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旅路51

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    12雨の後には晴れ間がのぞく。良平と千枝の駆け落ち事件のあと、良平は鉄道の寮へはいり、雄一郎の小樽の車掌区から釧路
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    12

雨の後には晴れ間がのぞく。
良平と千枝の駆け落ち事件のあと、良平は鉄道の寮へはいり、雄一郎の小樽の車掌区から釧路へ転勤する辞令も出て、いよいよこの月の半ばには釧路の官舎へ移転が本決りとなった。
官舎は家賃が要《い》らないと知って、なんだか有里はホッとした。その余分を質屋へ入れてある簪《かんざし》の利息に回せばよい。
あれから公一は何とも言ってこないが、そろそろ期限のきれる頃だった。
しかし、何といっても室伏一家を明るい喜びで包んだのは、二年ぶりのはる子の帰郷だった。
北海道の九月は稲刈りの真盛《まつさか》りである。
そろそろ山では紅葉がはじまっていた。
はる子からは前もって手紙でしらせて来てはいたのだが、駆け落ち事件、転勤と次から次とあわただしかったので、ついはる子のことを忘れていた。
それだけに、はる子の顔を見たときの驚きと喜びは大きかった。
「電報うってくれたら迎えに行ったのに……」
と雄一郎が言うのへ、
「自分の家へ帰るのに迎えもなにもあるものですか、チッキは塩谷の駅どめにしてあるから、雄ちゃんあとで取りに行って来てね……。あんた少しふとったかしら……有里さんはちょっと痩《や》せたようね……何かあったんじゃないの、駄目よ、奥さんに苦労かけては……」
相変らず、よく気のつく姉であった。
「別にそれほど苦労はかけてないよ……」
雄一郎は形勢危うしと見て、話題をかえた。
「姉さん、伊東さんと一緒に帰ってくるんじゃなかったのかい?」
「ほんとう、私もさっきから伺《うかが》ってみようと思っていたんだけれど……」
有里も怪訝《けげん》そうに言った。
「ええ……それがね、いよいよになって駄目になってしまったの……」
「なんで……?」
「鉄道省の尾形さんが突然病気でお倒れになってしまったのよ」
「まあ、尾形さんが……」
有里も雄一郎も思わず眼を瞠《みは》った。
「いつ……?」
「おとといの夜なの、脳溢血《のういつけつ》だったんですって……倒れた場所がお屋敷の中だったので、そのままそっとしておいたのが良くって、危険な状態はもう過ぎたのだけれど……やはり、まだね……」
「そりゃアそうだ……脳溢血というのは怖《こわ》いそうだからね。伊東さん、尾形さんのそばに……?」
「そうなの、栄吉さんは尾形さんにはご恩があるし、それに奥様がとっても栄吉さんを頼りにしていらっしゃるらしいので、あたしからもすすめて、今度は東京に残ってもらうようにして来たのよ」
「そうか……」
雄一郎は少しがっかりしたような声で言った。
「残念でしたわね……」
有里も思いは同じだった。
「折角、いい機会だったのに……」
「仕方がないわよ、そうするのが人間の道だもの……北海道は来ようとさえ思えば、いつだって来られるわ」
思ったより、気にしていない様子だった。
「ナナカマド、綺麗《きれい》ね……汽車の窓から見て、懐しかったわ……」
「今年はいつもの年よりキノコが沢山採れてね……稲も豊作らしいし……」
「そうね、分るわ、塩谷の駅から家まで来る途中、なんとなく活気があったわ……」
「これ、うちの畑でとれたんですよ」
有里が焼きたてのトウキビを、皿に山盛りにして持って来た。
「ウワー素敵ッ……」
はる子は歓声をあげた。
「懐しいわ……」
子供のようにはしゃぐはる子に、雄一郎と有里は顔を見合せて、思わずほほえんだ。
雄一郎の家がはる子を迎えて活気づいている頃、岡本新平の家では、新平老人がたった一人で夕食の仕度をしていた。
新平も良平も、まだ互いの意地を張り通しているらしかった。
南部斉五郎は、そうしたこじれにこじれた新平爺さんの気持をなんとか和らげて、良平と千枝の二人を仕合せにしてやりたいと念願していた。
南部がたずねた時、新平はのろのろした動作で食卓へ食器を運んでいるところだった。
南部はそれを見て暗い気持になった。
親と口論するのもいい、面白くなくて家をとび出すこともあるだろう。しかし、年老いた親をたった一人で放り出し、食事の仕度まで自分でさせて良いものだろうか……。
(良平の奴も、近頃どうかしとる……明日にでもとっ掴《つか》まえて、少し説教してやらにゃいかんな……)
取りなすつもりで来たのが、急に気が変って戻りかけると、
「おや、南部駅長さんじゃねえだか……」
新平がようやく気がついて、声をかけた。
「どうぞ上ってくだせえまし」
「いや、今日は止そう、また出直してくるよ、食事の仕度を続けなさい……」
「はあ、その積りじゃったが、釜《かま》のふたサあけてみたらばちゃんと飯がたけとるし、味噌汁《みそしる》も作ってある……魚のたき合せもある……みんなわしの留守中に作っておいてあったでよ……」
「良平君か……?」
「ああ、どうもそうらしいな……良平の来れんときは千枝さんが来とるらしい……こないだなんぞ、魚を煮るのにソースと醤油《しようゆ》サ間違えおって、妙な味のもん食わされました……」
「そうか、二人で来るのか……」
南部は腹をかかえて笑った。
笑いながら胸のつかえが落ちるのを感じた。
「わしに見つからんように苦労しとるようだで……わしもうっかり家へも帰られねえでよ……」
「そりゃアいいや、掃除も洗濯もその手かね」
「はあ……わしのやることは何んもねえっす……」
「なあ、新平さん……どうだ、ぼつぼつ俺に仲人《なこうど》させんかい……」
「駅長さん……」
「事情はよう分っとる。お前さんが反対する理由もわかるが……若い者のやることだ、いい加減に堪忍してやらんか……好きな者同志、一緒にしてやりなさい」
「駅長さん……あんたはどう思ってなさるか知らんが、わしは千枝ちゃんが気に入らんでこの縁談に文句サつけとるわけではないで……わしが腹立ててるのは、良平にしても室伏さんにしても、鉄道員としての心構えがなっとらんと思うからです」
「ほう……」
「室伏さんと三千代さんのことにしても、わしは最初から噂なんぞ本気にはしとらん……わしが怒っとるのは、そんだら噂を立てられる雄一郎さんに心の油断があったっちゅうことだべ。噂の種にされるのは、結局、本人に自覚が足らん、用心が足らん、慎重さが足らんのです。良平にしてからがそうじゃ……俺が反対しとるで、駆け落ちじゃ心中じゃと騒げば俺が折れると思ったという、そういう軽はずみなことしてて、大事なお客様の生命を預かり、機関車を走らせるなんてことが出来ると思いますか……」
「ウム……」
南部は思わず呻《うな》った。
無口な新平爺さんから、こんな筋の通った言葉を聞こうとは夢にも思わなかった。あらためて、新平を見直した。
「駅長さん、俺は室伏さんが好きだ……見所のある人だと思っとるで……又、良平の奴《やつ》もめんこい……めんこいで叱っとる。あんなことで南部の親父さんがいつも言うとる鉄道を背負って立つ男になれっと思うかね……それだで、俺は強情サ張っとる……」
「そうか、そうか……流石《さすが》だよ、新平爺さん……」
「なあに、年寄りの冷や水だでよ……こういう事ばっか言っとると、伜にも嫁にも憎がられるで……」
「それでいいんだよ、憎がられることが有難いんだ……わかったよ、新平さん……仲人はもっと先だな……」
「へえ……有難てえが、もうちっと先にお願えしますだ。どうか、もうちっと待ってやってけれ……」
「いいとも……しかしなんだよ、お前さんの気持は連中もうすうす感づいとるらしい……雄一郎の奴が言っとった、叱られたのは良平じゃなくて俺だとな……良平の奴は小樽の海岸へ行って毎晩座禅の真似事《まねごと》をやっとるそうだ……はて、いつ悟ることやら……」
「なにせ、一つのことに人様の五倍、十倍まわり道をせんならん男だで……」
「それがいいんだ。そういう奴が鉄道を動かす底力になる……みんな背のびして走って、転ぶ……転んで起きて行くのを、俺たちが見ててやらなきゃな……」
二人は顔を見合せ、頷き合った。
してきたことは違っていても、二人とも鉄道に生き、鉄道のことだけを一途に考えつづけてきた男たちだった。
口には出して説明しなくても、その眼の中に燃えているものは同じである。齢はとっても、体を流れる血はまだ熱かった。
彼らはある意味で鉄道の鬼である。世間には名も知られぬ、こうした何百人、何千人の鬼たちが日本の鉄道を守り育て、支えて来たのであった。
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