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父子鷹01

时间: 2020-09-26    进入日语论坛
核心提示:風かおる 今夜はさわやかないゝ風がある。昼の間に仕立屋の弁治が、何処からか、珍らしい籠枕《かごまくら》が到来したというの
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風かおる
 
 今夜はさわやかないゝ風がある。昼の間に仕立屋の弁治が、何処からか、珍らしい籠枕《かごまくら》が到来したというので置いて行った。小吉は縁へ出てそれをして団扇を使いながら星空を見ている。もっと真ん中へ出れば、風もよく来るのに、隅っこへ寄っているのは麟太郎が縫物をしているお信と向い合いに行燈を真ん中にして、きっちり坐って本を見ているから、何んとなく悪いような気がするからだ。
「御免下さいまし」
 人が訪ねて来た。聞馴れない声だ。小吉はすぐに出て行った。玄関は暗い。が、五人いる。小吉も立ったまゝで、無言でじっと見詰めていた。
「中組八番の火消人足伝次郎と申します」
 流石の小吉もびっくりした。と同時に、奥の居間にいる麟太郎の方へ首を曲げて見てから、小さな声で
「せがれが学問をしている。こんなところでごた/\云われては大層迷惑。用があったら、おれが方からすぐにも出向いて行くから、帰れ」
「へ?」
「帰らなけれあ斬っ払うぞ」
「へえ。実は」
「実はも屁もない、帰れ」
 と少し怒鳴りつけてから急に
「只今、すぐに参ります。仕度をする間少々お待ちをいたゞこう」
 そういって、奥へ引返して来て
「お信、妙見の講の事で、ちょいと出て来る。袴を」
「はい」
 麻の白地に着かえて袴をはくと、例によって池田鬼神丸をすっとさして出て行って終った。麟太郎は、本から眼をはなし、お信を仰ぐように見て、にこりと笑った。小吉がこれを見たら、こ奴め、知りやがったかと、頭をかいて笑ったろう。
 暗い中を、小吉が先きで、うしろへ何れも紺の香のぷん/\するまだ一度も袖を通さない中組八番の役付の絆纏姿で、無言で入江町の角、大横川の岸まで静かに歩いて来た。小吉は不意に立停って
「何用で来た」
 といった。
「へえ」
「闇討なら、人数が足りなかろう」
「と、と、飛んでもござんせん、勝様、闇討どころかお詫に参ったのでございます」
「何んの詫だ」
「へえ」
 と伝次郎は、地べたへ坐って終った。四人もつゞいて坐った。
「頭を丸めてめえるべきが本当でごぜえますが、それじゃあ気障だ、見せつけだと、お気持を損じましてはと思いやして、髷をつけたままで出ましてございます」
 伝次郎は地べたへ顔をすりつけるようにした。
「これなるは組の役付人足一同でございますが、勝様、重々これ迄の不重宝、どのようなお仕置も仰せに従いますでござんす」
「何にをいっている」
 と小吉は笑声で
「仕置どころかおれはお前らなんぞ愚にもつかねえ人足風情を何んとも思ってやしねえ。思ったらお前の首なんざあ、とっくの昔、胴へくっついちゃあいねえんだ。おれがせがれの急所へ、お前の犬が咬みついて飛んだ災難だったが、犬はおれが斬った。元々おれがせがれは可哀そうに何処までも運悪く生れついている奴だ。まあ/\それでいゝ。世上の噂じゃあ、お前の方がおれをどうとかするという事だが、止めたのか」
「へえ、まことに申訳ないことを致し乍らそれを逆恨みなど、勝様、文盲の人足でごぜえます。御勘弁を願います」
「それはともかくお前、評判が悪いな。|がえん《ヽヽヽ》破落戸《ごろつき》、天下の町火消がそんな事じゃあ仕方があるまい」
「へえ」
「それに、北組十二番とも不仲だというが、纏持の松五郎は、せがれがお前の犬にやられた時によく面倒を見てくれた。おれも恩は返さなくてはならない。お前、あの組とやるなら、おれが出て行くがいゝか」
「あれもわたしの組が悪い事、改めて詫に参るつもりでござんす」
「ほう、お前のところはまた、急に神妙な事になったではねえか。おれは臆病だから薄気味が悪いねえ」
「しかし深川にいて勝様というお方がどれ程のお侍かも知らず、横車を押していたなどは、全く、わたし共は馬鹿でございました」
「そうかねえ」
「お坊ちゃまへ、わたしの犬が咬みました事はどのようにでもしてお詫を申しますが」
「はっ/\。そ奴あ遅かったわ。せがれはもう達者で、このおやじの行状を、ちらり/\と睨んでいるよ。余計な事をされては却って迷惑千万だ」
「へえ」
「が、おれが方はいゝから、松五郎とは仲よくする事だな、あれは立派な男だよ。それにしてもお前ら山之|宿《しゆく》の佐野槌へ、ずいぶん早く駈けつけたが、あれ程早業が出来るというに火事というといつも/\出遅れで大火にする、いけねえな」
「へえ。実はあの時は|を組《ヽヽ》の頭取助五郎という者の祝事がありまして参って居りましたところ、喧嘩の対手は勝小吉ときき、よし、それならおれ達に呉れろと」
「おれが貰われたかえ」
「それが大変な間違いでごぜえました」
 すうーっと風が流れて来た。川の匂をはらんで心なしか冷やりとする。
「いゝ風だ」
 と小吉は
「話はわかった。お前らがおれを殺さねえというなら、今夜から枕を高くねむれるから、帰るよ」
「あ、か、勝様、勝様」
「噂は悪いが、逢って話せばお前も案外いゝ奴らしい。その中、松五郎共々ゆっくり話すとしよう」
「そ、それにつきまして」
「先ず松五郎と相談を定めてから来い。あ奴はおれがところのお信にも信用があって、話はよく通るからね」
 小吉はもうどん/\行って終った。
 お信は玄関へ出ていて
「何にをいって参りました」
 と小さな声でいう。
「いゝ奴よ。あれで坊主になって来やがったり、指を詰めでもして気障な真似で来やがったら一ひねりしてやるところだが、そんな事もせず、ずばりと素直に出て来て詫びるところが気に入ったよ。これで界隈も静かになり、いゝ事だ」
「さようでございますねえ。安心いたしました」
「山之宿で、おれが田舎ッぺえらしい用心棒の侍達を斬払ってやったのに、あ奴ら余っ程肝をつぶした様子だ。間合《まあい》がとんとうまく行って見事に斬れたからねえ。人を斬らずに心を斬る、こう心掛けて居りますといつか男谷の精一郎がいったが、あの時は何にを云ってやがると思ったけど、本当だねえ。精一郎は偉い奴よ。剣術もあ奴が出て面目を一新するね」
 伝次郎達が、後を追って来て、それから少しの間、往来に立っていたが、やがて帰って行く様子であった。小吉はにこっとした。
 次の朝早く松五郎が来た。
「不浄が聞えるなどと叱られねえようにお坊ちゃまのお出かけをちゃんと見定めて参りましたよ」
 と笑う。
「ゆうべ伝次郎が行ったのか」
「参りました。どうしても勝様にお前達同様お目をかけて可愛がっていたゞきたい、お前からも頼んでくれろと申しました」
「馬鹿をいうな。お前同様な奴らに、朝となく夜となく出入をされて堪るか。それではおれがお信や麟太郎の前で年中ちっちゃくなっていなくてはならない。が、あ奴もいゝ奴だなあ」
「江戸っ子にもこんな野郎が居るのかと見るからに虫唾の走る気障な野郎でござんしたが、がらりと人が変りましたね。わたしもびっくり致しやした。人間なんて一晩とも云われないものでござんすねえ」
「そうだとも、善人も悪党も紙一枚よ」
「全くです。あんな組頭なら、緑町の火事の消口なんざあ、黙ってこっちが手をひいてもいゝんです」
「そうしてやれ。消口なんざあどっちがとったって火事さい消えれあそれでいゝものだ」
 松五郎が帰った後で、お信は
「今のあなたは、山之宿のお女郎屋などで、お刀を抜いて喧嘩をなさるようなお方とは見えませんでしたよ」
 と笑った。小吉は頭をかいて
「お前はそういうがね、お前はあんな嫌やな人間の顔というを見た事がねえから、そんな事をいうのだ。人間にはな、何んの恨みもつらみもないに、ちらっと見ただけで腹の底までむか/\とこみ上げて来るような嫌やな奴がいるものだ。後になって考げえると、どうしてあの時に、あんなに腹を立てて無法をしたのかと思う事があるが、佐野槌で二階から投げ落してやった銭座役人などは本当にこの類《たぐい》よ。あの往来でぶっ倒れていた姿なんぞ、今、思い出しても、おれはまだ腹が立って来る」
 庭へ向って、如何にもむか/\するというような顔つきでぺっ/\と唾を吐いた。
「よくあるなあ、あゝいう奴は」
「それはあなたの我儘なお心ではござりますまいか。広いこの世の中にはいろ/\なお顔のお人がござりましょう。もう、そういうものにはお構いなさらぬがお宜しゅうございます。先日麟太郎もあなたと同じような事を申しました」
「何、麟太郎が。な、な、何んといったえ」
「滝川先生の多羅尾様の御門番の顔がどうも気に喰わぬ、いつか喧嘩をしてやると」
「えッ? ほ、ほ、ほんとうか、それは」
「よく/\叱っては置きましたが、困った事でござります。これから世の中へ出て行く者が、今からあのように人にわけへだてをつけて見るはよろしくないかと思います」
「そ、そ、そうとも、そ奴はほんとにいけねえ」
 と小吉は眉を寄せ、考え込んで終った。
「そればかりでは御座いませぬ。いつも滝川先生へ威張り散らす殿様の多羅尾七郎三郎様は赤禿だが、一度、思い切りあれをぶって見たいものだなどと申しました」
「こ、こ、困った奴だ。こら、お信、子が教えはお前《めえ》が勤めだ、しっかりしなくてはいけねえ」
「はい。わたくしも一生懸命、気はつけますが、あなたも、顔つきが気に喰わないからなどと、御勝手を仰せになり、二階から人様を投げ落すなどという事はお止めなされて下さいまし」
「わ、わ、わかったよ、わかったよ。が、麟太郎はよく/\叱って置け」
「はい」
 小吉は出しぬけに庭へ下りて行った。てれ臭そうな顔をして、一度、お信の方をふり返った。
 切戸から岡野の屋敷へ入って行く。岡野の庭はひどい荒れ方だが、何んといっても広いし、草木も多い。居なくなった江雪の好みでいろ/\な薄《すゝき》を植えてあるが、糸すゝきがよく延びて、これが風にそよ/\とゆれる。元々先々代の拵えた屋敷で、石の配置もいゝ。
 用人部屋で、平川右金吾が、机へ肱をついて片手に団扇をもったまゝうつら/\と居ねむりをしている。机にも膝の横にも、いろ/\な帳面が置いてあって、途中の紙を折畳んだのもあり、開いて伏せてあるのもあり、大袈裟にいうと、一寸、帳面に埋もれているという感じだ。小吉は立ったまゝで
「おい、右金吾。まだ女郎の夢でも見てるのか」
「はっ」
 右金吾がびっくりして眼をさました。暫くまじ/\と小吉を見て
「いや、どうにも斯うにも、こんな乱脈はありませんな」
「そうよ。逢対の時の差替の刀もねえという貧乏だ。帳面がしっかりしてる訳はあるまい」
「それにしてもひどすぎる。この帳面を調べるとどうしても五千両の金がある筈だが」
「べら棒奴、それあ借金だ。お前、金の勘定も出来ねえか」
 右金吾はにや/\笑って
「先生、これでもわたしは元は酒問屋の伜だ。剣術に凝って家業をしないものだから、おやじが武家の株を買ってくれて態よく追払われましてね、先ずはこんな事になったが、帳合の事はよくわかるんですよ」
「そうか。お前酒屋の伜か。先代は酒乱、江雪と今の殿様が女道楽の競べっこをしている中にこんな有様だ。帳合なんぞ無駄な事だ。もう止せ。それにしても岡野にはいゝ用人が出来た」
「冗談ではありませんよ。わたしはこんな事をしているよりも、喧嘩でもして遊んで歩いている方が余っ程楽しい」
「馬鹿奴、喧嘩なんぞどうするんだ。あ奴を一度やる度《たんび》にがくん/\と人間が馬鹿になる。お前、そんな事をぬかすと、おれがところのお信に叱られるぞ」
 小吉はにや/\して
「おれもたった今叱られて来たところだ」
 と額を叩いた。
「しかしこゝの殿様は癖が悪い。奥様《おまえさま》がおっしゃった。近頃、ほら、屋敷の角を曲ったところに米屋がありましょう。あすこの娘を毎晩屋敷へ引張り込んで来て大酒をあおる。夜が明ける迄もやる。その酒代も莫大につもる。それから御隠居の江雪様からも金の無心の使が来ましたよ」
「何、江雪が?」
「それに殿様がさっきわたしを呼びつけましてね。お前はとてもこの屋敷には勤まるまい、暇を貰ったらどうだと怖い顔で云いましたよ」
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