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父子鷹33

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:垢離場《こりば》 平川右金吾は、本当に衰え果てていた。江戸できいて思ったより、もっと/\病気は悪いようである。 小吉は自
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 垢離場《こりば》
 
 平川右金吾は、本当に衰え果てていた。江戸できいて思ったより、もっと/\病気は悪いようである。
 小吉は自分でも眼をうるませていながら、駕の中で右金吾がすゝり泣くと
「めそ/\するな」
 と怒鳴りつけて、黒駒村の神主武藤外記の屋敷を出発した朝も、やっぱり煙るような雨であった。黒い鶺鴒《せきれい》があっちの樹こっちの樹へ移り、駕を追うように鳴きつゞけた。深い竹藪《たけやぶ》と竹藪の間から神座山が道へ迫まり、うっそうと茂った釈迦ヶ嶽、黒嶽、三峰。笹子の峠へつゞく山々が折重って眼にしみた。緑でも無く黒でもなく、底深い山の色は、しーんとして咳《せき》一つしても悪いような気がする。
 神主の外記をはじめ親切な武藤屋敷の人達が、みんな門の外まで出て、小吉一行が、少し下りになった道をしずかに消えて行くのを見送った。小吉もふり返っては頭を下げた。このからだでは、右金吾がどんなにお世話になった事かと思うと、何度でも頭を下げずにはいられなかったのである。
 北西《いぬい》へ向って二里余り。代官所のある石和《いさわ》へ出て、ここから甲州街道を江戸へ行く。小吉は竹藪に包まれた甲州五万石代官陣屋の手前の道を通りながら、思わずふゝンと笑った。
「縁のあるところだ」
 と思い出すようににや/\して
「こゝの御代官の手付になる事になって、その招宴で同役を投げ殺し、それでおれが生涯はお終《しめ》えになったっけ。ははゝゝ」
 出しぬけな声で、長吉もびっくりしたが、小吉はもうけろりとしている。いゝ塩梅《あんばい》に、どうやら雨はあがりそうだ。空が大層明るくなった。
 勝沼宿まで来て早くも旅宿へ着いた。黒駒から四里とちょっとである。
 小吉は長吉に手伝わせて、右金吾を双方から抱くようにして、旅宿の二階へ上った。
「疲れたか」
「いゝえ」
 と右金吾は首をふった。
「そうか。江戸へけえって丈夫になり、東間と三人でまた面白い日を送ろう」
「はい——でも、わたしはもう——」
「馬鹿奴、しっかりしろ、病は気からとはその事だ」
「はい」
 小吉は右金吾の様子を見ながら、四里で泊り五里で泊り、帰り道に十日もかゝってやっと江戸へ着いたその夜の事である。
 もう寝て終っている。ずいぶん長い事お順を抱いて、あやしていて床へ入ったので、とっくに子之刻《じゆうじ》が過ぎていた。
 頻りに門を叩く者がある。お信も眼をさましたが、小吉が
「碌《ろく》な事じゃあなさそうだ。ほったらかして置け」
 といった。
「でも」
「いゝからお前はねていよ——今頃門を叩くなんざあ飛んだ野郎だ。お順がおどろくわ」
 しかし小吉はきび/\した身ごなしで起き出して行った。
 まだ門を叩いている。
 いきなり怒鳴りつけた。
「こら、屋敷を違いやしねえか。こゝは勝小吉だぞ」
 対手はやっとほっとした様子で
「へ、へえ、へえ、垢離場《こりば》の花槌から使《つけ》えにめえりやした。ど、どうぞお助け願います」
「花槌? そんなところを、おれは知らない。帰れ」
「おかみさんはお糸と申上げればきっと来て下さると云って居りやした」
「お糸だと? 自惚《うぬぼ》れた奴だ、が飛んだものに見込まれた。あ奴には恩も仇《あだ》もないが、佐野槌のおかみさんには迷惑をかけている」
 と小吉はお信のところへ引きかえして来て
「困った事になった」
「そうで御座いますねえ」
「どうしたものだろう」
 小吉はまた玄関の方へ行って
「何にがはじまったのだ」
「へえ、悪性《あくしよう》なやくざ者が、おかみさんに遊びを断られ、面《つら》へ泥をぬったと暴れ出し、刃物を振廻して、もう三人も手を負いました」
「馬鹿野郎、垢離場には無駄飯をくってごろ/\している野郎が箒《ほおき》ではく程いる筈《はず》だ。そ奴らはどうしたのだ」
「へえ、面目ございませんが歯が立ちません。旅がらすの暴れ者が七人です。そ奴らが、どうしてもおかみさんを殺すといって追い廻して居りますんで」
 お信も起きて来た。お糸とは一度逢ったきりだが確かに知っている。
「あなた、行ってお上げなさいまし」
「嫌やだねえ」
「あなたの御留守中道具市の世話焼さんの親類の方もいゝ株があったので見世を一軒急がわしく出した筈で御座いますよ」
「そうか」
 やっぱり小吉は出て行った。
 門の潜りを出ると、如何にもあゝした遊び場所などで、ふだんは大きな事をいっているが、いざという時には物の役にも立たない男が二人、遠くの辻行灯にぼんやり見えていた。
 垢離場《こりば》は如何にも騒がしかった。川向いの両国河岸から薬研堀|界隈《かいわい》は、川っぷちに辻行灯がぼんやりと二つ三つ影を流し、大名屋敷の灯もちら/\見えるが、こっちは、灯という灯はみんな消えて、何にか不気味なうめき声が何処かで聞こえる。
 暗い中を、小吉はずばッと露路口を入って行った。途端に
「先生」
 女の声で、胸元へしがみついて来た。
「きっとお出で下さると思ってました。あゝ、やっぱり先生は来て下さいました」
「おゝ、びっくりしたお糸さんか——先ず断って置くが、おれあね、佐野槌のおかみさんの義理で来たのだよ。暴れているのは、一体何処だ」
 お糸は、一度、ごくりと唾をのんだ。
「ほら、御覧なさいまし。垢離場中が滅茶々々に壊されました。たった一軒だけ微かに灯の家がござります。あすこで七人がいま飲んで居ります」
「それじゃあもう騒ぎはすんだのだろう、おれあかえるよ」
 途端にお糸が小吉の袖を力一ぱいぎッとつかんだ。
「よくわかりませんが、怪我人も七、八人は出ているので御座います。あのまゝ、あ奴らを帰したのでは、何処までも弱味をつけこまれ、この先き垢離場は成立たなくなります。どうぞみんなをお助け下さいまし」
「はっ/\、一と頃に比べお前さん、滅法弱っ気になったねえ。何にもお前一人で、垢離場を背負う事もないだろう」
「いゝえ、はじめ、わたしのところへ遊びに参り、矢が当らぬという事から因縁をつけ、いくらかのお銭《あし》にしようとしたのですが、わたしは、この花槌という矢場はお前さんらのような、堅気のふところにたかる虫を見たようなやくざ者の来るところではない、まじめに一日働いて、その疲れをお忘れなさろうというお方々に来ていたゞくためにやっているのだと斯う申したので御座いますよ」
「ほう、尤もだね」
「客を撰り好むとは生意気だと、矢取の女に悪《あ》くどくからみ、今にも手籠《てご》めにも仕兼ねない上に、第一、矢が当らない。弓も矢も曲げてあるといんねんをつけはじめました」
「何処の奴だ」
「話の様子では板橋の宿場界隈を荒している奴らのようでございます。そこへ方々の家から若い衆が出て来て喧嘩になりとう/\この始末です」
「だが、まだ暴れているなら、ともかく、今おとなしく酒を喰っているのなら、やがて帰って行くだろう。どうせふだん滅法な悪銭を稼《かせ》いでいる垢離場だ。たまには無法な奴も来るよ」
「はい、然様《さよう》でござりますか、わかりました。それでは先生はこのまゝお引返しなさいますか」
 暗い中で小吉はお糸の烈しい息遣いを、はっきり感じた。
「あゝ、帰るよ」
 とそういって
「だが、どんな奴らか、面だけでも拝んで行くか」
 ぶら/\とぼんやり灯のもれている方へ歩き出した。
 お糸は思わずにこりとした。このお方はやっぱり、わざととぼけて、あたしをからかっていらっしゃるのだ、場所《ところ》の者の困っているのを見す見すほったらかして置く筈はない。おからかいを面白がっていらっしゃるのです、とんとまあお人が悪い——そう思うとお糸は何んとなく心うれしくそんな気持で黙ってうしろからついて行った。
 露路の突当りが竪川で、右手で直ぐ隅田川《おゝかわ》へ入っている。真っ紅な紙を張った置行灯を舟首《みよし》へおいた猪牙《ちよき》が二はいつゞいて竪川をすべるように上って行く。空は曇って星もない。
 垢離場端れのやっぱり矢場の一軒。酒や肴を運ばせて、もうべろ/\に酔った七人組が、怖がって真《ま》っ蒼《さお》に縮んでいる矢取女の首ねっこなどへからみついて、まだ飲んでいる。しかも、長脇差《ながどす》を行灯の手前へ突きさした古風な破落戸《ごろつき》風景である。
 小吉は、表からちらりと見ると、口元がきっとした。
「長脇差が目に入らなかったら、勘弁してけえしてやったのだが——おい、お糸さん、みんなへそういって灯をつけさせよ。みんな無法に怖がるから、江戸へ戸惑って来た山賊見たような奴らに嘗《な》められるのだ」
 小吉はお糸の返事もきかず、ずばっと、その矢場へ入って行った。酔ってはいたが流石《さすが》に七人が一斉に、眼玉を光らせて、こっちを見た。
 小吉は黙っていた。向うの七人も黙っている。女達は、俄かに破落戸の首へ巻きつけた腕を押しほごして、小吉の方へ逃げて来た。
「おい、おのれは此処の用心棒か」
 一人相撲取をみたようにでぶ/\に肥った奴が、脳天から噴出《ふきだ》すような甲高《かんだか》い声でわめいた。此奴、唯一人が縞の袷に紺の腹掛をして、肩から斜めにお守袋でも下げているか、細い鎖が動いた途端にきら/\ッとした。
「返答ぶてッ」
 もう一人が口を鳶《とび》のように尖らせて叫んだ。こ奴が妙に痩せていて、片膝を立て、空《から》っ脛《すね》を行灯の前に見せている。その太股《ふともゝ》の上の辺に、南無阿弥陀仏と刺青《いれずみ》をしたのが、かすかに見える。
 二人の対照が余り妙だから、小吉は思わず噴出した。
「こ、こ、この野郎、笑いやがったな」
 そういうと青ッぶくれが、一番端っこにいる豆粒見たような小男へ顎をしゃくった。
 こ奴、そこに突きさしてある抜身の長脇差をつかむと、いきなり真っ正面から小吉へ斬《き》りかゝったものである。
「ほう」
 小吉は笑顔で、体をかわして、前倒《のめ》って行くうしろ襟を引っつかむと、肩車にかけて、そこの土間へ嫌やッという程|叩《たゝ》きつけた。子供が毬を投げたようなものだった。
 対手はそれッきりもうびくとも動かない。残った六人がこれを見ると、蜂の巣をついたようになって、無茶苦茶に斬りつけて来る。右から来たかと思うと左から来る。小吉は始終笑って、その一人ずつから長脇差を奪い取っては、矢場の敷居内の土間へ、一本々々、垣根のように並べて突立てては次の奴からまた奪った。
 いつの間にか、軒を並べたそちこちの家に灯がつく。みんな怖々顔を出しては、こっちの様子を見ている。
 事|茲《ここ》に到っては、黙っていても七人は逃げて行くに定っているのだが、特に小吉をむか/\させる事が一つあった。青ッぶくれの奇妙に甲高《かんだか》い声が、いつぞや平清の招宴の時の大館三十郎にそっくりだし、肥り方が金子上次助にこれも似ている。小吉も詰らぬ事を詰らぬ時にちらっと思い出したものである。
 その青ッぶくれを投げつけて、動けないのを、ずる/\引きずって、川っぷちへ行くと埃《ごみ》でも捨てるように、どーんと隅田川へ投り込んだものである。
 引っ返したら、外のものはもう影も形もなかったが、南無阿弥陀仏の刺青をした奴だけが、まだまご/\していた。小吉は、今度はこ奴をつかんで、やっぱり川へ投り込んで、それっきり、もうお糸とも口を利かず、とっとと屋敷へ帰って終った。
 夜が明けてすぐお糸が垢離場の顔役達と連立って来たが、用はねえ追い返せ、といって小吉は起きもしない。
 お信へは床の中であらましを話して
「あ奴ら真逆死にはしねえだろう」
 と笑った。
 その日の夕刻に吉原の佐野槌のおかみさんがやって来て
「お糸のために飛んだ御迷惑をおかけしまして」
 と、何にかお礼の品を差出したが
「お糸さんの為めではないよ。あんな奴らがちょい/\来ては垢離場のみんなが困るからやったのだ。おかみさんに礼を云われるのは筋が違うよ」
 と、少し不機嫌でその品物を突返し
「だが垢離場には、矢取女などへ紐《ひも》みたようにくっついてふだんはむごく大口を叩いて喰っている若い奴らも大勢居るときいていたが、あゝいう時は唯の一人も面《つら》を見せず、とんとみんな悧巧だねえ。が、それもいゝ、この世の馬鹿はおれが一人で沢山だからね。しかし無駄飯で人間を飼って置く程垢離場も気楽ではない筈だ。今度は一つ、あすこに巣喰って女を絞っている|やくざ《ヽヽヽ》な奴を、おれが一人ずつ、川へ投り込んでやろうかねえ」
 とまじめな顔でいった。
 
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