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父子鷹58

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:八起《やおき》 脂汗を額に浮べて、我鳴り立てる彦四郎を睨みつけて、小吉の顔つきが唯事でない。今にも飛びかゝりそうである。
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 八起《やおき》
 
 脂汗を額に浮べて、我鳴り立てる彦四郎を睨みつけて、小吉の顔つきが唯事でない。今にも飛びかゝりそうである。お信はしっかりと小吉の袖を押さえると、利平治に眠くばせして、二人で離れの居間へ無理に連れて行って終った。
 小吉はどっかと坐って、はじめて拳で涙を拭った。
「お察し申します。でも御辛抱なさらなくてはなりませぬ。麻布の旦那様もお嘆きの余り、あゝした事を仰せなのでございますよ」
 利平治も泣声でそういったが
「父上がお可哀そうだ」
 小吉は、いつ迄も泣きじゃくっていた。
 それから唯生きているだけという淋しい日が平蔵の上につゞく。庭にはぽつ/\梅が咲き出した。これが池へ映って、小吉にさえ絵のように美しいなあと思うような日がある。今日もそんな日である。春の匂いが何処からか忍んで来るようだ。
 彦四郎が来て、父の枕辺から庭を眺めていたが出しぬけに利平治をよんだ。
「おい/\。父上の御|病床《ねどこ》を奥の東の間へお移し申せ。この座敷はな、今日からわしがこちらへ参った時の居間にするから」
「は?」
「父上はもうお眼もお見えにはならん。どこにねていられるも同じ事だ」
「で、で、でも、このお座敷は旦那様が、屋敷中で一番いゝところだとおっしゃって大層お気に入られましてな。お庭もそのおつもりで木一本、石一つもお手ずからお差図なされましたもので」
「それもこれも、すでにお眼がお見えにならんでは仕方がなかろう。女共に申しつけて早々に奥へお移ししろ。あすこもいゝ座敷だ」
「でも」
「わしの云う事がきけんか」
 彦四郎は、じろりと利平治をにらみつけた。
 朝の中だけは陽が当るが一日中何んとなく昏いには昏いが、またそれだけに静かに落着いて、数寄を凝らしたいゝ座敷であった。
 梅が散ったと思うと、いつの間にか庭中の樹々が争うように青葉になって、もう夏が来て終った。
 傍らにいる彦四郎の申しつけで、あれからまた一人ふやした介抱の女、女達ばかりでなく利平治もこの頃では、平蔵の僅かな口の曲げ方や眉の動きで、その気持がわかるように馴れて来ている。平蔵は顔を離れの方へ向けるようにして、二、三度顎をひいた。
 利平治と介抱の女がちらっと顔を見合せた。
「はい/\、わかりまして御座います」
 利平治は、離れへお信と麟太郎を迎えに行った。
 平蔵は麟太郎の手を自分の手へつなげというような様子をした。お信がそうしてやると、じっといつ迄もその顔を見ている。近頃では一と頃まるで見えなかった眼がいくらか見えるようでもあった。涙が眼尻から伝って枕へ落ちて行った。小吉がやって来た。平蔵はまたじっとこれを見つめ、お信を見つめ、それっきりですや/\と眠り出したようである。
 次の日もその次の日も風一つない夏の日。お天気の割に涼しかったが、平蔵の容体が少し変なので医者が駈込んで来た時は、もう万事休すであった。六月七日夕、|八ツ半《ごじ》。
 麻布から彦四郎が精一郎をつれて駈けつけた時は真っ暗になっていたが、昼の間に比べて少し蒸し暑くなっていた。
 小吉はたゞ一人で、庭へ出た。よく平蔵が池の端にある平石へ立っている姿を見たが、小吉も今そこへ立って、空一ぱいの星を見ている。
 半刻も一刻も立っている。利平治がそっとやって来た。
「小吉様、如何なされました」
「利平治、おれはな、今、父上の御生涯はお仕合せであったか御不幸であったか。それを思っていた」
「御尤もでございます。でもそれはこれからで御座います。あなた様のお行末がそれを定めるのではございますまいか」
「うむ?」
「わたくし風情がかようの事を申しては僭越至極。でも、わたくしは、然様に思っておりますよ」
「そうか」
「男谷の御家も彦四郎様の御代になりましては、がらりと変りますで御座いましょう。わ、わたくし、わたくし奴なども——」
「う?」
「しかし乍ら、旦那様は、この世にお二人とはない程の立派なお方様でございました。利平治のような者が長命しても詮もない事、あの御臨終の際は、わたくし奴がお身替り出来るものなればと、しみ/″\思いましてございます」
「お前の忠義は有難い、礼をいう。それに引替えおれは御心配の掛け通しでな。もう終生御番入の出来ないこのおれを、どんなに案じて亡くなられたか」
 池へ蛙の飛込む音がした。
 平蔵の葬いの日は小雨が降った。
 それから七日経って、彦四郎は屋敷の者一同を一間へ集めた。
「小吉夫婦は離れに待っておれ」
 小吉ははいと返事をしながら、流石に兄も疲れている、白髪の多い鬢が油気もなく乱れて頬もげっそりと、痩せたなあと思った。
 日暮れに近く彦四郎は唯一人で離れへやって来た。
「わしは近々に麻布の屋敷を引払って当方へ来る。それについては家職の者にもそれ/″\言渡したが、な、小吉、お前もいつ迄本家の地内に食客同然にしていてはいかん。こゝら辺でそろ/\一本立になる方がいゝと思う。従ってお前ら夫婦も移転をして貰わなくてはならん」
「し、しかし——」
 小吉がちょっと気色ばんだ。
「まあ終いまで聞け。お前の住む家はわしがすでに買求めた。南割下水のお前とは小普譜の相支配、山口鉄五郎の地内だ。この離れよりは広くもあり、都合もよく出来ている」
 今度はお信が何にかいいたそうにしたが、小吉はそっとこれを押さえた。
「今日、明日とは云わん。都合のよい日に引移るよう。金も用意してある」
 彦四郎はそれっきりで立って行って終った。
 小吉はお信の手をそっととった。
「いゝではないか。おれはあの兄とは一緒には暮せぬ人間だ。お前にしても御祖母様、おれは父上に亡くなられた屋敷をはなれるのは淋しいが、それもこれも時の次第で仕方があるまい」
「はい」
「どんなぼろ家でも、こゝにいて朝夕兄にがみ/\云われるよりは結構だろう」
 お信も小さくうなずいた。
 利平治が来たのはそれから間もなくである。行灯の下に、麟太郎は紅い蒲団を敷いて、すやすやと眠っている。蚊遣が焚いてある。
「おう、お、力強うぐんっと脚をお踏ん張りなされて大の字のお姿、小吉様、ひょっとするとこれは麟太郎様は親御勝りかも知れませぬなあ」
「おれがような男に劣られて堪るか、勝小吉は、男の中の下々の下だわ」
「そうではござりませぬ。が、麟太郎様はお産湯の時に、盥の縁を紅葉のようなお手でしっかりとお握りなされて、なか/\おはなしなされなかったので御座りますから——ほんとにお珍しいとその時からのお噂、唯のお人では御座りませぬぞ」
「といって鳶の子に鷹は出来ねえわ」
「飛んでもない、鳶が鷹を産む——ましてや、あなた様からが鳶ではござりませぬ、鷹でございますよ」
 入江町の時の鐘が、ぼうーんと聞こえた。星空だが、雨でもはらんでいるのか、籠った音色であった。
 みんな黙っていた。
 突然お信が、わッと顔を伏せて泣出した。
「これよ」
 と小吉が
「侍の家内は泣くものではないわ」
 といって
「利平治。別れに来たか」
 とはじめて顔を見詰めていった。
「はい」
 と利平治は両手をついて、
「申し上げそびれておりました。御屋敷から御暇が出ましてございます」
「そうか」
「御屋敷へ御奉公を申上げ、お勤め仕ります間は双刀を帯して、武士らしゅうは致しておりまするが、御暇になりますれば、侍ではない、唯の市井の一|老爺《おやじ》。こう年をとりましては行末も凡そは知れておりまする。もう、お目にかかれぬかと思いますと、年寄りの愚痴で唯泣けて参りましてなあ。何にか申上げましたら、涙が出て口も利けなくなりはせぬかと、それが心配でいい出しそびれておりました」
「ふーむ」
 小吉は顎を撫でた。
「死んだ老妻の縁辺《よるべ》のものが甲州街道柴崎というところにおりましてな、玉川のほとりでございますよ。こゝへ一先ず落着いて、それからゆっくりと死場所を定めますつもり。あんなところへ参りましては、もうお目にもかかれぬ事かと——」
「おいッ」
 小吉はびっくりするような声を出した。お信もはっとして顔を上げた。
「利平治、お前は、そんなにおれに愛想《あいそ》が尽きたのか」
「は?」
「それあ、おれはなあ、先きが悪いとは云い乍ら、過失《あやまち》とはいえ人を殺し、皮一枚でやっとこの首が繋がって座敷牢入り、もう金輪際御番入の見込もなく、自然出世の望みもならぬが、これでも何んとか細々でも人がましく、この世を渡って行くつもりだ。どうだ、お前この先きこの小吉と、苦楽を共にして行ってくれる気はないか」
「え?」
「今度の家もどうせ狭いに違いないが、一つの夜具を半分宛に着ている気ならくらしも出来よう。利平治、おれが頼みだ、何処へも行かず、お前おれと一緒にいてくれろよ」
「は、はい、はい」
 利平治のからだは二つに折れるようになって畳へうつ伏して終った。
 麟太郎が眼をさまして泣き出した。お信はあわてて抱き上げて
「おゝ、よし、よし、よし/\」
 小吉も一緒になって、あやし乍ら
「利平治、お前が泣いたりするものだから、麟太郎も泣くではないか。ほらよ、利平の爺ちゃんだ、泣いてはいないよ、笑ってる、笑ってる」
 利平治は泣きじゃくりをして
「ほ、ら、ら、ら」
 麟太郎へ笑顔を見せた。
 こゝのところ雨一滴も降らず、夏の盛りのじり/\照りがつゞいて、庭草が枯れかゝったりしたが、彦四郎は精一郎をはじめ、家来達をつれて亀沢町へ引越して来た。噂では近々に越後の代官をやめて、二の丸御留守居格西丸裏門番頭になるという事である。
 団野先生は去年とう/\亡くなられて、後は小吉の行かない時は門弟達でがや/\やっていたが、これからは、まだ若い精一郎が道場師範の座につく事になった。彦四郎は、平蔵の相続をすると共に、道場を買って、少し建増をした。先生の遺族は外へ引移って終われた。
 今日は、さっきから空模様が少し怪しかったが、黒い雲の一方に青空がひろがって、そよ/\涼しい風が吹いたりしていて先ず大丈夫と思っていたら俄かにひどい夕立になった。篠をつく雨というのはこんな事か、一本々々銀の細い棒でも並べたような大降りである。
「おう、ひでえ」
 両国橋の東詰、幾代餅《いくよもち》の太い縄暖簾を頭で跳ねのけるようにして、草履ばきの巾着切の松坂町の弁治が飛込んで来た。甕《かめ》覗きの手拭で頬かぶりをしているが、もうずぶぬれで水の中から出てきたような風態である。
 ひょいと見ると、これもたった今、こゝへ飛込んで来て手拭で頻りに頭から顔を拭いている逼出し屋の柳島の五助が鼻先きにいる。
「おう、ひでえ。——手前《てめえ》もか」
「橋の真ん中で、ざあーっと来やがった」
「態《ざま》あ見ろ、おれなんざあ、こゝの暖簾の外でちょいとやられただけだ」
「へーん、それにしちゃ滅法なやられ方だな」
 二人はいつの間にか隅っこの縁台へ集って、人目を忍ぶようにして、こそ/\内緒話をはじめていた。
「彦四郎ってもなあ、ひでえ野郎じゃあねえか」
 と五助は
「おれあな、お妾をゆすり損ねて物置へ釘づけにされ、正に危ねえところを小吉さんがずばッとやって来て、口を利いて下さったから助かったんだ。あの人にゃあ、首をいくつ出しても足りねえ恩があるし、第《でえ》一、面目ねえが、おれああの人に惚れちまっているんだ。年あ若けえがあの口上はてえしたものだ。おれああの人の為めなら何んでもやる。彦四郎って奴あ、あの男谷の財産を一文残らず一人占めにして小吉さんを追出した。先代様の残した小判だけでも正味三万両あったてえ噂だ。どうだ兄貴、こ奴あ一つ何んとかしようじゃねえか」
 弁治は眼をぱち/\した。一寸首をふって
「何んとかしようって、どうするんだ」
 五助は一度黙ったが、今度はぶつ/\ひとり言のように
「第一、あんな古くせえ家へ小吉さんを追っ払ってよ」
「だからよ、どうしようってんだよ。おい、対手あお旗本だぜ。お負けに伜の精一郎てのは年は若けえが団野先生の道場の主に坐った剣術使いだぜ。それへお前どうしようってんだよ」
 と弁治は苦虫をかみつぶしたような顔つきでごり/\頭をかき乍らいった。
 
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