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ぐうたら人間学46

时间: 2020-10-31    进入日语论坛
核心提示:下品会 この三年、春になると野暮用が出来て外国に行く。日本の桜が咲きかけたころに出かけて、桜が散ったころに日本に戻る。今
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 下品会
 
 この三年、春になると野暮用が出来て外国に行く。日本の桜が咲きかけたころに出かけて、桜が散ったころに日本に戻る。今年もローマからイスラエルに出かけ、戻ってみると、桜は半ば以上、散り、葉桜になっていた。
 私は前からドンチャン騒ぎの花見に憬れていた。長屋の花見という落語に出てくるように仮装してくりだし、飲めや、歌えやの大騒ぎをするような花見をやりたいものだと考えていた。
 そこで四年前の春、若い友人たちに、
「どうだ。花見に行かないかな。面白い趣向で遊ぼうじゃないか」
 と言うと、
「やりましょう」
 と応じてきた。
「しかし、ただ、花見をするのでは面白くないぞ。できるだけ、ゲヒンにやろう。ゲヒンに」
 私は前に「下品会」というのを作ろうかなどと考えたことがある。たとえば年とった時、私は和服の上にラッコの皮のついた二重まわしを着て、酒場などに行き、
「チップをやるべい」
 などと言って大きなガマ口から一円玉を出してテーブルにパチンと音をたてておいたり、飲屋に行って、飲みほした徳利の口を掌にあてて、その滴を舐め、皆のヒンシュクを買うようなことをする。また、この『夕刊フジ』の美人記者のYさんにたのんで彼女はメイセンの着物を着て、色足袋に下駄をひっかけ、髪にたくさん金属のカーラーをつけたままで、袖口に手を入れ、私と一緒につれだって歩くようなことをすれば、どんなに面白かんべいと考えるのであった。
 そういうゲヒンな形で花見をしたいと後輩に言うと、彼等は大悦びで、
「やりましょ、やりましょ」
 と叫んだ。
 当日の夕暮、私はズボンに黒足袋をはいて草履をひっかけ、半天をひっかけて千束の池で皆とおちあった。皆も思い思い、妙な姿でやってきた。
 花はまだ七分咲きで、風が少しあったし、日が暮れていないので、池のほとりには客がまばらである。
 ムシロをしいて、酒瓶をころがし、食べものを並べて、皆でできるだけ品のない大声で、
  月が出た 出たア
  月が出たア
 と手をうって、歌いはじめた。
 通りがかる人たちは笑いながら見るか、若い娘たちは、イヤねえという顔をして避けて通る。
 このイヤねえという顔を若い娘にされると、私は嬉しくって嬉しくってたまらないが、若い友人たちはまだ修養が足りないせいか、一瞬、ひるみ、恥ずかしそうになる。それをシッタして、
  月が出た 出たア
  月が出たア
 しかし、一時間ほどすると、まわりには同じような花見客がムシロをしきはじめ、酔った連中が手をうって、唄を歌いはじめた。なかにはウクレレやアコーディオンを持ってきて合唱する若い男女グループもあれば、三味線持参の中年グループもあり、はじめ、その下品な声ゆえに注目されていた私のグループの影はすっかり、薄れてしまった。
「チェッ、面白くねえや」
 と一人がつぶやいた。
「こうなれば、ヤケのやんぱちだ。喧嘩の真似をしよう。そうすれば、我々は目だつかもしれん」
 馬鹿なことを思いついたものである。
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