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旅路62

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    24昭和四年元旦、岡本良平夫婦は、雄一郎たちに遅れること八か月余りで、女児の親となった。名前は雪子、ちょうど雪の季
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    24

昭和四年元旦、岡本良平夫婦は、雄一郎たちに遅れること八か月余りで、女児の親となった。
名前は雪子、ちょうど雪の季節に生れたからという、良平の命名であった。
この年の冬、釧路管内には事故が無かった。なにしろ、運輸所長の関根が、連日のようにモーターカーをとばして現場を視察して歩いているのだから、自然、現場もビリビリして、その結果が無事故の記録を作ったのだという噂《うわさ》を、雄一郎は満足して聞いた。
同時に、雄一郎の内にも猛烈なファイトが湧《わ》いて来た。
関根に負けてたまるかの根性である。彼も亦《また》、日々の勤務に全力をあげた。
張り切っているのは、岡本良平も同様であった。彼は目下、機関手の試験を受けるべく準備を重ねている。女房をもらい、一児の父となっては、彼も亦、大いに張り切らざるを得なかったのである。
そして、四月十五日、雄一郎と有里の間に生れた秀夫が、ぼつぼつ初誕生という頃、千葉では房総線の上総興津《かずさおきつ》、北条線の安房鴨川《あわかもがわ》間が開通し、房総半島一周の鉄道が完成した。
こうした他の管内の動きにも影響され、関根重彦はますます発奮して、北海道の鉄道の整備計画に熱中し、見回りにも力がこもって行った。
しかし、ともすると、これが現場から浮き上り、単なる自己満足で終ることもままあった。
例えば、ある日、こんなことがあったと、保線の人間から雄一郎は聞いた。
関根はよくモーターカーで管内を見回っていたが、線路工事などの現場にくると、必ず車をとめて、彼等の労をねぎらった。
「やあ、御苦労さんです……」
関根は気軽に現場長のところへ歩み寄る。
「どうですか、復旧の進行状態は……?」
「まあまあですよ、ここらは昔っから地盤の悪いところだで……」
「そう……根本的に路面調整をしなけりゃならんとは、僕も前から考えとったんだ、なんとか予算を貰って、早く実現に努力しましょう……どうかそれまでがんばってください……」
「はあ、そうなってくれるとわしらも助かりますよ……」
現場長も表面はひどく愛想《あいそう》がいい。
「ま、お茶でもどうですか」
「ありがとう……」
関根はそう言いながらも、素早くそばの男の手の怪我《けが》を発見する。
「おいッ君、その手の怪我はどうしたのかね……」
「へえ……」
「なあに、石でこすったんで……大したこたアねえです」
傍から現場長が口をはさんだ。
「しかし、血止めぐらいしといたほうがいいな……あ、ちょっと待てよ……」
関根は車に積んであったカバンから薬を取って来て、手早く手あてをしてやった。
「すんません……」
「どうだ痛まんかね」
「はあ……」
「今日はあまり無理せんようにな、明日という日が無いじゃなしさ……」
関根は愉快そうに笑う。自分のとった処置に満足なのである。事実、誰の眼から見ても、これは極めて善いことに違いない。
「さてと……邪魔をしてすまなかったな、じゃ、よろしく頼みます」
気軽に手をあげて、彼はモーターカーに乗って走り去った。
これで、彼は現場の人間とかなり密接な関係になり得たと思っていた。
ところが、彼の姿が消えてしまうと、
「ふん……小憎《こぞ》っ子《こ》が、きいたふうなことをぬかしやがる……」
現場長は不愉快そうに吐き捨てる。
「おい、仕事だ仕事だ、ぐずぐずするな、それんばかりのことで……保線は手の白いお殿様じゃねえんだぞ……」
それを聞いた保線係の人々も、おかしそうにドッと笑った。
この話を聞いたとき、雄一郎はひどく嫌な気持がした。
現場と管理職の人間が、もっと呼吸を合せなければ、北海道の鉄道は絶対に良くなりっこはないと思った。
と同時に、自分たちが計画し、夢みている北海道の鉄道のスピード・アップ化は、予算とか、技術面での問題とは別に、こうした面でのひじょうな困難が予想された。
難問は他にもあった。
家庭内部の問題である。
先ごろの流産以来、関根の妻の比沙は体の具合が思わしくなく、ずっと京都の実家のほうで静養していたが、最近になってようやく母につきそわれて釧路へ来ていた。
その比沙が、ちょくちょく雄一郎の家へやって来ては、有里に愚痴《ぐち》を言うのである。
「うちの人……外から帰って来て、仕事の話なんにもしてくれはらへん……どこで何が起ったんかもさっぱり……」
「でも、御主人はおいそがしいんですもの……」
有里は慰めた。
「いそがしいのやろなあ……いつも帰って来やはると、まるで口もようきけんように疲れ切ってはるし……洋服脱いで、お風呂へ入って……黙ってお食事して……それっきりどすね、室伏はんとこのように、夫婦仲ようあれこれ話し合うことなんぞ、うちには、まるであらへん……」
「そりゃ、うちだって、めったに話なんかしてくれませんわ、余っ程機嫌のいい時だけ……あとはもう、新聞読み読み、私の話なんかも上の空で、フンフン言うだけで、なんにも聞いてやしないんですよ」
「お有里はん……それで、寂しいことあらへん?」
「寂しいって……」
有里は首をかしげた。
「それは腹の立つこともありますけど……」
「うちなあ……」
比沙はひどく哀《かな》しそうな表情になった。
「うちら夫婦、ひょっとすると、一日中、話もせんことがあるんよ、別に喧嘩《けんか》したわけでもないのに……たまに話しても、ほんまに必要なことだけ……子供の無いせいもあるのやけど、時々、うち、ふっと自分がなんやこう空しゅうなってしもて……うちみたいなもん、まるで、床の間の置物ぐらいにしか考えていないんと違うやろか……一にも仕事、二にも仕事、三も四も仕事……うちは、いつも独りぼっちや……」
「奥さん……」
有里は、雄一郎から聞いていた関根の最近の仕事ぶりを話してやろうかと思った。しかし、言っても無駄なような気がして途中で止めた。
言ったところで、比沙にはおそらく夫の仕事や夢の意味がよく分らないだろう。それは有里にしても同じことだった。
比沙の気持は、有里には良くわかる。
ただ、比沙と違って、有里は自分が床の間の置物だと思ったことは一度もなかった。
もし、たとえ一日なりとも、有里が働かないで床の間にでも坐っていたら、室伏家はたちまちその機能を停止してしまうことだろう。夫婦が力を合せて働いているのだという自信と誇りが有里にはあった。
それが比沙と違って、有里に夫への不満を抱かせない最大の原因となっていたのかもしれなかった。
三月になった。
まだ大地は冬の間に降り積った堅雪に覆われているが、それでもところどころ黒い土の出た線路ぎわなどに、早くも、蕗《ふき》のとうの白い花などが見られた。
ある日、雄一郎が帰ってくると、
「東京の尾形さんの未亡人が亡くなったそうだ……」
いきなり言った。
「尾形さんて……一昨年《おととし》おなくなりになった鉄道省の……?」
「うん、関根さんが尾形さんの遠い親戚《しんせき》なんだそうで、今朝、東京から知らせがあったらしい」
「じゃあ、奥さまもおなくなりになったんですか……」
有里は、尾形の死後、遺族たちが随分苦労しているという話を思い出した。昨年の令嬢の自殺未遂といい、今度の未亡人の死といい、一時は尾形家がかなり華やかな存在だっただけに、なんだか余計人の世のはかなさ哀れさを感じさせられるような気がした。
「心臓|麻痺《まひ》だったそうだよ……」
雄一郎もしんみりした口調で言った。
「もともと心臓は弱かったんだそうだが……湯上りにお嬢さんと話をしていて、急に倒れたんだそうだ……」
「そうすると、今度はお嬢さんがたったお一人になってしまったんですのね」
「そうなんだ、和子さんといってな、俺は前に一度逢ったことがあるが……ご両親に次々と逝《ゆ》かれて、気の毒だな……」
「これからどうなさるんでしょう……女ひとりで……」
「うん……」
雄一郎が眉《まゆ》を寄せた。
「姉さんはハワイへ行ったまま帰って来んし、面倒なことにならんといいがなあ……」
「え、面倒なことって……?」
「つまり、和子さんは今のところ、伊東さんを頼るしか方法がないと思うんだ」
「したら、伊東さんと尾形さんのお嬢さんが……?」
「まさか、そんなことは無いとは思うが、姉さんがハワイへ行ったやりかたは、伊東さんを捨てて行ったようなもんだものな……もうすぐ結婚するっていう時に、なんであんな馬鹿なことをしたんか……俺には姉さんの気持がわからん……」
「それはきっと何か理由があったんだと思うわ……でも、そういえば困ったことになったわねえ……」
突然の尾形未亡人の死が、遠いハワイのはる子の身にどのような影響を与えるか、有里には想像もつかなかった。
しかし、すくなくとも、伊東と和子を今よりも密接にする可能性はある。
伊東は恩人の娘に頼られればなかなか否とは言えまい。
伊東の誠実な人柄を知っているだけに、雄一郎と有里は、思わず、はる子の仕合せを神に祈らずにはいられなかった。
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