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千里眼211

时间: 2020-05-28    进入日语论坛
核心提示:試験の裏技 午後の陽射しが窓から差しこんでくる。北原沙織は三年A組の教壇に立ち、教室のなかにひしめきあっている生徒たちに
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試験の裏技

 午後の陽射しが窓から差しこんでくる。北原沙織は三年A組の教壇に立ち、教室のなかにひしめきあっている生徒たちに受験のこつを伝授していた。
ほとんどの生徒は工業科、農業科で、世界史の履修どころかろくに勉強さえしてこなかった連中だ。試験を前に、なにをどうやったらいいか糸口すらつかめない者が多い。
そこで、試験対策に自信のある統治官は、交代で彼らを教育することになっていた。きょうは沙織の番だった。
「それで」と沙織はチョークを手にして、問題集の文章を黒板に書き写した。「このカルシウムイオンを含まない人工海水中のウニ受精卵の実験、それからスクロース溶液に移し替える実験結果を踏まえて、この問いに答えること……」
 正しいものに○、間違っているものに×をつけよ。
1 スクロース処理により、解離した細胞が元の位置に戻る能力は失われる。
2 カルシウムイオンは胚《はい》の細胞をまとめるために必要となる。
3 細胞の表面積が小さくなったことにより、胚の割球の接着が弱くなる。
4 カルシウムイオンは、解離した細胞集団がふたたび原腸胚になるためには必要とされない。
5 原腸胚期の細胞の一部は、位置を乱されても元の部位に戻る仕組みを持っている。
 男子生徒のひとりがいった。「さっぱりわかんねえ。生物はさぼってたし」
茶髪の女子生徒がうんざりしたようにつぶやく。「あんたはどの教科もさぼってたでしょ」
「うるせえ。てめえこそ授業は早弁の時間と言い切ってたくせに」
「なによ」
沙織はいった。「落ち着いて。いい? この問題をきちんと解くときには、実験の文章をよく読みこまなきゃならないの。カルシウムイオンの有無によって、同じ時期の細胞数はほとんど変わらないし……」
「あー」別の男子生徒がけだるそうにいう。「カルシウムイオンって、ポカリスエットだっけ?」
「あれはイオンバランス……とかじゃなかった?」とさらに別の生徒。
「頭|痛《いて》えな。誰が教えても授業ってのはうざいよな」
「もともと頭悪いしな、俺ら」
「テストなんて赤点すれすれの低空飛行ばっかだもんな。いまさら勉強したところで……」
苛立《いらだ》ちがこみあげた。沙織は問題集を黒板に叩《たた》きつけた。
悪ぶっていた生徒たちが、びくっとして姿勢を正す。
「聞いて」沙織はあえて冷ややかにいった。「氏神高校国が独立を宣言した以上、その国民がどれだけ優秀かを日本国に知らしめる必要があるの。落ちこぼれることは許されない。あなたたちは模擬試験でも平均点以上をとらなきゃならない。そしてゆくゆくは、大学を受験して、そこにも合格する」
「大学受験?」太った男子生徒が甲高い声をあげた。「そんな無茶な。俺ら工業科は就職が前提だよ」
「そうだよ」と浅黒い顔の男子生徒がうなずく。「農業科でも、勉強なんかてきとうにやっときゃいいって先生が言ってた」
「だめよ」と沙織はきっぱりといった。「あなたたち、心の底からそれでいいと思ってる? 遊んで楽しくやりゃいいなんて強がってても、結果は如実に出てくるものよ。もうすでに、あなたたちはこの国内で低所得者層になりつつある。普通科の成績優秀者は、国のためになるなんらかのアイディアを提言して、採用されてその専門職に就き、毎日十ウジガミールから二十ウジガミールを得ているのよ。昼食の時間でも、ひとりでパンを十個も二十個もせしめてる人もいる。希少な牛焼肉弁当も毎日、食べている人がいるのよ」
生徒たちにどよめきがひろがった。
「そんな奴がいるなんて信じられない」と鼻にピアスをした男子生徒がいった。「朝から晩まで畑仕事しても一ウジガミールにも届きゃしない……。どうすりゃいいってんだよ。俺ら、頭悪いし……」
「悪くない。あなたたちは社会にでる準備をしようとして、工業または農業の専門分野に進み、手に職をつけようとしたけど、それ以外のものを切り捨てすぎた。端《はな》から貧困な大人になるつもりだったの? この小さな国でも社会の底辺なのに、日本という大海原でのし上がれるわけがないじゃない。そこのところ、よく考えてみたら?」
「けどさ。そんな生物のカルシウムイオンだか細胞だか、覚えたところでなんの役にも立ちそうにないから、身も入らないし……」
「覚えるべきは暗記事項のすべてじゃなくて、要領なの。受験教科だけでもいろいろあるけど、本当はそれらを勉強するうちに、自分が興味を持って臨めるジャンルを見つけて、そこに進めばいいのよ。でもいまの大人社会では専門分野以外のことも、それなりに要領よくやることが望まれてる。それならうまく試験で点数をとって、一目置かれる立場になったら? どうせ馬鹿だなんていじけているより、よっぽど可能性が拓《ひら》けるわよ」
「でもどうやって?」
「それをこれから説明するの。あなたたちにこれらの教科をイチから勉強しろなんて、行政庁はひとことも言ってない。国益のため、そして自分のために試験で点数をとり上位に食いこめと言ってるの。つまり、何であろうと設問に対し、まず正解をすることが求められているのよ」
「っていうと、カンニングしてもいいってこと?」
「いいえ。不正は絶対に駄目よ。それにカンニングペーパーに書ける情報なんて限られてるし、なにより不正で切り抜けることを覚えたら、以後の人生でもそれを繰りかえすことになっちゃうのよ。けどね、コツさえつかめば、こういう問題に正解することは楽勝なの。問題文なんか読まなくていい。出題者の心理を読むのよ」
心理……。生徒たちはざわついた。
「まず」沙織は黒板を指差した。「こういう○か×をつけさせる問題では、一問目は×の可能性が高いの。最初から正答を置くより、誤答で受験生を戸惑わせようとする出題者心理が働くから」
生徒たちが真顔になり、いっせいにノートを取りだした。
沙織はため息をついた。
こういう裏技は最後の手段だ。しかし、菊池は沙織にいった。彼らにそれを伝授してやってくれ。いまは少しでも生徒たちの平均点を上げるべく努力しなきゃならない。大人たちの管理のもとで学習していたことが、いかに無意味かを世間に知らしめなきゃならんのだ。
「次に」と沙織はいった。「正しいものをふたつ選べとか、間違っているものをひとつ選べとか指定してある場合もあるけど、この問題のように漠然と○×をたずねてくるときには、○より×のほうが多いと思ったほうがいいわ。これも出題者が、正答より誤答を多くして難易度を上げようとするからよ。それからもうひとつ、並び方も考慮に入れなきゃ。ぜんぶ○になったり、ぜんぶ×になったりすることはまずないの。一個だけ×もしくは○という可能性も低い。そして、○と×が交互に並ぶということも少ない。規則性のある解答は、偶然でたらめに書いた答えが正解してしまう可能性があるから、出題者が避けるのよ」
もはや生徒らは誰も言葉を発していなかった。ただ黙々とノートをとりつづけている。
「じゃあ、黒板の文章をよく読んでみて。設問は五つある。最初は×で、○より×のほうが多くて、○×どちらも一個にはならないとすると、×が三つ、○がふたつってことになる。×が三つ続いてから○ふたつとか、×と○が交互っていうものは規則性のある並びだから除外する。そうすると……」
沙織は黒板にチョークを走らせた。
 A ×○××○
B ××○×○
C ×○○××
「この三つしかないの。さて、設問を読むと、2と4がどちらも『カルシウムイオンは』っていう主語で始まってるでしょ? 文章の言いまわしで少しばかり判りにくくしてあるけど、ようするに2は『必要となる』、4は『必要ではない』と相反することを言ってるわけ。どちらかが○で、どちらかが×ってわけね。A、B、Cの並び方のうち、これが当てはまるのはAとCだけ」
説明しながら沙織はBの配列を黒板消しで消去した。
「いよいよふたつに絞られたわけね。ここでもうひとつ、上級者向けの法則を説明させてもらうわ。この手の問題では、正答がふたつだけしかないのなら、そのふたつは離れた場所にある」
男子生徒のひとりが目を丸くした。「ってことは……」
「そう」沙織はCを消去した。「Aだけが残る。そして答えは……これで正解。2と5が○で、あとは×」
感嘆のため息を漏らす者がいた。誰もが目を輝かせてこちらを見つめている。
沙織はきいた。「どう? これぐらいのことはテクニックの序の口だけど……。これでもまだ勉強する気にならない?」
「します!」坊主頭の男子生徒が立ちあがった。「裏技ってのをぜんぶ教えてくれ!」
女子生徒のひとりも笑っていった。「東大入れちゃったりしてね」
「夢でもないわよ」沙織は告げた。「この問題、センター試験の生物㈼で出題されたものだしね」
そのとき、生徒たちが真剣な顔つきに変わった瞬間を、沙織は見逃さなかった。
いい顔をしている。そう、わたしたちはいつもこんな表情を胸に秘めている。その希望を抑えて生きてきた。未来に夢を持つことはタブーであるかのように感じていた。
大人たちが歪《ゆが》んだ社会を作りだし、わたしたちの大半がそこで負け犬にならざるをえない境地に追いこまれる。不公平な世の中だ。それなら、わたしたちも裏技を使って逆転を図るまでだ。悪しき伝統など打ち壊し、希望を抱くことのできる世界を築くために。
わたしは兵を率いている。出陣のときは来た、と沙織は思った。もう後戻りはできない。
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