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旅路74

时间: 2019-12-29    进入日语论坛
核心提示:    36この頃、昭和五、六年から七、八年にかけて、鉄道の現場で働く人々にとっては正に苦闘の時代であった。世の中はうちつ
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この頃、昭和五、六年から七、八年にかけて、鉄道の現場で働く人々にとっては正に苦闘の時代であった。
世の中はうちつづく不景気で、鉄道もご多分に漏《も》れず大減収のどん底である。しかも、表向きは絢爛《けんらん》たる鉄道の発達の時代で、特急列車は走る、清水、丹那両トンネルの工事は進行中、一方においては、政治家の�男�で赤字線がどんどん開業の止むなきに至るといった有様で、鉄道の経営は苦しかった。
鉄道員の給料はこのためずっと釘《くぎ》づけとなり、しかも現場から、かなりの人員が整理の憂目《うきめ》をみなければならなかった。
人員整理の噂がとぶと、五十歳以上の鉄道員はみんな白毛染を買うという風評が流れるほどであった。
当時の名鉄局長の講演の中にも、宿屋へ泊った翌朝、お櫃《ひつ》に飯がまだ残っていても、いやしくも鉄道職員たるものは、弁当箱にまでそれを詰めることだけは遠慮して欲しい、などと述べている。
それほど現場の人々の生活は追いつめられていたが、といって、一旦職を失えば絶対に新しい職にはつけない程に、世の中全体が行きづまっていた。
赤字続きの鉄道はヤード(構内)にペンペン草が生え、留置車両は雨ざらしとなって錆《さび》つく始末だった。
そんな中で鉄道員たちは、上も下もありったけの智恵《ちえ》をしぼって、鉄道の増収、黒字への道へ、あらゆる対策、プランを練っていた。
その一つが、�行く先を知らさない列車�の計画である。
これはイギリスのグレート・ウエスタン鉄道が発案した、ハイカース・ミステリィ・エキスプレスの模倣であったが、日本でも大成功をおさめた。
なにしろ、この列車の行く先は、運転する機関手にも、車掌にも、勿論、局長にも知らされていない。
知っているのは、東鉄の旅客課長の堀木鎌三と、列車運転の計画をやる天野辰太郎の他三名のみだった。
行く先は乗客に列車内で当てさせるのだから、秘密は厳守、乗客は列車に乗り込む前に、機関車がどっちについているかを確めて乗るさわぎであった。
八百人の乗客は、物珍しさに集ったおよそ千人の見物人たちに見送られて、上野駅を万歳の声と共に出発した。
赤羽をすぎて大宮駅に着き、大宮公園を見物して氷川《ひかわ》神社へ詣り、今度は常磐線に乗り入れて、江戸川を渡って埼玉県から千葉へはいり、清水公園へ行って宝さがしをやり、昼食、続いて野田町へ停車して、醤油工場を見学、相生《あいおい》駅へ出て、常磐線で上野へ向うとみせて、金町《かなまち》、新小岩へ出て総武線を両国駅へ終着した。
参加乗客は大喜びで、解散の時はわざわざ鉄道員に握手を求める有様だった。
この日、運転キロ数九十九キロ、参加人員八百一名、収入は九百二十二円八十銭だった。
また、昭和六、七年は農村にとっては大変な凶作の年でもあった。
それ以前から続いていた深刻な農業恐慌と相まって、農家は窮乏のどん底にあえぎ続け、東北、北海道の貧農の家では、若い娘を売りとばす者が多かった。貧困につけ込んで、悪質な人身売買業者が暗躍した時代だった。
その日、雄一郎は釧路から札幌へ向う急行列車に乗務していた。
前から、ひどく貧しい身なりの若い娘と、連れの眼つきの悪い五十がらみの男の居るのに気はついていたのだが、別にそれほど気にもとめずに雄一郎は車掌室で乗務記録をつけていた。
と、突然、車掌室のドアが開き、あの娘が蒼《あお》ざめた顔をのぞかせた。
「すみません、車掌さん……お願い、助けてください……」
娘は両手を合せた。それからすぐ背後をふりかえり、追いかけてくる者の居ないことを確めて、するりと中へすべり込み、ドアを閉めて大きく肩であえいだ。
「どうしたんです、いったい……」
「あたし、人買いに売られたんです……」
余程おびえているらしく、全神経をドアの外に集中して、追手の足音を聞いている。
「あ奴《いつ》が、お酒飲んで寝ている間に逃げて来たんです、捕ったらあたし……お女郎にされてしまうんです……お願い、助けてください……」
「困ったなあ……」
雄一郎は判断に迷った。
逃がしてやりたくても、此処は走る列車の中である、次の停車駅まではまだ四十五分も時間があった。
廊下に靴音がした。娘の表情がさっと緊張した。靴音がドアの外に止まる。そしてドアが開いた。娘は体をこわばらせ、観念したように両手で顔を覆った。しかし、はいって来たのは車掌の佐々木だった。
佐々木は不思議そうな顔をして、娘と雄一郎を見比べていた。
「いや、別になんでもないんだ……」
雄一郎はようやく腹をきめた。
「佐々木君、すまんが、この人を小荷物の貨車の中へかくまってくれ……わけはあとで話す、いそぐんだ……」
「はあ……」
佐々木は狐《きつね》につままれたような顔をしていたが、とにかく言われるままに娘を連れて行った。
娘が立ち去って間もなく、雄一郎が客車内の見廻《みまわ》りに出掛けようとドアを開けたところへ、例の連れの男がかなり慌《あわ》てた様子でやって来た。
「おい、車掌さん、俺の連れを知らんか」
車掌室の中をうたがわしげな眼つきでのぞき込んだ。
「さあ、どういうお連れさんですか」
「ほら、さっき検札に来た時、見ただろう……若い娘……」
「さあ、何分にも大勢のお客さんのことですから……お連れさんがどうかなさいましたか」
雄一郎はとぼけた。
「いなくなっちまったんだよ、ちょっと睡《ねむ》っている間に、見えなくなったんだ……」
「便所じゃないんですか、そういえばさっきから、向うに一つ、開かないのがありましたよ」
「おッ、そうか、そいつだ……どこだい車掌さん……」
「二つか三つ向うの客車です」
雄一郎はわざと小荷物車と反対の方の客車を教えた。
「そうか、ありがとう」
男はいそいで走って行った。
しばらくすると、男がまた戻って来た。
「居ねえよ、どこにも居ねえ……」
「おかしいですねえ……もしかすると、途中下車されたのではありませんか?」
「なにッ……畜生ッ……おい、帯広からこっちはどこへ停車したんだ……」
「帯広からですか……」
雄一郎は、わざとのんびりした仕草で時刻表を取り出した。
「ええと……富良野《ふらの》ですな……」
「フラノ……そこからどっかへ行けるかね……つまり、のりかえはねえかってことだよ」
「そうですね……二十四分の待ち合せで旭川行があります」
「旭川……そいつだッ……そいつでずらかりやがったな……」
男は唇を噛《か》みしめた。
「おい、車掌さん、すまねえが大いそぎで汽車を止めてくれ、次の駅はどこだね」
「この列車は急行ですから、滝川までは止りません。あと四十分で到着ですから、それまでお待ちねがいます」
「あと四十分ッ」
男はとび上った。
「じょ、冗談じゃねえや、その間に大事なタマに逃げられちまわあ……よう、車掌さんよ、なんとかならねえかよう……」
「残念ですが、規定ですので……」
雄一郎は冷めたく言った。
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