただいて恐縮です」
雄一郎はみちの前へ出て、制帽を脱いで挨拶《あいさつ》した。みちのうしろに弘子が居た。
「こんにちは、よくいらっしゃいました」
彼は弘子にも頭を下げた。
「これはまあ、室伏さん、お迎えごくろうさま……」
みちが鷹揚《おうよう》に、それでもさすがにほっとしたように言った。
「これ、妹の千枝です」
雄一郎は千枝を二人に紹介した。
「こんにちは、遠いところをよくおいでくださいました。さぞかし、お疲れだったでしょう」
千枝は昨夜姉に教えてもらった言葉を、下手な役者の台詞廻《せりふまわ》しのように、一語一語、確かめるようにして言った。
「本来ならば、姉もお出迎えに参るところなのですが、いろいろ用事がありますもので……」
雄一郎も一応、神妙に口上を陳《の》べた。
「荷物を持ちましょう……」
千枝がみちと弘子の持っている旅行|鞄《かばん》を見て、ちょっと首をかしげた。
「あら、荷物これだけですか?」
「いいえネ、大きいのはあとから……」
みちがうしろを振りかえった。
その視線を追って、雄一郎は、一瞬全身の血が逆流したかと思うような、激しい衝撃を感じた。
有里……だった。
雄一郎は、それを有里だと認めた瞬間から、有里以外の物も音も、すべてを意識の外へ消してしまった。
雄一郎には有里以外のものはなにも見えなかった。また、聞えなかった。時の流れも忘れてしまった。
二度と逢えないものと、半ば諦めていたのだ。現実の女性《ひと》ではないのだと、自分に言いきかせていたのだ。
喜びは静かに、そして大きく、胸の底から、まるで津波のように全身に打ち寄せて来た。
しかし、それが喜びだと気がつくまでには、それから多少の時間の経過が必要だった。
有里は……。
有里は、やはり立ちどまって、雄一郎をみつめていた。
あの、竹の林で見た時と同じように、頬《ほお》にかすかな恥らいが浮かんでいる。だが、紫色の道行を着た彼女は、この前、紺の絣《かすり》に赤い帯をしめていたときにくらべると、ずっと大人びて見えた。
「こんにちは……」
雄一郎は、有里の声をはじめて聞いた。
それは彼が想像していたよりも、もっと、ずっと素直でやさしい声であった。
「こんにちは……よくいらっしゃいました……」
雄一郎は、本当の気持とはうらはらに、極めて平凡な挨拶しかしなかった。
こういう時、どうすればいいのかを、雄一郎は知らなかったのだ。
でも、そんな簡単な言葉の中で、雄一郎も有里も、お互に好意を寄せ合っていることを、素早く感じとっていた。
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