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父子鷹64

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:雪の夜 鼻っ先きが幅二間そこ/\の割下水。疎口《はけぐち》のない青錆のういたじいーっとした水面に狭い板橋がかゝっていて、
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 雪の夜
 
 鼻っ先きが幅二間そこ/\の割下水。疎口《はけぐち》のない青錆のういたじいーっとした水面に狭い板橋がかゝっていて、それを渡ると津軽屋敷の裏塀になる。そこ迄五助を引っ張るようにして行った小吉は、不意に
「お前が、おれが仲間だと、神主共に感づかれては拙いじゃねえか。当分来ねえが良くはないか」
 とそういって
「おい、泣く事はない、蔭へ廻って、おれや弁治が、またどん/\と講中を寄せて歩金をお前にやる事だから心配するな」
 五助を抱くようにしてとん/\と肩を叩いてやった。
「あっし故に勝様にあんな迷惑をかけては死んでも申訳ないのですよ」
「何にをいってる。とんと腹の悪い奴は神主と大竹だ、お前はかゝり合うな」
「へえ。でもねえ。元々あゝたが亥の日講に骨を折って下さるのは、あっしを助けて下さる思召しからなんですから」
「強請屋が気の弱いこったの」
 と小吉は笑って
「ところで、弁治もそうだが、お前もおれがところへ姿を見せてはいけない。おれがお信に叱られたわ」
「へ?」
「巾着切だの強請屋だのは固よりの事、凡そ人相のよくねえが、麟太郎の眼に映ってはいけないと、お信が兄にきびしく云われている様子よ」
「へえ。と申したところで」
「黙ってそういう事にして置け」
 日が経つ。
 詫びはいれたが小吉はどうにも神主と大竹の腹が気に入らないので、自然に摩利支天へも足が進まない。人の噂では、小吉が連れ込んだ連中は固より、だん/\講中が減って眼に見えて大層なさびれようだという事だ。
 この年の瀬が近づいて来る。
 小吉は石原町の大旗本徳山五兵衛の稽古場にこの頃柳剛流をよく使う大川という摂州人が滞在して、望みのものには喜んで教えているということを耳にした。近くもあるし早速出かけて行った。
 その晩はひどく寒く時々ぱら/\と大粒の雨が降ったが、更けたら霙にでもなるかも知れない。
 徳山の裏門を入り、稽古場へ近づくとわあ/\と大勢の人声がする。
「柳剛流かあ」
 小吉は、途端にふふンというような顔をした。
「江戸っ子が脚を払う剣術を考え出したかえ」
 流祖岡田惣右衛門は江戸人だ。これがはじめ伊庭家の心形刀流《しんぎようとうりゆう》を学んだが、所詮剣術は戦場の実用に適すべきである。道具を備えたところばかりの撃合《うちあい》をしていても、いざという場合には何んにもならぬ。従来の剣法をあき足らずとして新たに脚を斬るの術を工夫して自ら一派を名乗った。
 小吉はかねてこの流儀には余り胸糞はよくなかったが、今夜は一つひやかして見るつもりもある。それに一度流祖の惣右衛門に出会って見たいと思っていたのがいつも諸国を修行中で、とうとうその顔を見る機をさえ得ずにいる間に、去年俄かに病んで歿して終った。それやこれやでやって来た。
 小吉の姿を見ると、勝先生だ、勝先生だ、そんな囁き合う人々の声がした。
 柳剛流の大川は四十をすぎた色白の人物だったが、木剣の一応の型を披露してから、今、巻藁を出して、居合斬りを見せようとしているところであった。好人物のようであった。
 道場の真ん中で真剣を頭上に真っすぐに押し立てて、心機合一、そしてぱっと気合の裂けるのを待っているところであった。
 小吉は一礼して、一隅に坐ってじっとこれを見た。
「出来る」
 思わずつぶやいた。敵の脚を払うなどという吝ン坊な剣術と、一見もせずにふだんひどく軽蔑していたがこの大川の居合の構えをちらりと見ると、それだけで頭が下った。
 実に見事な巻藁斬であった。その一つ/\が恐らくは長さが一分とは違っていまいし、その早さもまた眼にもとまらぬ程であった。
 小吉が山田流据物刀流を大成した名人首斬の五世山田浅右衛門吉睦のところへ通い出したのはその次の日からである。それ迄は剣の中に見のがしていたものがあったのだと、それからのちよく逢う人毎に話した。
 もう年の暮で正月に間もないというのに一夜も欠かさず麹町平河町の山田へ通った。江戸中で何処の大名屋敷よりも一番多く燈芯油を使ったといわれるこの家は、浅右衛門は刀法の外に文字も深く「蓮の露集まれば影やどるべし」と辞世を残した程の人物だが、夜を徹して酒を飲み、いろいろな町の遊芸師匠が織るように出入していたが、それでもまるで遊び事のようにして教える据物斬、居合抜刀の術は実に精妙を極めたものであった。
 正月になった。
 朝から薄どんよりと曇って、妙に底冷えがしていたが、小吉が割下水を出る頃にはまだ降り出してはいなかった。
 それが今夜に限って浅右衛門がまた大変な上機嫌で、まるで自分の子供にでも教えるように一生懸命稽古をしてくれて、だいぶ更けてから、その屋敷を出ようとしたらいつの間に積ったのか、四辺は真っ白い雪景色だった。
 でっぷりと二十二、三貫もある肥った浅右衛門は酒焼けのした赫ら顔をほころばして
「ひどい雪だ。これから無理をして本所まで帰る事もあるまい。今夜は屋敷へ泊ったらどうだ」
 といった。
 小吉は
「は。何あにあちらで合羽を拝借して参ります。子供の頃に深川油堀から駿河台の鵜殿甚左衛門先生のところへ通いましたが、家へ帰る迄にからだ中真っ白になり、正体もなくたどりつき、ほっとしたので、泣き出しましてな、その時に兄の彦四郎に、いざという時の役に立ついゝ修行だ、泣くとは何んだといって、ひどくぶちのめされた事がある。先ずそんな処で今夜は帰りますよ」
 といった。泊めて貰うのも有難いが、そうなったら、一滴ものめない自分が夜っぴて大酒家の対手をさせられるのは明らかだし、第一、家では麟太郎を抱いたお信や利平治が、心配しながらいつ迄も/\も待ち明かすだろうと思うと、それも気になる。
「そうか」
 浅右衛門は三段に折重なっているような襟首をそらせて
「酒の伝授もしようかと思うたが駄目か」
 から/\と笑った。
 門を出て気がついたら何処かで時の鐘が鳴り出した。
「おや、もう|四つ《じゆうじ》だわ」
 小吉は、下郎の合羽でも借りるつもりが、浅右衛門が、羅紗の合羽、頭巾も同じ羅紗のを貸してくれた。贅沢極まるものだ。寸法が子供が大人の物を着た程でもないのは、当の浅右衛門の物ではなく、この人の伜三人の中の二人までが家出をして終っているので、その誰かのであったのかも知れない。
 ちら/\ちら/\雪が降りしきる。しかし両国橋をすぎる頃は、べっとりと汗ばんで時々頭巾の前をひろげて、頬へ雪を受けたりした。
 下谷辺りに火事があって、ぱあーっと雪空が紅くなったが、いゝ塩梅に一軒焼けだったと見えて、そのまゝ空がまた元の黒さにかえって終っている。
 両国橋を渡って広小路の右側が尾上町、左側が藤代町でこゝへ渡るのが昔は本所七不思議、片葉の葦の小さな駒留橋、その橋の袂に夜泣蕎麦屋が二人、雪の上へ同じような荷を二つ下ろし、もう一人赤合羽に饅頭笠の橋番らしい老人の男が立って頻りに首をふり乍ら話している。
 小吉が、思わず、ぎくっとして立ちすくむと、藤代町の町家の角にからだを隠してじっと瞳をそっちへ定めた。
 お定まりの大きく的を書いてその真っ心《しん》へ矢の通っている当り屋という行灯。その灯が不思議に流れて一人の夜泣蕎麦屋に当っている。頬かぶりをしているので、はっきりとはわからないが——これがどうも利平治だ。
 こっちで小吉は、ためつ、透しつ
「あ、やっぱり利平治だ」
 胸がこみ上げてすうーっと涙が瞼に溢れて来た。涙を払ってまたじっと見る。もう一人は強請屋の五助、一人はやっぱりなじみの橋番のおやじらしい。
「ふだんお前さんには世話ンなるんだ。銭なんざあいらねえよ」
 というのは五助。
「いや、商売もンをそんな事をして貰っちゃあいけねえよ。さ、銭をとっておくれ」
 橋番は何文か鐚銭を出すがこっちは受取らない。暫く押問答をしていたが、とどの詰りは橋番が敗けた。
「あした松坂町の弁治兄貴が通ったらね、あっしのところへ寄ってくれるようにことづけをしてお呉れよ」
「いゝとも——しかし弁治も近頃はお役向の通りもよく大層ないゝ顔になったが、それだけに気をつけなくちゃあいけねえよ。茅場町の屑寅さんがにらんでるようだから」
「屑寅が?」
「江戸八百八町に何百てえ岡ッ引だが、あの親分は」
 と橋番は四辺を見て、
「少々、銭に穢ねえ方だからね。弁治も付届けを怠っちゃあいけねえよ」
「そう/\。よく云って置く」
 橋番は橋の方へ戻って行く。
「寒いから気をつけなよ」
 声だけが、本当に寒そうに後へ残った。
 利平治と五助とそこへしゃがんで何にやら小さな声で少し話合っていたが、やがて二人が一緒に荷を肩にした。利平治はちょっと腰が定まらない。
 立った途端に、小吉がぱっとその前へ飛出して行った。
「利平治」
「あッ!」
「すまない。おれは手を合せて拝むよ」
「と、と、飛んでもない」
「おれは馬鹿だ。斯く迄お前に苦労をさせているとは今が今まで気がつかなかった」
「小、小、小吉様」
 利平治はへた/\と崩れて、蕎麦の荷からはなれて雪の上へ坐って終った。小吉はあわててそれを抱き起こし
「勘弁しろ、あしたからおれも働く——五助、礼をいうぞ。定めし利平治がお前に面倒をかけた事だったろう」
「い、い、いや/\」
 といいかけて、五助は、わっと大きな声をあげて泣き出した。
 小吉も泣いた。
「お前達のそんな苦労も知らぬ顔に、剣術の居合のと、毎夜家をあけ歩いているおれが事を思うと、身を切られるようだ。利平治、明夜からその夜泣蕎麦はおれが売る」
「何にを仰せられます」
 と利平治は
「この利平治なれば何にをしたとてよろしゅうござりますが、旦那様は御旗本、こんな事はなりませぬ」
「御旗本であろうが何んであろうが、蕎麦を売歩いてならぬという事があるものか。まして、おれがように、生涯この世の下積みで送らなくてはならぬ男がよ」
「いゝえ、なりませぬ。そのようなことを遊ばして、麟太郎様が夜泣蕎麦売りの子だと云われてもよろしいのでござりますか」
 小吉はがくっとして口をつぐんだ。
 利平治は深川の冬木弁天の社家内で毎夜近所の子供を集めて学習をしているといっては、雨の日も風の日も割下水を出て行っていた。
「この頃は追々と弟子子《でしこ》が殖えましてな。近所の商家のものが店を閉めてから参るものなどありまして、とても四つまでに戻る事は出来なくなりました。その代り、ほら、このように謝礼なども多くなりまして」
 そういっては、わざ/\水引をかけた銭などを、毎夜のようにお信の前へ出してよろこばせた。その話がそのまゝ小吉にも伝えられていたのである。
 かねて利平治は文字が上手だ。小吉はその話をそのまゝに受けて、馬鹿な話だが本当に少しも疑わなかった。
 妙な顔で連立って家へ戻って来た二人を見てお信が
「何事かござりましたか」
 ときいた。利平治は、ちゃんと袴をはき、大小をさして雪をよける傘をさしていつもと変らぬ姿になっていた。
「途中で逢ったわ」
 と小吉は作り笑いをして
「どうだ、これを見ろ、貧乏の身に染みたようなこのおれでも、羅紗の合羽に頭巾を着たら立派であろう」
「ほほゝゝ」
「山田浅右衛門という人も諸家の依頼で罪人を試斬り、大層な金になるそうだが、それにしても贅沢なものだ。が、そうは云うがあれだけの据物の腕は何百年に一人というものだろうからなあ。あ、そう/\利平治、お前はおれと違ってこの雪に薄着、まして寺子達の面倒で骨が折れた事だろう。さ、遠慮なく先きにねるがいゝ。寝るといっても夜具も薄く、炬燵、あんかもない境涯、すまねえなあ」
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