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父子鷹83

时间: 2020-09-27    进入日语论坛
核心提示:清境 精一郎は、そんなつもりでいったのではない。が、何んとなくそう見えたのは本当だ。小吉も、また自棄《やけ》っ糞にいうが
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 清境
 
 精一郎は、そんなつもりでいったのではない。が、何んとなくそう見えたのは本当だ。小吉も、また自棄《やけ》っ糞にいうが、無性にむか/\すると一緒に自分にもわからないあたゝかなものが胸に溢れているのが本当である。二人は思わず笑顔をかわし、何にもいわずに一礼して別れた。
 入江町へ戻るとおろ/\泣いてでもいるかと思ったお信は案外にこ/\していて
「妙見へ満願の日に麟太郎が退るとのお知らせは、何にかそこに神仏のおぼし召しがあるような気が致されます。御落胆なさる事はございませぬ」
 こんな事をいった。そして
「永い間御苦労でありましたねえ」
 と麟太郎を抱き寄せて思わず頬ずりした。
「御殿の御奉公は楽しゅうありましたか」
「はい。でも阿茶の局様は、奉公は辛いものぞといつも/\仰せでありました。わたしは、そうは思わなかった」
「お偉い事でした」
 小吉はこっちから
「おい、甘やかしちゃあいけない。甘やかすと、麟太郎もおれがような人間になるよ」
 そういって泣き笑いをした。笑おうと思ったのだが、自然に瞼がうるんだのだ。
 それから七日経った。
 小吉は、そっとお信に耳打した。
「大した奴だ。青雲を踏みはずしても、この度胸ならこ奴物になるかも知れねえよ」
 麟太郎は、別に、家へ帰って来た事を悲しみもせず、といって別に喜びもせず、絵双紙の話でもするように、淡々と御殿の様子を母へ語った。阿茶の局は固より大勢の女達の取りすましたもののいい方や、拵え事をいったり、隠し事をしたりする話をすると、手を大きく開いて、それを頭へかぶせるように押さえ
「埒もねえわ」
 といったりする。これはおやじの小吉そっくりの真似である。
「まあ、この子は」
 お信が笑うと、麟太郎はつーんと取澄まして知らぬ顔をした。
 八日目の朝である。暖いが雨催いで、如何にも春らしい。
 出しぬけに、家来をつれて彦四郎がやって来た。例の如く眉を八字に寄せて、近頃は少し左の足が不自由らしく顔色も余りよくないが、座敷へ通ると直ぐ
「お前達夫婦へ念を達したい事がある」
 と茶も出さない中にそういった。
「は。何んでございましょう」
 と小吉。
 彦四郎は一度息をした。そしてまた咬みつくような調子で
「どうじゃ、麟太郎を世に出したいか、それとも四十俵の小普請で終らせたいか」
 小吉は、黙っていた。解り切った事をきいてるわ、そんなものがちらりと口辺に閃めいた。お信はそっとうしろから小吉の尻をついた。何にか御返事を申さなくてはよくないというのだろう。
 が小吉は
「ははゝゝ」
 と笑っただけであった。彦四郎はいっそ眉の八字を深くした。
「一旦御殿へ上った麟太郎だ。わしはどうしてもいつの日にか必ず御殿へ参入の侍にしたい。それについては、お前らのところに置いては駄目だ。麟太郎は、唯今からわしが亀沢町へ連れて戻る」
「は?」
「学問も武術も充分に仕込む。お前らは、今日限り、麟太郎はわが子ではないと思え。いゝか、近寄るまいぞ」
「と、と、申して」
「黙れッ。いつもお信へは申した。眼にもろ/\の不浄を見ず、耳にまたもろ/\の不浄をきかず、清境に麟太郎を成人させる。異存あるか」
 小吉とお信は顔を見合せてうつ向いた。
「不承か」
「いゝえ」
 お信にしては珍しく、小吉を差置いたように
「有難い事でございます。何分ともよろしゅうお願い申上げまする」
 畳へ額をすりつけて礼をするのを見乍ら、
「小吉、どうだ」
 と彦四郎はいよ/\咬みつくようにいった。
「有難い事です」
「はっ/\/\は」
 彦四郎は高っ調子で会心の笑いを発しその場からやがて麟太郎の手を引いて帰って行って終った。
 麟太郎は、にこ/\しているだけで、何んにもいわなかった。お信は何にかいおうとしたらしかったが、小吉は笑い乍ら
「兄上がところは直ぐ鼻の先きだ。改まって別れの挨拶でもあるまい。麟太郎も、先ず此家《こゝ》にいて、もろ/\の不浄をきかねえだけでも仕合せだよ」
 と押さえた。
 その晩、仕立屋の弁治が、何枚か小吉の晒木綿の肌着を拵えたのを持ってやって来た。
「ほい、お前なんざあ、すんでの事、またおれがところへ来られなくなる場合だった。いゝ塩梅《あんべえ》に麟太郎が兄のところへ行っちまったわ」
「へ?」
「こゝへ置いちゃあ、お前らがように碌な奴が来ねえから、巾着切にでもなられては困ると連れて行かれた」
「ご、ご、御冗談でござんしょう。御新造《ごしん》さんにみっともない。わたしはもう巾着切ではございませんよ」
「だが、お前がへえって来ると、どうもぷーんと他人様《ひとさま》の巾着の臭いがするがねえ」
「か、か、勘弁しておくんなさいよ。勝様」
「ほんにもうそのような事をおっしゃるのはお止しなさいましよ」
 お信が脇からいった。小吉はにやっとしてそれっきり黙った。
「ですけれどもね御新造さん。若様がおかえんなすったと思ったら、今度は男谷様の方へでは、またお淋しい事でございますね」
「馬鹿奴、おれは淋しくなんざあありゃしないよ。だがな、唯、何んだか、眼の前へちら/\していたものを、横から出て来た奴がすっともって行って終いやがった、そんな気持よ」
 小吉は口の中で舌を丸めて、すうーっとそこから息を吹いた。笛のような小さな音がした。
「だがな、兄が云う通りやっぱり小さな魚は清い流れの中に育てなくちゃあ泥っくさくていけねえだろうのう」
「さようで御座います」
 というお信へ
「さて、水清くして魚棲まず。麟太郎奴、あの生きた本箱の傍に住み切れるかな」
「さあ、わたしもさっきからそれを心配しているのでございますよ」
「何あに大丈夫でございますよ」
 と弁治は
「利口な若様です。辛抱をするとなったら、きっとどんな御辛抱でもなさいます」
 ぺこ/\しながらいった。
「こ奴」
 と小吉
「麟太郎が事を碌に知りもしねえで、詰らない世辞を云いやがる。子を見る事親に如かず。あ奴あどうして/\、曲ったら梃子《てこ》でも動く奴ではねえのだぞ」
 弁治が帰りかけた。小吉が出しぬけにいった。
「おい、お前がところはまだ子は出来ねえのか」
「え? へっ/\/\」
「何んだこ奴、気味の悪い笑い方をしやがる。どうだ」
「まだです」
「馬鹿奴、それ位の事が出来ねえのか、もちっとしっかりしろッ」
 お信が笑い出す。弁治は、そうおっしゃったって、思うようには参りませんよとか何んとか口の中でぶつ/\いって戻って行った。
 岡野の殿様はあれっきり沙汰もない。しかし梅屋敷の殿村のところで清明と暮しているに定っているから凡その事は知れている。にっちもさっちも行かなくなれば、また洒々として現れるだろう。
 それよりむしろ不思議なのは隣りの岡野の屋敷の方だ。割に義理堅い奥様《おまえさま》までが、こゝのところ、ちっともお顔をお見せならないし、主計介の孫一郎も挨拶一つない。
「来ねえが花よ」
 小吉は、ふンというような顔つきをしてひとり言をいったりした。
 暖い朝で、春の陽がちか/\ちか/\庭一ぱいに溢れて、小吉は縁側へ出て、右肩をぬいで、新しい木刀を木賊で頻りに磨いていた。
 鶯が鳴いた。何処だかはっきりわからないが、毎朝必ず来る。
「下手ッ糞奴、ホケホケホケとぬかしゃがるわ」
「あれは去年も参りましてございますね」
「そうだったかなあ」
「ほほゝゝ、去年もあれを、同じ鶯に生れ乍ら、あんなのもある、人間にすれば、丁度おれがようなものだとおっしゃいましたよ」
「ほんにそうだ」
 玄関へ誰か来た。
 聞いた事もない太い声だ。小吉はちらっとお信を見て、首をかしげ、肌を入れると、膝前の木の粉をはたき落し乍ら出て行った。
 四十位の鼻が鳶のように尖った男が立っていた。小鼻の両脇が深い皺で薄い唇を無理に引きしめて。侍である。
「勝小吉はわたしだが、御用は?」
「は、これはお初にお目にかゝります。わたしは岩瀬権右衛門と申し、此度岡野孫一郎様御用人と相成りましたにつきまして御挨拶に罷り出ました。お見知り下されたい」
「岡野の御用人? はっはっは。これあ大層なことだ。こちらは地借《じがり》よ、御丁寧に痛み入った」
「よろしく」
 と岩瀬はそういって、三白眼の嫌やな眼で、小吉を見た。
 小吉はそれをじっと見返していると、対手は忽ち目を伏せた。
「奥様《おまえさま》のお姿をちっともお見掛け申さないが、お変りはないか」
 岩瀬は黙っている。
「おのし、こちらの事はどうあろうと余計なお世話だというかも知れないが、おれは御隠居に頼まれてね」
 岩瀬は眼をぱち/\ッとした。そして低い声で
「こゝのところ御病気でずっとお伏せりでござる」
 といった。ほう、と小吉は一寸びっくりした表情で
「それはいけない」
 と、いったまゝ、くるりと岩瀬へ背中を見せて奥へ入りかけた。
「あ、一寸、勝様」
「何んでえ」
「殿様の仰せですが、当孫一郎は江雪様御当主の折とは諸式万端改めます。以後はこれ迄と御同様はお断り申すとの事で——」
「孫一郎も大層偉くなるわ。そうか。結構だ」
 小吉はそのまゝ引込んだ。
「奥様は御病気でございますか」
 お信が待兼ねて訊いた。
「そうだとよう」
「おかしい/\と思っておりました」
「が、見舞に行くはいけねえよ。云わばあの口上はおれがところへの岡野へ出入留だ。大馬鹿奴が」
「はい」
「何あに、直ぐに泣きッついて来やがるよ。借財が五千両の上も出来てにっちもさっちも行かぬあの貧乏を、用人にも何にも今のような奴らにどうなるものか。岡野は諸式万端改めますとよ。大笑えさ」
「はい」
「主計介というも余っ程の大阿呆よ。あ奴、いつか千五百石の御大身というに父子で殴合をしておやじが眼をやられた、瞼の中に血がにじみ出ていたっけが。あの時の主計介の面が見える。ひょっとしたらあ奴気違げえかも知れねえな」
「そうで御座いましょうか」
「とにかく奥様はお気の毒だが、お前、当分行ってはならぬぞ」
「かしこまりました」
 少しの間、何処か梢を渡り歩いていたらしい鶯がまたその辺へ来たようだ。頻りに鳴いている。ホウー、ホケホケホケ、やっぱりひどく下手だ。
 それから十日。
 朝からの煙るような糠雨。その雨にびしょぬれになって麟太郎が唯一人、突然、入江町へ帰って来た。
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