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旅路36

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    36はじめのうちこそ、奈津子は眼ばかりギョロギョロさせた痩《や》せた子だったが、有里の丹精の甲斐《かい》あってか、
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    36

はじめのうちこそ、奈津子は眼ばかりギョロギョロさせた痩《や》せた子だったが、有里の丹精の甲斐《かい》あってか、此頃では、まるまるとよく肥り、智慧《ちえ》も普通の子供以上に進んできた。
マンマから始まり、おかあちゃん、おとうちゃん、姉《ね》ンネなどと片言で話す言葉も可愛らしい。
最近、誰が教えたのかしらないが、
※[#歌記号]親の因果が子に報い
今じゃしがない切符きり……
という歌を覚え、まわらぬ舌で何遍でも繰返す。
どうせ、雄一郎か千枝が教えたものだろうが、有里がもっと子供らしい、可愛い歌を教えてやっても、どういうわけか、※[#歌記号]親の因果が子にむくい……とうたっている。
それを雄一郎が横眼で眺めては、嬉《うれ》しそうに笑っていた。
「よし、今に奈っちんは女車掌に仕立ててやるか……」
「あなた、東京の市電にはほんとうに女の車掌さんが居るんですよ」
「大阪の乗合自動車の車掌も女だそうだな」
そんな冗談の中にも、二人は奈津子の将来への夢を育てていたのだった。
奈津子は最早、この家にとって、なくてはならない存在になっていた。
千枝と良平の事件があって、およそひと月ほどたったある日の夕方、室伏の家の門口に一人の女が立った。
「ごめんくださいまし……」
服装といい髪かたちといい、一見して東京風のモダンなものだった。
千枝はちょうど井戸端で奈津子の相手をしていた。
「はい……」
奈津子の手を引いて近寄った。
「あの、奥さまは御在宅でしょうか……」
「奥さま……?」
「ええ、室伏有里……とおっしゃるかたです……」
「ああ、お姉さんなら買いものに行っとるよ」
「そうですか……」
女はふと奈津子に眼をとめた。
「あなた、奈津子ちゃん……?」
「うん……」
奈津子が頷《うなず》いたのと、女が奈津子にとびついたのと同時だった。
「奈津子……奈津子……逢いたかった……」
しっかり奈津子を胸に抱きしめ、頬《ほお》ずりした。
千枝は茫然《ぼうぜん》と二人を見つめるばかりだった。
買物に出かけた有里と雄一郎が戻って来たのは、それからおよそ一時間くらいたってからである。
有里が戸を開けるやいなや、待ちかねていた千枝が顔色を変えてとび出して来た。
「お姉さん、大変よ……」
「どうしたの、いったい……」
「奈っちゃんがね、さらわれちゃうよ」
「ええッ……」
そういえば、土間に見なれぬ女物の草履《ぞうり》が揃《そろ》えてある。
「千枝、どういう意味だ、それ……」
雄一郎も驚いて走り寄った。
「変な女の人がやって来てね、急に私が奈っちゃんの本当の母親だって言いだしたんだよ……」
その言葉が終らぬうちに、有里は茶の間に駈《か》け上った。
部屋の隅に、荷物が置いてある。
隣室から、障子越しに女の声が聞えた。
「ほら、ね、こんなかわいいお人形……これはクマさんよ……これは奈っちゃんのお洋服……赤い帽子好きでしょう……みんな奈っちゃんのよ……」
一生懸命、奈津子の機嫌をとっている様子だった。
有里は我を忘れて障子を開けた。
「奈津子……」
「お母アちゃん……」
奈津子が嬉しそうに抱きついて来た。
「奈津子……」
有里はしっかりと奈津子を抱きしめた。
「ごぶさた致しまして……何から申しあげてよいやらわかりません……いろいろ有難うございました」
女が両手をついた。
「あ、あなたは……」
有里は息をつめた。
女は奈津子の生みの母親、瀬木千代子だった。
「ほんとうに、何んとお詫《わ》びしてよいやら……何からお話してよいやら……」
千代子は奈津子の前では話しにくそうだった。
うしろに立っていた雄一郎が、すぐそれと気づいて、千枝を呼んだ。
「千枝、ちょっとの間、奈津子と遊んでやってくれ……」
「うん……さ、行こう奈っちゃん」
千枝は奈津子を、千代子の視線からわざと隠すようにして出て行った。
それを待っていたように、千代子は口をひらいた。
「ほんとに申しわけないことをいたしましたが……一年前の私は、あの子をああするより、仕方がなかったのでございます……。内地から、主人のあとを追って北海道へ参りまして、ようやく奈津子を生んだとたん、主人は酔った揚句の喧嘩《けんか》で命を落してしまいました。お金は無し……知らぬ土地で乳呑児《ちのみご》を抱え、どうすることも出来ませんでした……実際、何度あの子と一緒に死のうとしたかしれやしません……。あのままでは、奈津子と一緒に海へとび込むか、飢《う》え死にするか、おたく様の前へあの子を捨てるかするよりほかに、途がなかったのでございます……」
千代子は眼に涙を浮かべていた。
「奥様のお人柄はよく存じあげておりましたし、偶然、こちらでお目に掛ったとき、鉄道へお勤めの御主人様とお仕合せにお暮しの御様子をお聞きしました……。奥様ならきっと奈津子を不愍《ふびん》に思い、お預り下さると……勝手な考えではございましたが……申しわけございません……でも……奥さまは、やっぱり奈津子をお預り下さいました。あんなに大きく、丈夫な子にお育て下さいました……私、なんといってお礼申しあげたらよいか……」
「ちょっと、お待ちください……」
雄一郎が割り切れない表情で言った。
「奥さんは、奈津子を引き取りに来られたんですか……?」
「……私、あれから内地へ戻りまして……散々、苦労致しました。お話しするのもお恥しいほどの、どん底の暮しをして参りました。でも……、今年になって……働いておりますお店のお客様と所帯を持つというようなことになりまして……どうやら、人並な暮しが出来るようになりました……。それで奈津子のことを相談してみましたところ、快く承知してくれましたものですから、もう、とび立つ思いで参ったのでございます……」
千代子は懐中から金包らしいものを出した。有里と雄一郎の前に置いた。
「これは、今まで奈津子を養育してくだすったお礼といっては、ほんの僅《わず》かでございますが、あの子のお乳代と思って、どうかお収め下さいまし……」
有里は、なんとも情ない、やりきれない気持になった。雄一郎もまったく同じ気持になったらしく、
「いや、これは頂けません……」
いつもより荒い語気で言った。
「奥さん、僕らは養育費が欲しくて、奈津子を育てて来たんではない……、捨てられたあの子が不愍で、ただ無我夢中で育てて来たんです……。まだ乳離れもしない子を、不意に拾って、一年数か月……有里がどんなに苦労してあの子を育てて来たか……」
雄一郎は千代子に強い視線をあびせた。
「毎日、乳もらいに歩き回り、牛乳をのませ、夜もろくろく眠らんとおむつを取りかえ、布団をかけてやり……これはね、奥さん、もう他人《ひと》の子ではない、我が子です。我が子と思わんかったら、誰が育てられるものですか……」
「判ります……それはよく判りますが……」
「わかっとりません……奥さんには我々のこの気持がわかるもんですか……」
「では……奈津子をお返し下さらないとおっしゃるのでしょうか……」
千代子の眼に狼狽《ろうばい》の色が浮かんだ。
「いや、そんなことは出来ません……、いくら私たちが我が子同様に育てたからって、あの子の生みの親は間違いなく奥さんなんですから……、奥さんが返せといったら、返さないわけにはいきません……」
「すみません。本当に、なんと……なんと、お詫《わ》び申し上げたら……」
千代子が崩れるように前へ手をついた。
有里はたまりかねて、両手で顔を覆い、台所へ立った。
雄一郎は沈痛の面持で腕を組み、太い溜息《ためいき》をもらした。
奈津子の将来を想えば、生みの母親が育てるにこしたことはない。しかし、この一年余の歳月、奈津子の母親は有里であった。
(そのことを、いったいどうしてくれるのだ……)
と雄一郎は開き直りたい気持だった。
もう一つ、奈津子が千代子になついて行くかどうかだった。
雄一郎の同意を得て、千代子はおよそ二時間近くもかかって、幼い奈津子に言いきかせた。
「お前の本当のお母さんは私なのよ……、ここの家のお父さん、お母さんは本当は赤の他人なのよ……」
その声を台所で聞いている有里の心の痛みも知らぬげに、ただ、ひたすらに言いきかせていた。
やはり台所で様子をうかがっていた千枝は、口惜しそうに唇《くちびる》を噛《か》んだ。
「あんまりだよ……勝手すぎるよ……。邪魔な時は捨てちまったくせに……、今頃になって取り返しに来るなんてあんまりだ。奈っちゃんだって可哀そうじゃないか……昨日までは、ここの家の子だと思って安心して暮していたのに、急に変な女がやって来て、お前のお母さんは私なんだよだなんて……」
「千枝さん……いいのよ、このほうが先へ行けば奈っちゃんのためなんだから……」
「お姉さん……何んとか言っておやりよ……」
千枝は眼に涙をいっぱいためていた。
「いいのよ……」
有里の眼にも、新しい涙が溢《あふ》れだした。
「なんていったって生みの親なんですもの……、本当のお母さんの許で育つのが、いちばん仕合せなのよ……」
「生みの子を捨てるような人が、お母さんだなんて言えた義理ですか……そんな資格なんかありゃあしませんよ……」
「千枝さん……もう、言わないで……」
有里は両手で耳をおおい、うずくまった。
「お願いだから、言わないで……」
やがて、奥の部屋から、すっかり洋服を着換えさせ、人形を持たせた奈津子を抱いて千代子が現れた。
奈津子は、そこに雄一郎が立っているのを見つけると、彼にいきなりしがみついた。
雄一郎は奈津子を肩車にして、そのまま黙って歩き出した。
奈津子はわけがわからないまま、新しい服を着、美しい人形を抱き、そして悲しい顔をして、住みなれた家をあとにした。
雄一郎は駅まで送って行った。
千代子は、戸口の蔭でそっと見送っている有里と千枝に、叮嚀《ていねい》に頭を下げ、ずんずん先に行く雄一郎を追って行った。
奈津子の姿が見えなくなると、有里はいきなり家へ駈け込んだ。
すこし遅れて、千枝が家へ這入ってみると、有里は脱ぎ捨てられた奈津子の古い着物を顔に押し当てて、声もなく泣いていた。
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