人魚姫はションボリして城に帰ってきましたが、どうしても王子のことが忘れられません。そこで、魔女の所へ出掛けると、人間の女にしてくれるよう頼みました。魔女は願いを聞くと、こう答えました。
「わたしの力を持ってすれば、人魚のしっぽを人間のような足に変えることはできるよ。
でも、そのかわりに足は歩くたびにナイフを踏むように痛むよ。それと、お前が王子と結婚できなかったら、二度と人魚には戻れない。
いや、それどころか心臓が破れて、海の泡になっちまうんだ。それでもいいね。」
「いいわ、王子様と一緒にいられるのなら。」
「それから、願いをかなえる褒美に、おまえの声をもらうよ。おまえの声は、海の世界で一番美しいと評判だから
ね。」「いいわ。」
そして人魚姫は、口のきけない身となって人間の世界へ戻り、王子の城を訪ねました。王子は人魚姫を一目
見て気に入り、妹のように可愛がりました。
しかし王子の心は、命の恩人と思い込んでいる、あの浜辺で会った娘に奪われていたのです。やがて王子と
娘は、結婚式を挙げることになりました。二人は船に乗り込むと、新婚旅行に向かいます。王子と結婚でき
なかった姫は、次の日の朝、海の泡になってしまうのです。