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旅路55

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    17引越しの日に感じた有里の不安は、しだいに現実となってあらわれはじめてきた。家の中がようやく落着くと、千枝は小樽
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    17

引越しの日に感じた有里の不安は、しだいに現実となってあらわれはじめてきた。
家の中がようやく落着くと、千枝は小樽の吉川機関手の家へ女房見習という名目で行ってしまい、有里は、雄一郎を送り出してしまったあとのガランとした家の中で、毎日少しずつ小物類の整理をしていた。
その日も有里は、夏物の衣類を入れた箱を棚の上に乗せようとしていると、突然、庭から岡井よし子が飛び込んできて、有里の手から箱を奪い取った。
「あれ、いけないよ、そったらことしたら……」
有里が口もきけないくらい驚いて、よし子をみつめていると、
「だめだよ、あんた、上へ手をあげたり、重いもの持ったりしたら……こういうのがお腹の子には一番悪いんだよ……」
まるで自分の娘にでも言うように叱《しか》った。
「なんで一言、声をかけてくれないのかねえ……隣同志ってのは、親類よりも力になるのが当り前なんだよ、こういう時はいつでもとんできてやるからさア、遠慮しては駄目だよ」
「すみません……」
有里は素直に頭を下げた。
あまり驚いたので、まだ胸の動悸《どうき》はしずまらないが、よし子のその気持は嬉《うれ》しかった。
気がつくと、座敷の真中に大きなまさかりかぼちゃが転がっている。
「ああ、そうそう……」
よし子がようやくかぼちゃを拾いあげた。
「まさかりかぼちゃ食うたことあっかね」
「ええ、北海道へ来て初めて……」
「そうだろうね、こりゃ、ここにしかないんだってさ……ま、今夜のお菜にしてちょうだいよ」
「ありがとうございます……でも、奥さんだってお買いになったんでしょう……」
さっき手紙を出しに行ったとき、よし子が行商の女からまさかりかぼちゃを買っているのを、有里は見て知っていた。
「そんなことどうだっていいのよ、黙ってもらっときなさいよ……」
かぼちゃを無理に有里に抱かせた。
それから、急に声を落して、
「お隣り何か言って来たかね……?」
重大な秘密を探ぐるような表情で言った。
「いいえ、何も……」
「そうかね……ま、あんたは何も知らんだろうが、桜川さんとこは変りもんだで、あんまり気をゆるさんほうがええよ」
「はア……」
有里は曖昧《あいまい》な返事をした。
岡井夫人と一緒になって、桜川夫人の悪口を言うほどまだよく彼女の事を識らなかったし、たとえ識っていたにしろ、人の悪口を言うのは好きではなかった。
よし子は有里が話に乗って来ないのが不満そうだった。
「あの人はねえ、小学校の先生をしていたくせに、自分の子供ってものは一人も持ったことが無かったんだからねえ……えらそうなこと言ったって、子供のことなんぞ、なんにもわかっちゃいないのさ。あれで、よく先生がつとまったもんさね」
「はア……今は学校の先生やっていらっしゃらないんですか?」
「ああ、若いうちだけで、もうとっくの昔にやめちまったんだよ……なにかというと、すぐ先生風を吹かしたがるけどさ、あんたも騙《だま》されるんじゃないよ」
「へえ」
有里がさも驚いたような顔つきをすると、よし子はようやく安心したのか、
「じゃ……また来るからね、なんでも困ったことがあったら言っとくれよ……」
人なつっこい笑顔を見せて、帰って行った。
(あんなに人のいい奥さんなのに、どうして桜川さんのこととなるとああなんだろう……)
有里はほどきかけの浴衣《ゆかた》を取りあげた。
ぼつぼつ古い浴衣を出してきて、おむつを作りはじめていた。
岡井夫人が帰って十分もたつかたたないころ、今度は桜川夫人が、やはり庭からそっとはいってきた。
「あらッ……」
そのタイミングの良さに、有里は唖然《あぜん》とした。
どうやら、岡井夫人の帰るのを見届けてやって来たものらしかった。
しかし、民子はそんなことはおくびにも出さず、
「いいお天気ですねえ……ご精が出ること……おしめですか」
静かに縁側へ腰をおろした。
「予定日はいつです?」
「四月の末だとか……」
「そう……そりゃ寒いときでなくてなによりですよ、ここらの寒さは、小樽などから見ると、又、一段としばれますからね……」
一人で頷《うなず》き、更に話をつづけた。
「あなた、いいねんねこをお作りなさいよ。なにしろこういう土地ですからね、子持ちのよそゆきはねんねこみたいなものでないとねえ……みんな上等の銘仙《めいせん》などをなおしてねんねこを作りますよ。あなたもお作りなさい……」
「はい、早速、用意します」
有里はねんねこの事はまだ考えていなかったので、桜川民子のこの話は有難かった。
忘れないように、しっかりと頭の中に刻みつけた。
「お産婆さんはどうなさるの……?」
民子が言った。
「あの……それは、お隣りの岡井さんで……」
「おや、駄目ですよ、岡井さんの知り合いの産婆さんなんぞ……あの人は根はいい人ですが、そそっかしくてね……私がとても上手な人を知っていますから、今度いっぺんお連れしましょう。こういうことは、早くからちゃんと段どりをしておかなくては、いざという時あわてますからねえ……」
「はア……」
有里は当惑しきっていた。
まさか二人の産婆さんにかかるわけにもいかないし、かといって、どちらを断ってもまずい。相手が好意で言ってくれているだけに、有里は返答に窮した。
「そうそう……お宅、石炭どうなさる……?」
「石炭……」
「ほら、冬の間、ストーブをお使いになるでしょう……もう、岡井さんにお頼みになった?」
「いえ、それは、まだ……」
「おやまあ、それはよかった……なんでしたら、うちと一緒に買いませんか、一貨車まとめて買うと、とても安くいい品物が手にはいりますよ」
「一貨車なんて、そんな……うちはたいして使いませんから……」
「いいえ、そうじゃないの、大勢で買うんですよ……宅が釧路管理局の運輸所長さんと親しくしていただいておりましてね、いつもまとめて一冬分買っているんですよ、よかったらお仲間にお入れしましょう。ほんとにお安いのよ」
このところ、物の値段にひどく敏感になっている有里は、一も二もなく、この話に飛びついた。
「ありがとうございます、是非お願い致します」
「それじゃ、早速、声をかけておきますよ……」
桜川夫人はすっかり上機嫌になっていた。
「なんでもおっしゃってくださいよ、何かあったら必ず声をかけてくださいね……」
「はい……」
「それから、あなたも普通の体ではないのだから、充分お気をつけなさいよ。冷えるのが一番いけません、座布団《ざぶとん》なぞ二、三枚重ねて敷くようになさいね」
「はい、そうします」
「岡井さんはやることが荒っぽいから、なるべく用心して傍《そば》へ行かないことです。さっきも、無理矢理かぼちゃを押しつけていなすったようだけれど、あんなことをしてもし流産したらどうするんでしょうねえ……ほんとに無神経というか乱暴というか……」
民子は有里が頷くのを見届けてから、ようやく腰をあげた。
「それじゃ又……」
来たときと同じように、もの静かな足どりで帰って行った。
桜川夫人を見送ってしまうと、急に疲れが出たようだった。
(だけど、ほんとにお産婆さん、どうしよう……)
有里はほっと溜息をついた。
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