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受精35

时间: 2020-09-30    进入日语论坛
核心提示:35 ツムラは十一時半に明かりを消した。 Tシャツに半ズボン、ソックスにキャラバンシューズといった服装だった。荷物はリュッ
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35
 
 ツムラは十一時半に明かりを消した。
 Tシャツに半ズボン、ソックスにキャラバンシューズといった服装だった。荷物はリュックひとつで、その中には着替えと水筒、携帯電話を入れている。しかし何といっても一番重いのは小型の冷凍庫だ。四重底になっており、マイナス四十度を四十八時間は維持できる。リュックの中味を怪しまれた際、冷凍食品の容器だと言い逃れするつもりでいた。
 暗い中でじっと待った。万が一監視されていた場合、相手が何かの動きに出るとしても、消灯後しばらくしてからだろう。そのときはベランダから縄《なわ》梯子《ばしご》を降ろして、速やかに脱出するつもりでいた。
 十分経過する。変わった物音はしない。もうしばらく待つことにした。
 サカガミからの連絡は、十一時少し前にはいった。三人を無事アストリア・ホテルまで連れ出し、部屋で休んでもらっているという知らせに安堵《あんど》した。
 三人に動揺はないかと訊《き》くと、最初は不安がっていたが、今のところおさまったようだと、サカガミは答えた。こちらの指示通り、舞子が骨折ってくれたことに、ツムラは感謝したかった。あとは自分が脱け出し、明朝、検察の手入れがあるのを待つだけなのだ。
 十二時過ぎにはアストリア・ホテルに到着するとサカガミに告げて、ツムラは携帯電話を切った。
 今のところ、すべてがうまく運んでいた。
 サルヴァドールの検事と刑事たちも、二、三十人、病院周辺のホテルやペンションに分宿しており、今頃は持ち場での予定行動の詰めを急いでいるはずだ。
 室内を暗くしてから既に二十分以上経過していた。車を停めているのは、幹線道路の手前の小径《こみち》で、宿舎からはゆっくり歩いて三十分はかかる。駐車場所はサカガミにも説明しておいた。
 立ち上がり、暗がりの中を廊下に出た。静かに戸を閉め、鍵《かぎ》をかけた。途中で同僚に会えば、これから登山に行くと言えばいい。夜通し車を飛ばしてアラゴイニァスまで行き、三時間かけて頂上を目ざし、午後に下山、明日の晩までにはここに戻って来られる。どの同僚も不審には思うまい。
 階段を降りきるまで誰にも会わなかった。
 バラ園の方に行きかけたとき、向こうから男が二人近づいて来るのが見えた。
 警備員だった。ツムラはさり気なく向きを変え、夾竹桃《きようちくとう》の樹木の陰にはいる。迷ったあと、宿舎の壁沿いに川の方に向かった。
 その瞬間だ。背後で笛が鳴った。初めは何の合図かと訝《いぶか》ったが、警備員のいた方向で人の叫ぶ声がした。もうひとつ続いて同じ笛が鳴る。
 ツムラは走り出す。どうして追われるはめになったのか分からぬままに、必死で足をたぐる。後ろを見る余裕などない。リュックを背負っている分、警備員たちよりは不利だった。
 建物の陰を出、細長い庭を横切ろうとしたとき、海辺の方角で、また笛が鳴った。包囲されているのだろうか。猟犬の群と同じく、何組かの警備員が駆け寄って来る光景が頭をよぎった。
 川岸の竹藪《たけやぶ》に逃げ込む。そのまま川の中に降りた。幅は十メートルもなく、対岸には砂洲《さす》もできている。腰まで水につかりながら渡り切り、砂洲を避けて水の中から直接岸によじ登った。
 海とは逆の方角に走った。真直ぐ行けばリゾート・ホテルにぶつかるが、そこも避けた。真夜中の客を受け入れてくれるはずはなく、物陰に隠れても犬に吠《ほ》えられるだけだ。
 走りながら耳を澄ます。もう笛の音はしない。警備員たちはトランシーバーで連絡し合っているのだろうか。
 停めている車までは、走れば十分足らずだ。しかし国道|脇《わき》を歩くのは人目をひく。うまく行き着いたところで、自分の車を運転するのは危険だ。警備員のうち何人かは、もう車で国道沿いを見張っている可能性があった。
 雑木林の中に身を潜めた。どちらに逃げるべきか考えた。時間が経てば経つほど不利になるのは確かだ。サカガミや刑事たちが泊まっている村まで行けば安全だが、病院の正面の道を通らねばならない。海沿いの道は既に見張られているはずだ。陸地寄りを行くには池を迂回《うかい》する必要があった。一時間以上はかかり、しかも途中で国道に出る。
 最も確実なのは、サカガミに来てもらうことだ。そう決心して、ツムラは雑木林の縁からもう一度川岸の方の様子をうかがう。人影はなく、音もしない。警備員たちは病院の敷地内を探しているのかもしれなかった。
 下草をかき分けて雑木林の中を進んだ。半ズボンの足に、棘《とげ》のある葉が当たる。歩きにくいうえに音が気になった。
 十分ほどして雑木林の端に出た。目の前に国道があった。車の往来はなく、道は右も左も暗闇《くらやみ》の中に溶け込んでいる。
 道の向こう側に隠れる場所がないか、目をこらした。
 右側の闇に明かりがさす。ヘッドライトが見えた。光の束をわずかに上下させながら、車はぐんぐん近づいて来る。乗用車ではなくトラックのようだ。
 ライトに道の両側が浮かび上がる。左前方に、制限速度を示す標識が立っていた。そのすぐ傍に灌木《かんぼく》の茂みがあり、人ひとりくらいは姿を隠せそうだ。
 車が行き過ぎたあとの暗がりに紛れて、ツムラは雑木林から飛び出す。道を斜めに横断して、灌木の陰にしゃがみ込む。呼吸を整え、背中からリュックをおろした。
 携帯電話を取り出し、ボタンを押す。応答を待つ間に、右側の暗闇にまたヘッドライトが現れる。道の輪郭を露《あらわ》にしながら、乗用車が近づいてくる。
 そのまましゃがんでいれば、自分の姿が露見しそうに思われ、ツムラは草の上に仰向けになった。
「サカガミです」
 相手が出た。
「ぼくだ。さっき宿舎を出たばかりだ」
 車の音と共に、ヘッドライトの明かりが頭上を通り過ぎ、周囲はまた元の暗がりに戻った。
「どこにいる?」
 サカガミから訊かれたとき、ツムラは人声を耳にしたような気がした。
 上体を起こして、道の向こう側の暗がりを凝視する。二人の男の姿が見えた。ひとりはトランシーバーを口に近づけ、何かしゃべっている。
「まずい、あとでな」
 ツムラは短く伝え、スイッチを切った。
 灌木の陰に身を隠し、二人の様子をうかがう。
 恐らく、宿舎を出たときに出くわした警備員だろう。敷地内を探し回ったあと、砂浜沿いに川を渡ったのに違いない。
 ひとりが懐中電灯をつけた。彼らとの距離は、道を挟んで、対角線上に三十メートルほどだろうか。二人が向こう側にいる限り、懐中電灯の光は灌木までは届かない。しかしこちらに渡って来れば、どう巧妙に隠れたところで、光から逃れられそうにはなかった。
 ツムラは静止したまま、待った。いよいよのときは、リュックを置いて逃げるつもりでいた。
 またヘッドライトの光が左の闇の奥に立ち現れる。上り車線のヘッドライトは、灌木をそのまま照らし出す。正面の雑木林から見たときは、姿を隠すのに充分だと思ったのだが、斜めからだと死角の幅が減った。微妙に移動して死角の中にはいらねばならない。
 二人はまだ立ったままだ。トランシーバーを耳に当てている男は、周囲を警戒しながら指示を待っている。
 左側のヘッドライトが接近してきて、路肩を照らし出す。男二人はまだこちらに気づかない。
 暗がりを移動して後方に下がるべきか、迷った。もはや雑木林の方には戻れない。逃げるとすれば、草むらのなかを這《は》って後退するしかない。比較的灌木が厚い場所までは二、三十メートルだろうか。リュックを引きずっての移動は骨が折れそうだ。
 再び左側にヘッドライトが現れていた。懐中電灯を持った男が、ヘッドライトに向かって腕を大きく旋回させた。白っぽい乗用車はツムラの前でUターンする。乗っているのは運転手だけだ。向こう側で停車し、助手席にトランシーバーの男、後部座席に懐中電灯の男が乗り込む。そのまま病院の方角に走り去った。
 ツムラはリュックを肩にかけ、暗がりの中を後方に移動する。灌木の茂みまでは車のライトは届かない。捜査用の犬でも使わない限り、この位置を発見される心配はないだろう。
 携帯電話のボタンを押してサカガミを呼び出した。
「心配した。大丈夫か」
 くぐもった声でサカガミが答える。
「危ないところだった。今何時だ」
「十二時半」
「もうそんな時間か」
「どこにいる」
「国道沿いの林の中だ。警備員たちに感づかれ、このままだと動けない。自分の車のところにも行き着けそうにない」
「迎えに行く。正確な場所を言ってくれ」
「車を停めていた所は知っているね」
「あのあたりか」
「いや、そこまで行かない。四、五百メートル手前だ。速度制限の標識が立っている。その前で車を停めてくれ。もちろん明かりを消してだ」
「分かった」
「但し、他にも車が走っていたり、付近に人がいる場合はそのまま通過していい。しばらく行ったところで電話を入れてくれ」
「すぐ行く」
 電話が切れる。
 暗がりの中で待った。
 星が出ている。今まで気がつかなかったが、月は見えず、満天の星だ。
 このまま何事も起こらずに時間が過ぎてくれればと思う。
 この位置から、速度制限の標識と灌木は見ることができる。しかし道路の向こう側の様子は、立ち上がらなければ見えない。
 ツムラはもう一度路肩の灌木のところまで戻ることにした。
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