プリベット通り四番地のダーズリー一家こそ、ハリーがこれまで一度も楽しい夏休みを過ごせなかった原因だ。バーノンおじさん、ペチュニアおばさんと息子むすこのダドリーは、ハリーの唯ゆい一いつの親しん戚せきだった。一家はマグルで、魔法に対してまさに中世そのものの態度をとった。ハリーの亡なくなった両親は魔女と魔法使いだったが、ダーズリー家の屋根の下では、けっして二人の名前を口にすることはなかった。何年もの間、ペチュニアおばさんもバーノンおじさんも、ハリーを極きょく力りょく虐しいたげておけば、ハリーから魔法を追い出すことができるかもしれないと望み続けてきた。それが思いどおりにはならなかったのが、二人の癪しゃくの種たねだった。ハリーがこの二年間をほとんどホグワーツ魔法まほう魔ま術じゅつ学がっ校こうで過ごしたなどと、誰かに嗅かぎつけられたらどうしようと、二人はいまや戦せん々せん恐きょう々きょうだった。しかし最近では、ダーズリー一家は、せいぜいハリーの呪じゅ文もん集しゅうや杖つえ、鍋なべ、箒ほうきを夏休みの初日に鍵かぎを掛かけてしまい込こむとか、ハリーが近所の人と話をするのを禁ずるくらいしか手がなかった。
ホグワーツの先生たちが休きゅう暇か中の宿題をどっさり出していたので、呪じゅ文もん集しゅうを取り上げられてしまったのはハリーにとって大問題だった。レポートの宿題の中でもとくに意い地じ悪わるなのが、「縮ちぢみ薬ぐすり」に関するもので、ハリーの一番の苦手にがて、スネイプ先生の宿題だった。レポートを書かなかった日には、ハリーを一ヵ月処しょ罰ばつする口実ができたと大喜びすることだろう。そこで、ハリーは休みに入ってから最初の週にチャンスをつかんだ。バーノンおじさんもペチュニアおばさんもダドリーもみんな庭に出て、おじさんの新しい社しゃ用よう車しゃを(同じ通りの住人がみな気づくよう、大声で)誉ほめそやしていたそのすきに、ハリーはこっそり一階に下り、階段下の物もの置おきの鍵をこじ開け、教科書を数冊引っつかみ、自分の寝しん室しつに隠したのだ。シーツにインクの染しみさえ残さなければ、ダーズリー一家に、ハリーが夜な夜な魔法を勉強しているとは知られずにすむ。