「ハリー、たったいま、レイブンクローのシーカーが誰だか聞いた。チョウ・チャンだ。四年生で、これがかなりうまい……怪け我がをして問題があるということだったので、実は俺おれとしては治なおっていなければいいと思っていたのだが……」
チョウ・チャンが完全に回かい復ふくしたことが気に入らず、ウッドは顔をしかめた。
「しかしだ、チョウ・チャンの箒はコメット260号。ファイアボルトと並べばまるでおもちゃだ」
ウッドはハリーの箒に熱い視線しせんを投げ、それからひと声、「ウッス、みんな、行くぞ――」
そして、ついに、ハリーはファイアボルトに乗り、地面を蹴けった。
なんてすばらしい。想像以上だ。軽く触ふれるだけでファイアボルトは向きを変えた。柄えの操作そうさよりハリーの思いのとおりに反応しているかのようだ。ピッチを横切るスピードの速さときたら、ピッチが草色と灰色にかすんで見えた。素早すばやくターンした時、その速さにアリシア・スピネットが悲鳴ひめいをあげた。それから急きゅう降こう下か。完全にコントロールがきく。ピッチの芝生しばふをさっと爪つま先さきでかすり、それから急上じょう昇しょう。十メートル、十五、二十――。
「ハリー、スニッチを放はなすぞ!」ウッドが呼びかけた。
ハリーは向きを変え、ゴールに向かってブラッジャーと競きそうようにして飛んだ。やすやすとブラッジャーを追い抜き、ウッドの背後から矢のように飛び出したスニッチを見つけ、十秒後にはそれをしっかり握にぎりしめていた。
チーム全員がやんやの歓かん声せいをあげた。ハリーはスニッチを放し、先に飛ばせて、一分後に全速力で追いかけた。他の選手の間を縫ぬうように飛び、ケイティ・ベルの膝ひざ近くに隠れているスニッチを見つけ、楽々回り込こんでまたそれを捕つかまえた。
練習はこれまでで最高の出で来きだった。ファイアボルトがチームの中にあるというだけで、みんなの意気が上がり、それぞれが完かん璧ぺきな動きを見せたのだ。みんなが地上に降おり立つと、ウッドは一ひと言ことも文句もんくのつけようがなかった。ジョージ・ウィーズリーが、そんなことは前ぜん代だい未み聞もんだと言った。