むかし、むかし、うそつきの名人がいました。名まえを、うそ五郎といいました。
あるとき、殿《との》さまが、うそ五郎をよんで、
「おまえはうそをつくのがじょうずだそうだが、わしをうまくだませるか。どうじゃ。うまくだませたら、なんでものぞみのものをつかわすぞ。」
と、いいました。うそ五郎は、かしこまって、
「はい、殿さま、ありがとうございます。ところが、わたくし、うかつにも、きょうはうそぶくろを家にわすれてまいりました。小だんすの上にありますから、どうか、ご家来衆《けらいしゆう》をおつかわしになって、とってきていただきとうございます。」
と、たのみました。殿さまは、
「よし、よし。」
と、いって、家来を、うそ五郎の家にとりにはしらせました。家来がいってみますと、うそ五郎の家では、
「そのようなもの、なにがありましょう。みんな、うそ五郎のうそでございます。」
そういいました。
殿さまも、さいしょから、だまされたわけでした。